白い人形

幸輝

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夏休み

25話

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「何してるの?」

 帰ろうと本堂から後ろに振り返った瞬間、そこには真っ白なキクがいた。
 先程までいなかったのに、一瞬で姿を現した為、僕はびっくりする。

「ごめん、見てた?」
「何を?」

 表情は変えずに、キクは僕に問う。
 その赤い目がとても僕には恐ろしく、イサムには、大人に言うなと口止めをされたが、子どもに言うなとは言われていないため、僕は口を開いた。

「俺の友達が……あそこ、壊しちゃって……」

 僕は、穴の開いた木の扉を指差す。
 キクもその方向に視線を移した。

「だから、ごめんね……」
「なんでノゾム君が謝るの? 壊したのは友達でしょ?」
「それは、そうだけど……」
「それにここは、別にキクの家とかじゃないから、キクに謝られても困るよ」
「それも、そう、だね……」

 キクは怒りも笑いもせず、ただ無表情のままノゾムに告げた。

「でも、ここって、人形供養のお寺だったって、ノゾム君知ってる?」
「うん、それは知ってる」
「そこの壊れた扉から、供養できなかった人形達の怨念が出ていっちゃうかもね!」

 キクは笑った。
 赤い目を光らせて、満面の笑みを浮かべた。
 謎の風が、次は本堂から僕達のいる方向に一気に吹き抜ける。
 笑顔のキクの白い髪を揺らした。
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