私とあなたの一週間

幸輝

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おうちデート

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 七日目の日曜日。
 今日でお付き合い期間も終わりだ。
 私は、ナツオのお願いもあって、私の部屋にナツオを招き入れた。
 するとナツオは、部屋の片隅においてある、虫かごに興味を示す。

「これは……何か中に入ってるんですか?」

 やはり小学生の男の子。昆虫に興味があるのだな、と、私もナツオの隣に座る。

「カブトムシとかじゃないよー、残念ながら」

私は、少し昔の話をし始める。

「小学生高学年の時に、昆虫をクラスで飼ってたの。
でも、飼ってたのがカブトムシとかだけじゃなくて、この中のはセミなの。
カブトムシとかクワガタならその年で成虫になったんだけど、この一匹だけ大人になれなくてね。
学校に置いていって卒業する訳にもいかないし、家が近い私が引き取って、この中にいるって訳」

 私が思出話をすると、いろんな角度からナツオはかごを覗き込む。

「でもこれ……中にいます?」
「幼虫は土の中にいるから、掘れば出てくるんじゃないかな」

 ナツオは、蓋をぱかりと開ける。すると……

「ナナミさん、これ、蓋にセミの脱け殻がくっついてますよ!?」
「えぇ!?」

 私も思わず虫かごに飛び付く。
 虫かごの蓋には、宙ぶらりんになっている、茶色い半透明色のセミの脱け殻が、確かにくっついている。

「ほんとだ!! え、でも、成虫は!?」

 私は虫かごを見るも、セミの姿はない。
 あるのは、土とセミの脱け殻だけ。

「もしかして、部屋の中にいるの!? でも、鳴き声は部屋の中からは聞こえないよね!?」

 思わずパニックになる私をナツオは笑ってみせる。

「笑い事じゃないよ! 部屋の中でセミがおしっこかけたら大変じゃん!」

 ひとしきり笑ったナツオは、ナナミさん、と私に話しかける。

「セミって、どういう生態かわかってます?」
「どうって……」

 私は、図鑑で知っている程度の内容を話し始めた。

「幼虫の時期は、七年くらい土の中にいて……」
「このセミを手に入れてからは?」
「……そうだね、大体、七年くらいになるか」

 いつ成虫になってもおかしくない、と、思い直す。

「で、成虫になってからは、一週間で死んじゃう」
「そうなんですよ、一週間なんです。僕の命」

 沈黙が流れる。
 部屋の時計の秒針が、やけに大きく耳に届いた。

「僕の命のタイムリミット、一週間なんです。だから、一週間だけ、ナナミさんの彼氏になりたかった」
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