白い人形

幸輝

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夏休み

24話

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「……イサム、どうすんの」

 片足を扉の向こう側に突っ込んだままのイサムに、僕は声をかけた。

「とりあえず、お前、大人にいうなよ。弁償とかできないし」

 イサムも自分が悪いことをしたと自覚しているせいか、小声で答えた。
 イサムは足を元の場所に戻そうと、壊れた扉から足を引き抜く。

「……え?」

 声をあげたのは僕の方だった。
 僕の階段下の角度からだと、よくイサムの足元が見えたのだ。

「なんだよ、ノゾム」
「イサム、足……」
「足?」

 イサムは自分の足に視線を変える。
 すると、真っ白な手がイサムの足首を掴んでいることに気がついた。

「手ぇ!?」

 イサムは悲鳴に似た声をあげる。
 衝動的に走り去ろうとするも、木の階段を思い切り転げ落ちた。

「大丈夫!?」

 あまりの衝撃的な現場を目の当たりにした僕は、階段から落ちてきたイサムにすぐに近寄る。
 イサムの様子を見、足首もみてやる。
 しかし、足首を持っていた白い手は、もうなかった。

「いてぇ……」

 地面に伏していたイサムは、ゆっくりと上半身を手の力で持ち上げる。
 服は土まみれになっていた。

「ここやべーだろ、ノゾムも早く帰りな」

 捨て台詞だけ残し、イサムはよろよろしながらお寺を後にするのであった。
 僕は、また本堂へと入っていく謎の風に気づいて、本堂の開いてしまった穴に目をやった。
 だが、その中はやはり暗闇だけしか見えず。
 僕もイサムの言う『ヤバい』を感じとり、お寺を後にしようとする。
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