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謎の祭壇を抜けると、会議室のような部屋にでた。
一応、人の気配がしないか確認してみたが、相変わらず誰もいる様子はない。しかし、ピーという警報音がひっきりなしになっている。既に僕等の侵入はバレているらしい。

 警報音に気が付いて、僕はマズいっと思って隠れたが、誰も襲ってくる気配はなかった。

あれ、もしかして誰もいない?
試しに部屋の真ん中まで歩いても、トラップも無く至って安全だった・・・

 住人は既に逃げ出した後なのか、ちょうど良く留守中に侵入できたのか分からなかったが、僕からしたらラッキーな事に変わりはない。帰ってくるまえに全てを終わらようと、他の部屋を見てまわる事にした。

 会議室から繋がっているドアは三つあった。
何処から調べようかと、少し迷ったが、よく見るとドアの一つには堂々とミアちゃんの可愛いポスター写真が張ってあった。しかもサイン入りで、名前と一緒に世界一可愛いミアの部屋♡と書いてある。


 犯人がキャンディー好きのサイコパスだとは知っていたが、まさか粘着タイプのロリ属性まで備えていいたなんて・・・僕は怖気がした。

 やはり引き返さないで、ここに来て正解だった。恐らくミアちゃんはここに監禁されているハズっ。

頼む無事でいてくれよと願い、僕は扉を開いた・・・・が、僕の願いは無残にも崩れてしまう。


なんと、床にミアちゃんがうつ伏せで倒れているじゃないかっ!!??

急いで駆けつけて体を抱き起す。



「ミアちゃん、大丈夫か!! 返事をしてくれ!」

 大声で呼びかけても、帰って来る返事はうわごとのように「うぅー、毒がァ、飴に毒がァァ」と呟いている。

「クソっ、犯人はなんて鬼畜なんだっ!! キャンディー好きな少女を利用して毒入りの飴を食べさせるなんてっ!」

 ゴミだ、クズだっ、キャンディー好きの風上にも置けない奴めっ!そんな野郎は必ずこのハードボイルドな探偵、マーロが取り押さえてやるっ!!!

 人畜無害な少女に毒を盛った犯人に、一通りの罵詈雑言を心の中で浴びせると、僕はこうしてはいられないとミアちゃんをお姫様抱っこして立ちあがる。

急いで病院に連れて行かないと命があぶない。呼吸がとても浅く、体温も異常な程低くて、プルプルと麻痺症状まででている。ただ監禁の為に使用するには明らかに毒性が強い。猛毒の類だ。もし僕が食べていたら即死だったかもしれない。

 「ミアちゃん、君は絶対に助ける。だから頑張るんだぞ!」

僕は抱えたまま急いできた道を戻った。
他の部屋を調べている暇なんてない。そんなのは後でコグレ警部補にまかせておけばいい。人命こそ最優先。


会議室をでて怪しげな祭壇に戻る。祭壇のど真ん中で生贄のようにギガンテス君はぐっすり眠ったままだけど、起こしてもどうせ起きないし、犯人に捕まってもなんとかなるだろ。最悪殺されるとしても、幼いミアちゃんの命と、長年生きている魔族のギガンテス君の命、天秤に掛けるまでもない。僕は可愛いミアちゃんの命を戸惑い無く選ぶぞっ!!

