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一話
第八章 彼女への理解
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僕と結衣ちゃんが付き合って次の日
「結衣ちゃん、あーーん」
「あーーん」
食堂でイチャイチャしながらご飯を食べていた。
・・・こんな、ルックスがダメで勉強できなくて運動できなくて軽度のコミュ障である僕にも彼女ができるなんて!河割、感激!
彼女の結衣はすごく可愛い。こんな彼女とちょっと夜の営みがしたいなあ。と、全員の男は思うほど可愛い。
見てください。このたわわに実った乳房。この少し運動不足で筋肉のあまりついていない柔らかそうな脚。
ふぃー、眼福 眼福。
そんなことを考えていると、彼女がいつものように無表情で、
「かーくん、は変態さんですか」
「え?」
彼女は、未だ平然とした顔で
「私は、知りたい人間一人を対象とし、対象の考えていることを読むことができます。効果永続時間や魔力消費量は秘密ですが。」
だから、と
「ハナから貴方がイケメンになって彼女を作ろうと、ギャルゲーをきっかけに考えたことは私にはバレていました。」
加賀の背中にゾワゾワ、と不安が通る。
「え。じゃあ、今僕が考えていた事っt・・・」
結衣は即答した。
「いいえいいえ。あなたが私の胸をたわわと言ったり、運動不足で筋肉のついていない柔らかい脚をぺろぺろしたいとか。・・・その、Hな事したいとか・・・。なんてことは知りませんよ。ええ、知りませんよ。」
「知ってんじゃん!?ぺろぺろなんて言ってないよ?!」
彼女は、相変わらず無表情で。
「くふふふ、かーくんは面白いですね。」
と、
「さあ、今度は私が食べさせてあげましょう。はい、あーーん」
「あーーん。って!何さり気なく流してんだよ!」
彼女は無言で真顔でこちらを見てきた。
・・・睨みつけてくるより怖いぜ。あんた。
「あ、いま私の事、怖い鬼嫁と思いましたね。しかもお前なんて。気が早いですね。」
「思ってねぇよ!「お前」じゃなくて、格好つけて「あんた」って言ったんだよ!」
彼女は、顔を「怒」にし、
「あらあら、私たちはあだ名で呼び合うと決めたではないですか。それなのに「あんた」とは。お仕置きです。ええ、お仕置きです。とりあえず靴でも舐めてもらいましょうか。」
・・・待ってくれ!これじゃあ、ギャルゲーの「亜衣様」と同じプレイじゃないか!
だから河割は、
「超ごめんなさい。懺悔します。」
あらあら、と彼女は
「せっかくかーくんを新たに「目覚め」させてあげようと、馬用のムチまで買ったのに。」
彼女は、どこから出したのか「モノは大切に。」と書かれた紙を河割の目の前に持ってゆき、僕は、大体察したので、
「退散!」
全力で逃げた。
昼の学園、屋上にて
「ふぅ・・・。結衣ちゃん、なんか怖いなあ。付き合って一日目で死ぬかと思ったよ。」
すると、加賀は結衣に対して溜まってた鬱憤を全力で叫んだ。
「なんで、なんで、僕にあんなに意地悪をしてくるんだあ!嫌いなのかよお!僕は何か悪いことしたのかよ!」
加賀は、言った。
「変態だっていいじゃないか!そういう年頃なんだ!思春期なんだ!あと、「あんた」って呼んだだけでなんでダメなんだ!実際は呼んでないけど。何でもかんでも見透かされると、少し怖いよ!」
と、そんな彼の後ろに一つ、プルプル震えているものがあった。
それは、
「そうですか、やはり私のような人間は怖くて気持ち悪いですか。そうですか。」
そうやって、いつもの無表情で述べる彼女であるが、言葉には不安、怯えのような震えがあり。また、落胆や絶望といった、声の小ささが聞こえる。
「待ってくれ!待ってくれよ!実は、怖いって言ったのはHなこと考えているとバレちゃうっていう不安が怖いっていう意味で・・・」
言い訳は、
「言い訳は、通用しないとあなたは知っているでしょう。貴方がさっき言った通り見透かせています。」
そして、彼女は右の拳をパーにし、
刹那、加賀の頬を殴った。
殴った頬は赤くなっているだろう。突然の殴りで彼は舌を噛んだかもしれない。もしかしたら、彼は出血しているかもしれない。
今私は殴った手ごと振り抜いて、殴られた彼を見れない。
ただ、身体を戻せばすぐ見れる。しかし、
付き合って一日で愛した人を殴った。
