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歴史に名を残すぞ!
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「昨日、会議の末にヴァリアンツ軍の軍事強化が決定した。よって、お前達には、これまで以上の激しい戦闘訓練をこなしてもらいたい」
兵士達は様々な反応をする。
文句を言う者もいれば、出世のチャンスかもと騒いでやる気を見せる者もいる。
「ルドルフ様、さらなる訓練と言いますが我々は日頃から相当な鍛錬を積んでおります。これ以上にキツイ訓練となると、兵士達も納得できる理由がなければ気持ちがついてきません。その辺の事情についても詳しくお願いできますでしょうか?」
キアンが全兵士の気持ちを代弁するかのように問いかけてくる。
「それはもっともな疑問だ。ならば答えようじゃないか」
あれだけ騒いでいた兵士達が全員口を閉ざさして静かに聞き耳を立てる。隊列の端まで見渡すと全員が俺に視線を集中させている。
「諸君、此度の軍事強化はヴァリアンツ家にとって非常に重大な決断である。ヴァリアンツ軍はエンバース王国建国以来、五百年もの間、獣深森に生息する魔獣と戦い、魔獣が王国全土に侵攻するのを防いできた。我らは王国にとって民を守る盾であり、外敵を排除する剣でもある。ゆえに、我らヴァリアンツは他のどの貴族よりも誇り高く、名誉ある一族なのだ」
初代勇者が救国の英雄として名をあげたことから始まり、ヴァリアンツは民を守護することを宿命として掲げてきた歴史がある。
「しかし、時代は変わった。魔獣の脅威から国を守るのが当たり前となった昨今では、その恩恵を受けている貴族共は恥も知らず、我々を毎日魔獣と戦いをしている野蛮で頭のおかしい奴等とこそこそ噂をしているらしい。お前達はそんな腑抜け共に文句を吐かれている現状をどう思う!」
そう問いかければ、そこかしこから不満をのせた野次が飛び交う。
「ありえねえ!」
「そうだ、そうだ我々ヴァリアンツ軍こそ名誉ある最強の軍だ!」
「恩知らずの貴族など全員ぶっ殺しましょう!」
「誰のおかげで安全に暮らしているのか教えてやるべきだ!」
騒ぎ立てる兵士達に負けないように俺も大声で言い返す。
「お前達の気持ちはよくわかる。だからこそッ、いまいちど我らヴァリアンツの威光を世に知らしめてみせようじゃないか、そして俺は決断した!」
腰に下げている愛用の剣を抜き放ち宣言する。
「我々ヴァリアンツは獣深森の開拓に乗り出す! これは、五百年間誰も達成できなかった偉業である! もちろん、危険は伴う。凶悪な魔獣との激しい戦いは避けられない。それでも、お前達は俺についてきてくれるかッ!」
抜いた剣を力任せに朝礼台へと突きたてると、激しい衝撃音が修練場に響き渡る。それを合図に兵士たちが一斉に雄たけびをあげた。
「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」」
「やってやるぜぇ」
「歴史に名を残してやる!」
「馬鹿野郎、俺が一番活躍するにきまってんだろ!」
「いいんや俺だ。魔獣をぶっころして出世してやる」
兵士達が、俺の話を聞いてめいめい興奮した様子で落ち着きなく騒ぎ始める。
すこし刺激してやればこれだ。血の気が多すぎる。わが軍はなんて単細胞な人間の集まりなのか。上手くいったのに、どこか不安になるのは何故だろう?
