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一話

十二章 突然的に起きる腹痛との戦い

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「うー、トイレトイレ」
 加賀は突然の腹痛に足を早めた。因みに、今は次の授業の理科が始まるまでの小休憩だ。
 この学園のトイレは男子も女子も全個室となっている。これは、個室に入っていると、他の生徒から「誰か入ってるぜ」とか「臭うな」とか言われたりするから、と言う事から、生徒会費や、全部活の予算から「トイレは綺麗でストレスなく使いたいよね!」という言い分で、各部活に支給されていた二十万円から五万ずつ刈り取った。
 因みに、この学園の部活は以下の通りである。
 「運動部」
 野球部、サッカー部、テニス部、弓道部、アーチェリー部、剣道部、バスケ部、卓球部、柔道部、陸上部、水泳部、「魔術戦闘部」

 「文化部」
 美術部、文芸部、書道部、調理部、カードゲーム部、茶道部、理科部、機械部、パソコン部、「魔術技巧部」

 「同好会」
 将棋、囲碁、「裏実験部」
 
 となっていて、いずれも二十万円支給され、五万回収された。
 つまり、五万×二十六(生徒会も含む)=百三十万円。
 この百三十万と学園側からの費用で、新しくトイレを作った、全く金の使い方に困った学園である。
・・・でも、学生ぼくたちのことをおもってくれているのかあ。
 トイレの扉の前に来た。
 僕が扉の目の前に立つと、扉は自動で開く。
 こんな所にまで金をかけるのはこの学園らしいなあ、と加賀は思う。
 そして、トイレに入ると、清潔感あふれる真っ白な壁、床に包まれる。
 あたりを見回すと、扉から繋がって、一直線に幅三メートルほどの道が五十メートルほど続く。
 そして、そのだだっ広い道の横に、ずっと並ぶ個室トイレがある。数にして、二十個ほど。
 二十と聞くとそんなに実感が浮かばないだろう。だから簡単に言えば、五メートル×五メートルの正方形の空間が、幅三メートルの道を中心として、横に十個ずつ、計二十個あるのだ。


       ト     一    ト      一     ト    一      ト    一      ト      一   ・・・
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
幅三メートル
                       ✕長さ五十メートル
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
       ト   一     ト      一     ト    一      ト    一     ト    一   ・・・
                         ↑この空間が一つで一辺五メートルの正方形
                                                                       ト=トイレ

 加賀はトイレに駆け込む。因みに、ここのドアも自動だ。
 そして、自動で鍵が閉まり、出迎えたのは洋式のもの。勝手に蓋が開く。
 上、下、横に四つの換気扇があり、冷暖房も兼ねている。
 ズボンなどをおろし、ゆっくりと便座に腰掛ける。
 便座は人肌より少し冷たく、二十五度くらいに保ってある。長時間座っていても熱くない。
 座って数秒後。壁に取り付けてあった二十インチのモニターが作動し、アーム?のようなものに取り付けられていて、加賀の目の前一・五メートル程前で、固定された。
 すると、モニターは「wondows(ウォンドウズ)eight」と表示され、三秒後、機械から出た無機質な声が加賀に質問をする。
「顔認証二ヨリ、カガカワルトハンダンシマシタ。デハ、マンガニシマスカ?エイガニシマスカ?アニメニシマスカ?ショウセツニシマスカ?」
 この学園は楽しくトイレを使ってもらおうと、アニメやテレビなど漫画なども見れるモニターまでつけた。
 腹痛の加賀に質問が来てしばらく考える。そして、
「腹が痛くて、ラノベとか小説に集中できないから、アニメで」
「アニメデスネ?カシコマリマシタ。デハ、ミタイアニメノ題名ヲ。ナイ場合、オススメリストカラノセンタクトナリマス。」
・・・見たいアニメあったんだよねー!
「じゃあ、「タコと触手とお姉さん」で。」
「タコと触手とお姉さんデスネ、カシコマリマシタ。」
 復唱すんじゃねぇ!と、加賀は心の中で文句をつけながら待機する。
 因みに、今の会話や、トイレ中の音、アニメなどの音は、防音機能により、外部にもれない。
 全く便利だ。
「デハ、普通二見マスカ?ソレトモ、シアターモードデミマスカ?」
 腹痛に耐えながらも、仮に、コンビニに行って、可愛い人がレジの時のように、低い声でキメて言った。
「シアターで。」
「カシコマリマシタ。」
 と、言った直後。部屋は薄暗くなり、暗さに合わせて画面も少し薄暗くなる。
 始まった。
 今回加賀の見ている「タコと触手とお姉さん」は、ラノベが原作であり、突如地球にやって来て、繁殖を続けるタコにお姉さんが聖剣「タコアンチノケン」を道で拾い、勇者になるという話。かの有名な作品のように、一度触手にぬるぬるにされて、心がやられても、「イカおじさん」が塩水をかけてぬめりをとって勝つ。という流れだ。
 おっと、戦闘シーンに入ったぞ!
「いけー!タコアンチノケンの勇者!」