という、今まで読んだ本はまるで役に立たないような内容に彼女は今、困惑している。
・・・やってしまった。こんなことをしてしまった私はもう彼の目を見れない。
と言うのも「物理」的にではなくて「人間」としてだ。
そんな感じで青ざめた彼女の殴った男は、
「イッテテ。口の中少し切っちまったぜ。」
直立していた。が、彼は殴られた勢いで、左に向いた顔をそのままにし、男は、左下を見ていた。
・・・あんなこと言っちまったんだもんな。殴られて当然だよ。こんなんじゃ彼女の目は二度と見れないなあ。
結衣は、たしかにその声を聞いた。魔術でだが。しかし、
・・・そちらも私とおんなじような事を考えているようですね。
ならば、と、彼女は
・・・魔術で彼の考えていることを聞き、上手く話をし、再び、笑って二人で過ごせるように仲を修復する。
だか、しかし。彼女は、
・・・今まで、否、この学園に来てからは、友達があまりいなかったため、仲直りはあまり慣れてはいない。でも流石に学生として生活する以上、他の学生との喧嘩は起こる。だからいつも、私は相手の思っていることを読み取り、どうすれば良いかを考える。簡単だ。答えが見えているのだもの。
「痛いです。殴られれば痛いですし、殴ればその手が痛いです。そして、殴られた方の気持ちも痛み、殴る方の気持ちも痛みます。辛く、とてもせつないです。」
また、
「私には分かりません。この気持ちを味わったこともありません。」
だから、
「教えてください。貴方が今思っていることと、その言い訳を。」
そして、しばらくの沈黙が生まれ、男は、
「いいでしょう」
と、男は真剣な眼差しで、しかし、未だに下を見たまま、
「僕は貴女が好きだ。本当に好きだと思っている。だけどさ」
息をのみ女は聞く。
そして、
「好きと同じくらい、僕は貴女が怖い。」
女は心の中で「やっぱりか」と思った。しかし、それには続きがあり、
「だって、一緒にいたら僕は貴女を傷つけてしまうかもしれない、否(いや)傷つける。しょうがないさ、貴女が僕に対してそんな魔術を使っているのだから。」
彼は一つ息をのみ、
「貴女が仮に僕の事が好きだというなら、そんな魔術を使う必要がない。何しろ「信用」しているならば「疑い」の余地は無くなる。それなのに貴女の魔術は僕と一緒にいるとき、ほとんど使われてる。一字一句はみ出さないように、ね。」
だから、
「いつものように、本を読み、話をし、一緒にいるとき、僕は貴女を好きだと思える。けど、僕に向けてその魔術を使う貴女はとても嫌で怖い。これが僕の言い訳だ。」
成程。と、彼女は小さい声で言い、
「では、私はどうすればよいのでしょうか」
簡単だ。と彼は言う、
「そんなの、魔術を使わなければいいじゃないですか」
と、彼は普通に言った。が、
「それができていれば、今すぐ使おうとするのをやめています。」
「え?」
「それができていれば、今すぐ使おうとするのをやめる、と言っているのです。」
「じゃ、じゃあ、貴女は魔術のコントロールが」
「ききません。」
そして、
「現状、この魔術が発動するのはイレギュラーです。でも何故でしょう、貴方といるとき、否、あった時も魔術は発動しました。」
これは一体何なんでしょうね、と、彼女は呆れたような声で言う。
「成程。何故、イレギュラーなものが僕と関わると常時発動になるんでしょう。」
それは、
「おそらく推測ですが、あなたの事をもっと知りたいという私自身の「強欲」なのでしょう。」
「じゃあ、貴女の強欲は僕に対しての想い。という事ですか?」
ええ、と、
「そのようです。私の強欲はあなたの為に、発動しているようです。しかし、私には今、あなたの事をとやかく言うことはできません。」
なので、
「あなたの方から今の気持ちを伝えてください。この心を読む、めんどくさい能力な私に。」
わかったよ、と、
「僕さ、こうやって喧嘩したの久しぶりなんだ。中学の頃は今よりもっとコミュ障で、喧嘩する奴なんて全然いなかったんだ。でも、喧嘩する奴がいないという事は、同時に友達がいないというものなんだよね。でも、そんなとき、僕の前に一人の救世主が現れたんだ。」
そいつはね、
「凄いお人好しだったって言うとあれだけど、とりあえず優しくていい奴だった。」
そして、彼は声を少し明るくし、続けた。
「ある日、僕がいつものように教室でラノベを読んでいる時に、ある事が起こったんだ。」
