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二話

序章 零から始まる剣への期待

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「学園側の裏の顔を、真実を切り開いてほしいと、前使用者は言っているのです。」
「ようは、この力を使って、学園側から情報を聞き出して来いと?」
「はい」

------------------------------------と、目覚めた。
「はあぁ・・・よく寝たよく寝た。って!?もうこんな時間?!早く朝食とって学校行かなきゃ!」
 は布団から出て、ラノベやゲームが散らばる床をやり過ごすと、急ぎ制服に手をかけ、着替え始めた。
「うー、やばい!あと十分で食堂しまっちゃうよ!」
 それ、は、しわのあるワイシャツを無造作に着、それを隠すようにブレザーを羽織る。ズボンはベルトもせずに。
 それ、は、早く出よう、と思いがつのり、顔も洗わずに部屋のドアを開ける。すると、それ、の目の前、否、扉の前に立っていた、と言えばいいのやら。三十代ほどの女性が、銀のトレーを持ち、その上に「ご飯(米飯)」「サバの塩づけを焼いたもの」「シジミのお吸い物」「牛乳」「プリン」「コールスローサラダ」を乗せ、立っていた。笑顔で。その笑顔は口を開き、言った。
「加賀君。ダメじゃないか。っていうのにこんなに遅く起きちゃ。 ほら、朝食持ってきたから部屋で食べな?ああ、食器はそのままでいいよ。あとで取りに行くからさ」
 今、加賀は罪悪感を感じていた。。朝起きてすぐ、加賀は人の温かみというものを感じ、涙が出てきそうだった。
「ありがとうございます!」と、元気よくお礼を言い、トレーを受け取り、テーブルに運んだ。因みにもう、三十代の女性寮食員は去っていて、おそらくほかの寮生の朝食のかたずけにまわったのだろう。
 そうやって、感謝の気持ちを頭に浮かべながら、湯気の立つお吸い物を口に運ぶ。
 ・・・ああ、まるで生き返ったように(死んでいたわけではない)起きてすぐの体にしみるなあ
 一つ一つ。味わいながら口にした朝食は大変美味であった。しかし、味わうのに時間をかけすぎていて、遅刻したことを、後程彼は知ることとなるのだった。


 走っていた。いや、走っている。
 夏休み明け初日。寮食員のおかげで遅刻はしないだろう。と、そう希望的に考えながらも、ただ校舎、廊下を一心不乱に走り続ける。しかし、
「はあっ、はぁっ!!げほっ!」と咳き込む。
 ・・・うぅっ、はきそう
 それは加賀には体力がないにもかかわらず、食べたばかりに走り、走り続けたのだ。そして、加賀のクラスのある階はだ。前は、二階に走って上がる時点で体力の半分は削られていたのだが、夏休み中に少し鍛え、体力がついていたため、三階まで走って半分の体力消費、にまで削ることができた。これは大きな成果だろう、と思いながらなんとかへとへとで自教室の扉の前まで来ていた。
 ・・・ここはどう入るべきか。普通に「すいません・・・遅れてしまいました」だと「初日から何をやっとるんだ!罰として一週間、皆より早く来て教室清掃だ!」と、怒鳴られてしまうかもしれない。ならば!
 と、一つの考えを胸に刻み、それを実行して、「ふむ、さっさと座りなさい」という流れに持ち込むのが加賀の考えだった。
 そして、彼は横にスライドする扉を勢いよく、ほかの教室にまで聞こえるような強い衝撃を生み出し、まずはクラスにいる教師を含め皆の注意を自分に向けた。それに気づいたアフロの男性教師がおそらく「こら!遅刻してなんだその態度は!」と言おうとしたのだろう。しかし、それより早く加賀は言葉を挟んでいた。そのおかげで教師の言葉は「こn・・・」で切れている。それを潰すべく、言った。それは、大きな声ではない。しかしながら小さい。というわけでもなく。脚を内またにして、。そして、

 魔術を展開した

 そう、加賀の魔術は自分の姿を変えられるのだ。だから、姿、最近お嫁にしたい芸能人第一位の「梨吞なしのみ 香奈かな」に変えたのだ。
 冴えない、身長、体系は、みるみるうちに男性の欲望をかなえてやろう、と、言わんばかりなナイスバストにしまったウエスト。美しい腰のラインに形の良いヒップ。そうして男性教師を魅了して怒りづらくさせる、というはずだった。。しかし、それは叶わず-------------------------

 目の前には、教師がいる。そう、アフロの男性教師だ。その見事にまん丸のアフロは儚く、否しかし、丸を保っていた。それは確かに丸。しかしまん丸と言えば何かが違う。だってそのアフロはもう無く、になっているのだから。
「ーーーっ!?」
 そして、男性教師は、クラスの皆から、笑いや冷やかしが飛ぶも、冷静、否、理性もくそもない憤った様子で、加賀の胸ぐらをつかみ、持ち上げた。
「いやっ!?ちょっと!まじ!まじで首しまる!降ろしt・・・」
 加賀が「て」と、言おうとしたときには教師の言葉が先に挟まっていた。あまりにもの憤り方に冷やかしと笑いの声はもうない。クラスの皆は察していた。「これはやばいと」。
 そして教師が、
「おい・・・加賀・・・」
「え?!何のことかわからないにゃん!私、梨吞 香奈だにゃん!?そんな痛いことしないでほしいニャン・・・」
 ・・・いくら自分の姿が梨吞さんだからといっても、「にゃん」語尾は恥ずかしいなあ・・・って、なんでこのアフロ、いや元アフロは梨吞さんにこんな暴行ができるんだ?!鬼畜か?ドSか?いやしかしなあ・・・
 その時、教室のやばい空間を切り裂く、クラスメイト側からは「これで終わる」という安堵を伝える言葉が来た。
「おい・・・勝手に魔術を使うんじゃない。あと、何が「梨吞 香奈」だ。まんま「加賀 河割」だぞ!まったく、なめおって。罰として・・・」
 ごくり、と、皆が唾をのむ音が聞こえたような気がした。
 ・・・ああ、そういえば、僕の魔術回路。壊されたんだったなあ。
 (そして、この魔術回路の「破壊の力」危ないから最小にしてたんだけど、対象のどっかの部分が破壊されるんだよな)先ほどのスキンヘッドは、この魔術がアフロを破壊してしまったらしい。
 そっぽ向く、否、考え事をしている加賀へ通達がきた