時間が経つ毎に呼吸が浅くなるミアちゃんを抱き直して再出発しようとすると、最悪のことに、進行方向から見知らぬ女の声が僕の耳に届いた。


「テメエ、侵入者かっ!!!」

青い髪の女が眉間に皺を寄せて僕を睨んでいる。しかも、隣には淑女風の白髪の女まで・・・・こうしている間にもミアちゃんのタイムリミットは迫っているというのに・・・


「たのむ、そこを退いてくれ、急いでいるんだ!」

僕は必死に頼んだが、当然そうはいかず、相手がブチギレた。抱えているミアちゃんを指さして

「このロリコン野郎、そいつを返しやがれ」

と、のたまった。その言葉に僕も怒りをあらわにする。

「僕はロリコンじゃないっ!! ハードボイルドな名探偵だぁ!!」

「ああん? 意味わかんねえよ。だったらソイツを返せよ」

男口調の青髪の女が近づて手を伸ばしてきたので、渡すものかと僕はミアちゃんを全力で抱きしめた。


「や、やっぱりロリコンじゃねーかっ!!!」

「どこをどう見たらそうなるんだよっ!!」

「どこをどう見てもロリコンだよ!?」

ふざけるなっ! どう見ても監禁されていた少女を守る正義のヒーローだっ。
この子は命に代えても守ると誓ったんだ、絶対に離すものか。

僕がどうすればこの状況を抜け出せるか必死に考えていると、今まで黙って様子をみていた白髪の女が衝撃的な言葉を口にした。


「どなたか存じませんが、私達の可愛いミアを返して貰えますか? さもなくば命はありませんよ?」


「私達の可愛いミア・・だと?」


その言葉の意味に僕は震えた。

今なんて言った? まさか・・・嘘だろっ!?

こいつら・・・・キャンディーサイコパスな上に、粘着ストーカー属性で・・・さらにレズショタだとっ!!?

欲張りすぎだろっ、どんだけ守備範囲広いんだよ。

やはり、この世界は狂っている。この世界でまともなのは僕とミアちゃんだけの気がしてきた。


「それを聞いたら余計ミアちゃんを渡せないな。お前らもミアちゃんの事を可愛く思うならそこを退くんだっ、今にも死にそうなんだぞっ!?」


僕はぐったりとしているミアちゃんを見せつける。
その反応は劇的だった。


「なっ、てめぇなんて事しやがるっ!?」

「本当に死にそうじゃないっ!? 今すぐ回復魔法を『ヒール!』」

白髪の女からミアちゃんに向かって魔法が飛んできたので、僕は姿勢を入れ替えて身体でその魔法を受けきる。

「ぐはぁっ」

「ちょっ、なんで貴方がうけるのよっ!? ミアが回復しないじゃない!」



そんなわざとらしい嘘を信じられるか!
ヒールと言いつつ攻撃魔法を打って命を取りにきたのはお見通しだ!

「お前達の策にハマる程、僕は愚かじゃないぞっ、それに今のがヒールだと? 馬鹿にするなっ、背中がチクチクした!!」


「そ、それは私が回復魔法が苦手だからでチクチクしちゃうのは仕方がないのっ」

「ふんっ白々しい嘘をよくも平然と言えるな!」


僕が睨みを聞かせてやると、白髪の女は大慌てで腰のポーチから小瓶を取り出すと、


「な、なら回復ポーションならいいでしょ!? これを早くミアに!!」


と、ポーションを僕に投げて寄越そうとする。それを僕は右手でキャッチ・・・・する訳もなく、叩き落として足で踏みつけてやった。バリンと小瓶が粉々に割られる。


 
「もうっ、なんでなの!!!?」


思い通りにいかないのが気にくわないのか、白髪の女は淑女然とした見た目に似合わず地団駄を踏む。



「だから、そんな見え透いた嘘に騙されるほど、僕は落ちぶれてはいないぜ?」

 毒を盛った張本人が、慌てて回復薬を渡す? そんな馬鹿なことがあるか。さらなる猛毒を盛ろうとしているに決まっている。


「エミリア、説得しても無駄だ。さっさとコイツを殺してしまうぞ」


「ちっ、そうね。どうせこのアジトに侵入された時点で消さなくてはいけないのだし」 


明らかに雰囲気が変わった二人が、恐ろしい目で僕を睨んできた。
 
 普段の僕ならここで失神してもおかしくないが、今日ばかりは引く訳にはいかない。

「絶対に守るからな、ミアちゃん」


僕は立ちはだかる二人を睨み返した。
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