「ある事って?」
ニヤッ、と俯いている顔に笑顔が見える。
「いじめだよ」
え?と、呆然と思う彼女に考える時間もなく新しく言葉が生まれる。
「僕さ、「ミーハー」みたいな奴らがすごい嫌いで、クラスとかで「アニメとかラノベとか見てる奴ってキモくない?(笑)」とか言って、しばらくすると、「youの名は。見た?超泣けるよね!」とか「このラノベ今流行ってるらしいから買ってみたよ」とか言ってる奴らに、腹がたって、ある日言ってしまったんだ。」
それはね、と、
「僕はお前等みたいなミーハーにアニメやラノベの事を言われるのがスゲー腹立つんだよ!」
と、ね。
そうしたら、
「ミーハーについてたスポーツの得意な奴とかに殴られてそれ以来、何もせずとも気晴らしに殴られたり、辱めを受けたんだ。」
そして、彼は、着ていたワイシャツのボタンを外し、さらに下着のシャツを脱ぐ。右胸の肋骨のあたりに手を置き、
「顔を上げてみてほしい。」
と、女に促し、顔を上げさせた。
「ほら、この肋骨、少し曲がってるだろ?これ、殴られて、折れるまでいかずに曲がったんだ。古傷ってやつだね。」
と、振り向いた先のありえないような光景に女は、
「い、今は痛くないんですか、」
ああ、
「痛くはないけどね、みてくれが悪いんだ。」
それでね、
「そんな感じで、いつものようにいじめを受けていた時にそいつが現れて、僕を助けてくれたんだ。」
そのセリフがなんとも言えなくてね、と、
「そんなに人に人を殴らせたり、人に人を辱めをさせることは楽しいのかい。俺だったらそういう事は自分でやって自分で楽しむものだと思うけどなあ。」
「とか、言ってすぐにそいつは僕を殴った男に、耳打ちで「その女の裸を見たくないか。」と、言ったらしくて(本人から後々聞いた)それに乗った男とそいつは、男に女の腕と口をあらゆる手段で塞ぎ、自由の効かない身体を覆う服を持っていたハサミで切って、下着姿にして、どっからか取り出した油性マジックで「変態です」とかそういうことを書き出して、身体いっぱいにそういうことを書いて、動けない女を一番人の通る、生徒玄関に置いたままにしたらしいよ。」
ヒェッ、と、そんな感じの表情の彼女に言葉を続ける。
「でまあ、そいつとその男は後々バレて、怒られたんだけど、それと同じようなことをした女も怒られたし、それ以来、いじめはなくなってね。」
と、話しているときに、彼女は言葉を挟んだ、
「・・・ミーハーに対して貴方が最初に言ったことが事の発端では?」
「え、」
僕は思い出してみる、
「 僕はお前等みたいなミーハーにアニメやラノベの事を言われるのがスゲー腹立つんだよ!」
「 あと、そいつと言っていた方も、下着姿が見たかっただけではないのですか。」
「言われてみれば・・・」
まあ!、と仕切り直した彼は、
「なんというか、要するに、ラノベへの理解があって、可愛くて、僕のことを思っている人がいるとすれば、僕はその人と付き合いたい。」
そして、
「くだらない喧嘩や、くだらない話、ふと出る相手への不満欲求などへの理解があればね」
彼は動揺している彼女に手を差し伸べ、
「貴女は僕の事を理解してくれるかい」
と、動揺していた彼女はみるみるうちに落ち着きを取り戻し、呆れた声で「やれやれ」と、言ってから
「本気で好きになった人への理解は出来ているはずです。しかし、私も人間です。理解してわかっているつもりでも、「嫉妬」と言う大罪を持っている限りは、貴方に不安や嫌気を与えてしまうかもしれません。それでも貴方が理解し合う対等な関係として側にいてくれるとしたら私は、理解したと言えるのでしょうか。」
と、不安げに、震える手をゆっくりと彼に向わせるが、その手は今も答えを求めている。
すると、彼女の怯えた手がもう一つ、自信に包まれた手に包まれる。すると声がかかり、
「いや、理解をするにはまだ時間がかかるかもしれない。だからこそ、二人で答えを求めようじゃないか、隠し事はせずにね。」
すると、彼女の瞳から輝く涙が落ちる。
そして、その涙は繋がっている手に落ち、それは、酷く熱いように感じられた。
「結衣ちゃん、あーーん」
「あーーん」
食堂でイチャイチャしながらご飯を食べていた。
・・・こんな、ルックスがダメで勉強できなくて運動できなくて軽度のコミュ障である僕にも彼女ができるなんて!河割、感激!
