ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風

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訓練と身内の怪しい動き

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―――獣深森の開拓宣言から一か月後

長髪の赤髪をお団子頭で後ろにまとめているエドワードと、フルプレートで全身を隠した男が、修練場で互いに武器を持ち、向かい合っていた。

鋭い一歩でエドワードが踏み込み、訓練用の剣を振るう。

その一撃は、精強なヴァリアント軍を率いる者に相応しい一閃であった。

相手の首を狙ったその攻撃は、しかし、フルプレートの男が地面を這うようにすくい上げた槍の一撃によって防がれてしまう。
的確に弾かれた剣は、エドワードの手元から離れて宙を舞う。

「ほっほっほ、足がお留守だぞ若者よ」

「ぬああ!?」

フルプレートの男が操る槍は、剣と衝突した衝撃でも勢いを失うことなく、ダンスでも踊るように華麗に舞い、エドワードの足を振り払った。

「そ、そこまで!」

試合を見届けていた兵士が慌てて静止する。

地面に倒れたエドワードの首には、訓練用の槍の切っ先が向けれていた。

「くそお。オッサンめっちゃ強えな! また負けちまったぜ!」

「これでも、筋トレは毎日続けてるからな、ってワシ骨だから意味なかったわい、ガハハハ」

「あいかわらずその冗談の意味はわかんねーけど、これからも試合相手を頼むぞ!」

「もちのろんだこれ」


試合に勝ち満足した様子のフルプレートの男が、俺の前にやってきて「がははは」と笑いながら肩を叩いてくる。

「いやー、骨だけになっても、ワシまだまだイケるな。お主もそう思うだろ?」

「はあ」

「感謝しているぞ。ダンジョンにいた頃と違って毎日が充実して楽しいわい」

この陽気なフルプレートの男は、ダンジョンで出会った初代勇者のシーロン様だ。

俺が兵士達に獣深森の開拓を宣言してから三日が過ぎた頃、準備していた特注のフルプレートが完成したので、獣深森を散歩していたシーロン様に声をかけて、約束通り迎えにいった。その時に、ヴァリアンツ軍の臨時顧問として軍の訓練をお願いしたら、快諾してくれのだ。

シーロン様が戦闘訓練に参加してからというもの、腕に覚えのある兵士達は毎日シーロン様に挑んでいるみたいだ。

流石、初代勇者というべきか、勇者の力を失ってなお実力は相当なものだった。しかも、本来は剣の使い手であるにも関わらず、遊び半分で槍を使用しているのだが、未だに、誰もシーロン様へ一撃も与えれていないらしい。

訓練は兵士達の刺激にもなり非常に助かっているのだが……

「あの、シーロン様。協力して頂けるのはありがたいのですが、あなたが骨人間なのは秘密なので、その謎の骨ジョークは控えて頂けると……」

「ああ、そうだった! 今後は気を付けると、我が命に誓うとしよう。って、もうワシ死んでたわ」

この骨、ずっとこの調子である。

戦闘面においてはとても頼りになるが、どうも中身がなー。常にお茶らけているせいで、こちらの気まで抜けてしまう。

かといって、偉大なご先祖様なので雑に扱う訳にもいかないしで、どう扱えばいいか未だに分からない。

「臨時顧問殿! 私にも手合わせをお願いします!」

エドワードが負けた次は、キアンがシーロン様に挑もうと名乗りを上げる。

「いいだろう。ただしお主が負けたらワシと一日デートをするというのは、どうだろうか?」

シーロン様が、スラリとしたキアンの全身を嘗めるように眺めてそう言う。完全にエロ親父のそれだった。

しかし、キアンは眉ひとつ動かさずに堂々と言い返す。

「ええ、もちろんいいですよ」

「本当か? お主……以前もそう約束して負けたのに、デートの待ち合わせに現れなかったけど」

「あはは、あれは、たまたま腹が下っただけです。次は足が痛くなるかもしれませんなっ、はっはっは!」

全くうしろめたさを感じさせない笑顔でキアンはそう言い切った。

シーロン様がぐるりと振り返り、俺に迫ってくる。

「おい、お主の部下はどうなっているんだ。どんな教育したら、あんなにも清々しく目上の人に嘘をつける?」

「知りませんよ、というか私の部下をナンパしないでください」

「でも、ワシだって久々に青春したいんだもん」

このエロジジイが。

「なにがだもんですか。いいですか、シーロン様にはふさわしい相手を探してるので、我慢してください」

「ほ、本当か!? ちゃんと骨フェチの女子であろうな?」

「ええ、骨好きの女子(雌犬)なので安心してください」

「まったく、ワシはデキる子孫をもって幸せ者だよ。では、手合わせにいってくるとしようフフフ」


シーロン様がスッテプを踏みながら修練場へと向かっていく。

はあ、なんだか疲れたな。本当に、あんな人が英雄と呼ばれるヴァリアンツ家の初代当主なのか怪しくなってきたぞ。

ずっと立ちっぱなしだったので少し休憩しよう。ベンチに座ると、すかさず誰かが俺の隣に座った。

フワっと、甘い匂いが香る。

「お疲れ様です、ルドルフ様。これはあたしからの差し入れです。ぜひめしあがってください」

銀髪の美しい女性が微笑みながら、アップルパイを乗せた白い皿を渡してくる。

「あ、ありがとう」

突然差しだされた焼き菓子を受け取り、笑顔のミラを見返す。

「いつの間にこんなのを用意したんだ?」

「うふふ、リアちゃんが、ルドルフ様がアップルパイが好きと聞いたので、レシピを教えてもらってつくりました。もしかして、ご迷惑でしたか?」

「いや、嬉しいは嬉しいんだが……」

迷惑ではない。
アップルパイは俺の大好物だ。
だから迷惑ではなにけど……
なんだろう。
最近休憩するたびに、ミラがわざわざ好物を差し入れしてくるんだ。

最初は気まぐれの行動だと思って、あまり気にしてなかったが、流石に毎日続くと違和感しかない。

俺はこちらの様子を覗いている集団に目を向けた。

リアとセレン、そしてハイネがニヤニヤしながら、そこにいた。
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