 ここで一つ、このトイレのシステムの欠点を教えよう。

 楽しすぎて、快適すぎて、時間、忘れてしまいます。

「先生ー!加賀くんが来ませーん。」
「加賀、授業遅刻、減点。と。」

 ただでさえ成績の悪い加賀に、遅刻の平常点減点は痛かった。


 
 トイレが済み、理科の授業に二十分ほど遅れている事にアニメを見終わってから気づいた加賀は精一杯の力で走った。
 「すいません!校庭で薪を背負いながら理科の教科書を
 すると、先生が
「ほう・・・じゃあ、質問だ加賀。「位置エネルギー+運動エネルギー=?」何だ」
「えーと、」
 しばらく悩んで、考えた。教科書の内容は。教科書を
「「位置運動エネルギーエネルギー」ですね!」
「なんだその数学の同類項をまとめて足したようなものは。」
「?」
 すると、一人の学生が加賀に小さい声で教える。
「数学の同類項のように、XはXどうし、X²はX²どうし、数字は数字どうしにまとめるやつで、先生は漢字とカタカナでまとめたみたいだったから、そう言ったんだと思うよ。」
「??」
「やめろ、木下。こいつに説明してもわからん。」
「はい。」
 先生がわざとらしく咳をし、場を整える。
「で、本当は何をしていたんだ?」
「トイレでアニメを見ていました。」
「題名を言いなさい。」
「タコと触手とお姉さん・・・です。」
 皆が僕を見てクスクスと、吹き出したりして笑う。
 なんでこんな題名言わなきゃいけないんだ!
「分かった加賀。さっさと席つけ。」
「なんなんですか!」
「嫌がらせだ。」
「酷いですよ!」
「・・・」
 しばらくの沈黙が生まれ
「さぁ、授業再開するぞー!」
「「「はーい」」」
 皆の了解の声が響き、授業が始まった。


 授業が終わって、隣の席の「稲葉 成万(いなば なるま)」に話しかける。
「おーい、稲葉。次の授業何?」
「そこのホワイトボードに書いてあんだろ。魔法だよ。」
「魔法かー。何すんだろ?基礎?」
「前回先生がチーム戦闘するっつってたぞ。」
「めんどくせー」
 因みに、魔法のチーム戦闘は五対五に分かれて計十人で行う模擬戦闘のこと。前の中村先生との模擬戦がチーム戦になったようなものだ。
 しかし、それと大きく違うのが、
「固有魔術が使えないんだもんな」
 そう、固有魔術が使えないのだ。固有魔術は「inherent magic」ともよぶが、とにかく加賀の場合は姿を変える魔術が使えなくなり、ライフルのみという事だ。
「おっと、そろそろ時間だぜ?行くか?」
「うん、いこう。」
 廊下を二人で歩みながら、頑張ろうという気持ちは高まっていった。
 

 「よし、全員揃ったな。それでは魔法の授業を始める。」
 みんな、中村先生の話を体育座りしながら聞く。
「今日は前回も言ったとおり、チーム戦闘だ。制限時間四十分で、敵の殲滅or制限時間後の多く残ってた方。へ、勝利条件がある。そして、今回は一度やられたらもう外野だ。あと、チーム内の通信として、小型マイクがあるからな。」
 えー、とか、わー、とか聞こえてくるが、それを消すように一つ咳をし、
「じゃあクジでこの中から引いた数と同じ奴のところへいけー。」
 因みに、このクラスは全員で三十名なので、六グループできる。
 あっ、僕の番だ。
 箱の中から、適当に、しかし、一番下らへんを狙って、
「これだ!」
 三。
 と、あたりを見回すと、指を三本立て、三の人を招集している。
「僕三だよー。」
 すると、先に並んでいた男二人、身長が高いほうが中田。低いほうが櫻井。女一人、巨乳の西田。その三人がコソコソと、
「うへえ、加賀かよ、勝てないかもな。」
「ただでさえ弱いのに、固有魔術無しとか(笑)」
「あー、負けたくなかったなー」
「ちょっとみんなひどくない?!」
「あー、キニスンナ」
「気にするよ!」
 そんなことを言っていると、もう一人、すげー美人の時枝さんが来た。
「おまたせー!」
「うぉぉお!時枝さん!」
「待ってましたぁ!」
「ほんと男ってクズね」
「・・・。」
 確かに、確かに時枝さんは美人だ。しかし、僕には結衣ちゃんという彼女がいるじゃないか!美人が来たからって鼻の下を伸ばしてられない。
「どうしたの?河割くん?」
 と、スタイルのいい彼女は長い足を曲げ、上目遣いで言ってくるから恐ろしい。
「い、いや、何でもないよ時枝さん、」
 すると、櫻井が、
「鼻の下伸びてるぞ、加賀。」
「えっ、あっ、いや、そのね、」
・・・ん?気のせいだろうか、どこからか結衣ちゃんに似た殺気が僕の背中に突き刺さる。
 すると、先生が
「よし、グループごとになったな。今決まったグループはすべてのグループとの戦闘が終わるまで変わらないからな。因みに、一つの戦闘につき一時間の授業だから、計五時間の授業となる。」
 つまり、全部のグループとの勝負が、魔法の授業一時間につき一戦行われるのだ。
 そして、
「この授業で全てのグループに勝ったグループは、次の通知表の魔法科の所が五。つまり、最高点が入る。頑張れよ。」
 「「「「うぉっしゃあああ!!」」」」
「では、今回の戦闘は、「一と二」「三と四」「五と六」だ。それぞれ、グループで、作戦会議の時間五分間を与える、スタート!」