「罰として、一か月間の教室清掃を、朝早く来て行うこと!以上!HRは終わりだ!」
 と、スキンヘッドは言い切ると、加賀を雑に放り、さっさと教室を出て行った。
 そうして、尻餅をつき、呆然としているとき、一人の男子生徒が声をかけてきた。
「おい、大丈夫か?」
 そういったのは「稲葉いなば 成万なるま」だ。男子生徒が少しクラスの割合として多いために、男同士だが隣の席だ。まあ、それはいい、
「ああ、なんとか」
「そうかそうか」と満足げに答える稲葉。稲葉はそして顔を険しくすると、加賀に
「そういや、お前に用があるとか言ってた先輩の女子が朝教室前にいたんだけど。あれ誰だ?」
 その質問に快く
「ああ、それは僕のかのj・・・」
 加賀は「彼女」とは言わなかった。
 ・・・このクラス、主に男子が恋愛に対しての妬みが強くて、バレるとなんか魔術をバンバン展開してくるのだ。
 これは前のこと。クラスの男子生徒が、先輩の女子生徒と付き合っていることがばれて、皆から魔法を飛ばされていた。(無論、模擬戦闘とは違い、生死にかかわる)
 だから、簡単にこの関係を明かすわけにはいかないのだ。なので、
「あれは、夏休み中に自動販売機で僕が並んでいるときに、その先輩が僕の前であたりを当てて、「二本も飲めないからどうぞ」といって、ジュースをくれたいい先輩なんだよ!」
 そんな加賀の必死のごまかしに、稲葉は睨むことで疑うが、それは数秒。やがて目を離し、連絡用ホワイトボードを見ると
「おい、次は魔術の時間だ。急いで体育館に行くぞ」
 それに賛同したクラスメイトは急ぎ、体育館へと小走りで行った。そして稲葉が「行こうぜ」と催促してきたので「フッ、仕方ない」と、決めた声で言うと、「・・・」変なものを見るような目で先に行ってしまった。

 加賀も急ぎ、稲葉を追いかけ、廊下を走る走る。その時、急に廊下の曲がり角で加賀は人とぶつかった。それは
「結衣ちゃん!?」
 「ええ、」と、冷静に応答する彼女こそ僕の彼女、「穂刈ほかり 結衣ゆい」だ。
 現在、穂刈を押し倒す形で倒れた加賀は、穂刈のスカートに顔を突っ込んだ形となっている。それに気づいた加賀は、勢いよく顔を引っこ抜く。洗剤のにおいだろうか、ものすごく鼻をくすぐる良い香りを感じた。
「わあっ!ごめん結衣ちゃん!」
 それでも冷静に、
「夏休み中こんなドキドキイベントはありませんでしたから。私たちにとって進展ですね」
 加賀に「夏休み」という言葉が脳裏によぎった。
 夏休み中に、そういえばあのガラの悪い先輩と戦ったなあ。
 ・・・実はあの時に撮った、全裸の写真はいまだに僕のスマホに存在する。
 それに魔術回路も壊され、姿を変えることのできる魔術は使用不可になるわ。「破壊の力を持つ剣」を手に入れるわ、で忙しいイベントばっかりだったなあ、と、思っていると、不意に奥に見えた時計に目が行く。
「ごめん結衣ちゃん!もう授業が始まるんだ!それじゃあまたあとで!」
 と、結衣の返事も聞かずさっさと体育館へと加賀は向かった。


「えー、それでは授業を始める」
 そういったのは魔法の教科担任、「中村先生」だ。
「今回、やるのは」
 背後のホワイトボードに書きだした。そして書き終わったのを読み上げて、
「一対一の固有魔術ありきの模擬戦闘だ」
 因みに固有魔術とは、魔術回路を展開することにより使用できる、その人にだけ与えられた魔術である(しかし、ソシャゲのガチャと一緒で、レアリティの低い固有魔術はダブりやすい)。固有、とは?と聞き返されてしまいそうだが、「その魔術をいかに自分でアレンジして使うか、魔術回路との組み合わせ」などが固有となってくる。
 そして、
「よし、じゃあ、このくじを引いて、同じ番号になったやつと相対だ。がんばれよ」
 その時、加賀は
 ・・・この剣で戦うのか。どうなるんだろう
 少々心配であった。


 クジを引き、加賀の相手が決まった。「山本 静香しずか」だ。
 そう、彼女は、以前の魔法の授業のチーム戦でスナイパーライフルをぶちかましていた女子だ。
 無表情の彼女は、小さく口を開くと
「よろしく・・・」
 と、だからこちらも
「よろしく、山本さん」
 

 そして、二人は準備ができ、足元に幾何学模様が浮かび上がり、転送された------------------
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