とりあえず、士気が上がった兵士たちを見届けて、俺は朝礼台を降りた。
すると、ジェフが笑いかけてくる。
「ずいぶんと、お上手に言いくるめましたな。皆やる気に満ちております」
「兵士達とは長い付き合いだ。単純な奴等だし、扱いやすいものさ。だが、それ以上に信頼できる部下達だ。かならずや、結果を残してくれるだろう」
すると、エドワードとキアンが、我先にとお互いを押し合いながら、俺の前に駆け出してきた。
「旦那ぁ、俺は感動しましたぜぇ! ついに磨き上げたこの腕を活躍させる時がきたんだな!」
「ルドルフ様! ぜひこのキアンを開拓組の隊長に任命してくださいッ! そして成功したあかつきには、私を団長にぃ!」
「ふざけんな性格ブス! 俺が隊長に決まってんだろ!」
「ぷー、部下から慕われない貴方が隊長になったら誰もついてこないわよ?」
「それは! お前が普段から俺のありもしない悪口を部隊に吹聴してるからだろ!」
「え~しらないわwww」
「こら、領主様の前ですよ。静かにしなさい。これ以上暴れると私からルドルフ様に進言して二人を降格させますよ?」
また殴り合いに発展しそうな空気に、ジェフが注意して二人を諫める。
「む、それはこまるな、ならやめる! だって俺は永遠に団長でいたいからな!」
「降格したらトップの座は狙えませんからね、仕方ありません。馬鹿を始末するのは後回しにして今は矛を収めましょう」
途端に反省した素振りを見せて、二人とも静かになる。
すごい息ピッタリな動きだ。もはやこいつら仲いいだろ。あと、エドワードが団長なのに慕われてないのがそんな理由だったとは……ちょっと同情するな。
そして、その元凶である見た目だけは美しいキアンが質問をしてくる。
「ところでルドルフ様、開拓に向けて訓練を強化するとのことでしたけれど、一体なにをされるので?」
「それに関しては、心当たりのある凄腕の武人を臨時で雇入れる予定だから期待しておいてくれ」
思い当たる人物を想像すると、「ほっほっほ」と笑う白い骸骨が頭に浮かんでくる。
「へえ、そりゃ楽しみだ。本当に強いんだろうな?」
「ああ、戦闘については確かだとおもうぞ」
性格については保証しないが。
一応、褒美として骨に目がない雌犬でも用意しておくか。
ひとまず、これで計画の第一歩である兵士の強化については話が進んだ。あとは、訓練と並行して、獣深森の開拓計画も進めていくとしよう。
兵士達は様々な反応をする。
文句を言う者もいれば、出世のチャンスかもと騒いでやる気を見せる者もいる。
「ルドルフ様、さらなる訓練と言いますが我々は日頃から相当な鍛錬を積んでおります。これ以上にキツイ訓練となると、兵士達も納得できる理由がなければ気持ちがついてきません。その辺の事情についても詳しくお願いできますでしょうか?」
キアンが全兵士の気持ちを代弁するかのように問いかけてくる。
「それはもっともな疑問だ。ならば答えようじゃないか」
あれだけ騒いでいた兵士達が全員口を閉ざさして静かに聞き耳を立てる。隊列の端まで見渡すと全員が俺に視線を集中させている。
「諸君、此度の軍事強化はヴァリアンツ家にとって非常に重大な決断である。ヴァリアンツ軍はエンバース王国建国以来、五百年もの間、獣深森に生息する魔獣と戦い、魔獣が王国全土に侵攻するのを防いできた。我らは王国にとって民を守る盾であり、外敵を排除する剣でもある。ゆえに、我らヴァリアンツは他のどの貴族よりも誇り高く、名誉ある一族なのだ」
初代勇者が救国の英雄として名をあげたことから始まり、ヴァリアンツは民を守護することを宿命として掲げてきた歴史がある。
「しかし、時代は変わった。魔獣の脅威から国を守るのが当たり前となった昨今では、その恩恵を受けている貴族共は恥も知らず、我々を毎日魔獣と戦いをしている野蛮で頭のおかしい奴等とこそこそ噂をしているらしい。お前達はそんな腑抜け共に文句を吐かれている現状をどう思う!」
そう問いかければ、そこかしこから不満をのせた野次が飛び交う。