 そして、一から六のグループがそれぞれ体育館に散らばった。
 僕達、三のグループは、とりあえず、自分の回路説明をする。
 最初は中田から
「俺は大剣の幅広いもんだ。」
 ガッツリの近接。
 続いて櫻井、
「拳銃だよ。」
 その拳銃はよく警察が持っているようなサイズの普通の銃。割りと近距離?
 次に西田。
「私は爆弾よ。」
 いかにも近くに自分や仲間がいると巻き込まれそうな武器だ。
 そして時枝さん
「私は魔導書?見たいな本から魔術を飛ばす感じなの。でも、固有魔術は使えないから、スタンダードな魔力のレーザーみたいなのしか使えないんだけどね。」
 彼女のは、魔力の光線のようなものを、本から飛ばすが、弾速、追尾、弾道を好きに変えられる。
「僕は、スナイパーライフルだよ。」
「よし、じゃあ作戦をねろうか。」
「フィールド・・・。あれ?フィールドは?」
「確かに、」
 すると、どこかの班の誰かも気づいたようで、先生に言う
「あー、すまんすまん。忘れてた。じゃあ、各対戦グループの代表が前に出て来い。ん?ああ、じゃんけんできめる。」
 すると、西田が
「どーすんの?」
「ん?あー、ええーと、加賀でいいだろ。」
「うん」
「そうね」
「お願い!河割君!」
 時枝さんに上目遣いで言われた僕は、
「任せ給え!」
 走って、対戦グループの方へ行く。
「どっちが行く?」
「ん?加賀でいいよ。」
 他の人たちも頷いたので、先生のところへ行く。
 そこにはもうすでに、二人の男女が待っていた。
「よし、三人揃ったな。じゃあじゃんけんしろ」

 じゃんけんが終わり、僕は一位となったので先生が三つのフィールドを言う、
「学校、戦闘場、森。どれにする?」
 学校は前使ったけど、スナイパーとしてはやりづらい。森も何かやりづらそうだ。
 だから、
「戦闘場にします。」

 僕達、三、四グループは戦闘場というシュチュエーションで作戦をねった。
 しかし、戦闘場は学校や森のようにだいたい想像のつくものではなく、その時に形がわかるので臨機応変な対応が求められる。
 そして、この事を考えていると、
「あれ?これ、あんまり作戦の意味ないんじゃ・・・」
「いいから!櫻井!加賀に説明してあげて!」
「まず、中田と俺を囮に使い、敵をおびき寄せる、そして、敵が来たら全力で逃げ、西田の爆破トラップを、踏ませるor投げる。そのための陽動として、俺の銃や時枝さんの魔術を使う。そして、取り残したのを中田でとどめだ。」
「あれ?!僕いなく無い?」
「あんたはコソコソこもって撃ってればいいのよ。一人でも残ってるほうがいいんだから。」
「成程。」

 そんなこんなで、戦闘が始まる。
 僕たちは足元に表示された魔法陣に飲み込まれ転送された。


 目を開けるのが厳しいくらい眩しい閃光が視界を覆う。
 そして、少しずつ収まるのを感じ、ゆっくりと目を開ける。
 するとそこには、
「なんだ?これは?!」
 そこには、一人、加賀だけが立っていて、古びて風化し、今にも崩れかけそうな、家やビルなどの建物が並ぶ、ボロボロな市街地だった。
 すると、マイクから先生の声が聞こえてきて、
「そうだ、時計を見るようにどちらの手でもいいから、腕を見てみろ。」
 腕を見ると、小さく、真っ黒な表示枠のようなものがあり、
「それはタップすると拡大し、もう一回タップするとそのサイズになる。拡大すると地図が機能し、このフィールドを一望できる。」
 タップするとその真っ黒は地図になる。そして、
「この地図に、青い点があるだろう?これは、味方だ。そして、赤い点が敵だ。今は、赤い点。すなわち敵が見えているが、実は、地図を拡大、否、真っ黒の状態でないと、常にこの地図に表示されている。」
 青い点がいろんな場所にあるので、どうやら一人で立っていたのは、バラバラに転送されたからだろう。
「つまり、地図を機能させていると、敵のいちがわかるかもしれないが、自分の位置も相手にバレるという事だ。地図の使いすぎに注意した方がいい。」
 
「それでは、始めよう!」
 すると、目の前に、文字が浮かび上がり、開始を告げる。

 三・二・一・スタート!

 すると、どこからか、ぱぁぁん!と銃声が聞こえた。
 なんだと、思うと、耳元のマイクが告げる。
「中田 武 さんが戦闘不能となりました。」
「・・・」

 「馬鹿やろおおおぉ!!!」

 開始一秒で、味方が一人いなくなった。


 
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