「ありえねえ!」
「そうだ、そうだ我々ヴァリアンツ軍こそ名誉ある最強の軍だ!」
「恩知らずの貴族など全員ぶっ殺しましょう!」
「誰のおかげで安全に暮らしているのか教えてやるべきだ!」
騒ぎ立てる兵士達に負けないように俺も大声で言い返す。
「お前達の気持ちはよくわかる。だからこそッ、いまいちど我らヴァリアンツの威光を世に知らしめてみせようじゃないか、そして俺は決断した!」
腰に下げている愛用の剣を抜き放ち宣言する。
「我々ヴァリアンツは獣深森の開拓に乗り出す! これは、五百年間誰も達成できなかった偉業である! もちろん、危険は伴う。凶悪な魔獣との激しい戦いは避けられない。それでも、お前達は俺についてきてくれるかッ!」
抜いた剣を力任せに朝礼台へと突きたてると、激しい衝撃音が修練場に響き渡る。それを合図に兵士たちが一斉に雄たけびをあげた。
「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」」
「やってやるぜぇ」
「歴史に名を残してやる!」
「馬鹿野郎、俺が一番活躍するにきまってんだろ!」
「いいんや俺だ。魔獣をぶっころして出世してやる」
兵士達が、俺の話を聞いてめいめい興奮した様子で落ち着きなく騒ぎ始める。
すこし刺激してやればこれだ。血の気が多すぎる。わが軍はなんて単細胞な人間の集まりなのか。上手くいったのに、どこか不安になるのは何故だろう?
とりあえず、士気が上がった兵士たちを見届けて、俺は朝礼台を降りた。
すると、ジェフが笑いかけてくる。
「ずいぶんと、お上手に言いくるめましたな。皆やる気に満ちております」
「兵士達とは長い付き合いだ。単純な奴等だし、扱いやすいものさ。だが、それ以上に信頼できる部下達だ。かならずや、結果を残してくれるだろう」
すると、エドワードとキアンが、我先にとお互いを押し合いながら、俺の前に駆け出してきた。
「旦那ぁ、俺は感動しましたぜぇ! ついに磨き上げたこの腕を活躍させる時がきたんだな!」
「ルドルフ様! ぜひこのキアンを開拓組の隊長に任命してくださいッ! そして成功したあかつきには、私を団長にぃ!」
「ふざけんな性格ブス! 俺が隊長に決まってんだろ!」
「ぷー、部下から慕われない貴方が隊長になったら誰もついてこないわよ?」
「それは! お前が普段から俺のありもしない悪口を部隊に吹聴してるからだろ!」
「え~しらないわwww」
「こら、領主様の前ですよ。静かにしなさい。これ以上暴れると私からルドルフ様に進言して二人を降格させますよ?」
また殴り合いに発展しそうな空気に、ジェフが注意して二人を諫める。
「む、それはこまるな、ならやめる! だって俺は永遠に団長でいたいからな!」
「降格したらトップの座は狙えませんからね、仕方ありません。馬鹿を始末するのは後回しにして今は矛を収めましょう」
途端に反省した素振りを見せて、二人とも静かになる。
すごい息ピッタリな動きだ。もはやこいつら仲いいだろ。あと、エドワードが団長なのに慕われてないのがそんな理由だったとは……ちょっと同情するな。
そして、その元凶である見た目だけは美しいキアンが質問をしてくる。
「ところでルドルフ様、開拓に向けて訓練を強化するとのことでしたけれど、一体なにをされるので?」
「それに関しては、心当たりのある凄腕の武人を臨時で雇入れる予定だから期待しておいてくれ」
思い当たる人物を想像すると、「ほっほっほ」と笑う白い骸骨が頭に浮かんでくる。
「へえ、そりゃ楽しみだ。本当に強いんだろうな?」
「ああ、戦闘については確かだとおもうぞ」
性格については保証しないが。
一応、褒美として骨に目がない雌犬でも用意しておくか。
ひとまず、これで計画の第一歩である兵士の強化については話が進んだ。あとは、訓練と並行して、獣深森の開拓計画も進めていくとしよう。
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