彼女の結衣はすごく可愛い。こんな彼女とちょっと夜の営みがしたいなあ。と、全員の男は思うほど可愛い。
見てください。このたわわに実った乳房。この少し運動不足で筋肉のあまりついていない柔らかそうな脚。
ふぃー、眼福 眼福。
そんなことを考えていると、彼女がいつものように無表情で、
「かーくん、は変態さんですか」
「え?」
彼女は、未だ平然とした顔で
「私は、知りたい人間一人を対象とし、対象の考えていることを読むことができます。効果永続時間や魔力消費量は秘密ですが。」
だから、と
「ハナから貴方がイケメンになって彼女を作ろうと、ギャルゲーをきっかけに考えたことは私にはバレていました。」
加賀の背中にゾワゾワ、と不安が通る。
「え。じゃあ、今僕が考えていた事っt・・・」
結衣は即答した。
「いいえいいえ。あなたが私の胸をたわわと言ったり、運動不足で筋肉のついていない柔らかい脚をぺろぺろしたいとか。・・・その、Hな事したいとか・・・。なんてことは知りませんよ。ええ、知りませんよ。」
「知ってんじゃん!?ぺろぺろなんて言ってないよ?!」
彼女は、相変わらず無表情で。
「くふふふ、かーくんは面白いですね。」
と、
「さあ、今度は私が食べさせてあげましょう。はい、あーーん」
「あーーん。って!何さり気なく流してんだよ!」
彼女は無言で真顔でこちらを見てきた。
・・・睨みつけてくるより怖いぜ。あんた。
「あ、いま私の事、怖い鬼嫁と思いましたね。しかもお前なんて。気が早いですね。」
「思ってねぇよ!「お前」じゃなくて、格好つけて「あんた」って言ったんだよ!」
彼女は、顔を「怒」にし、
「あらあら、私たちはあだ名で呼び合うと決めたではないですか。それなのに「あんた」とは。お仕置きです。ええ、お仕置きです。とりあえず靴でも舐めてもらいましょうか。」
・・・待ってくれ!これじゃあ、ギャルゲーの「亜衣様」と同じプレイじゃないか!
だから河割は、
「超ごめんなさい。懺悔します。」
あらあら、と彼女は
「せっかくかーくんを新たに「目覚め」させてあげようと、馬用のムチまで買ったのに。」
彼女は、どこから出したのか「モノは大切に。」と書かれた紙を河割の目の前に持ってゆき、僕は、大体察したので、
「退散!」
全力で逃げた。
昼の学園、屋上にて
「ふぅ・・・。結衣ちゃん、なんか怖いなあ。付き合って一日目で死ぬかと思ったよ。」
すると、加賀は結衣に対して溜まってた鬱憤を全力で叫んだ。
「なんで、なんで、僕にあんなに意地悪をしてくるんだあ!嫌いなのかよお!僕は何か悪いことしたのかよ!」
加賀は、言った。
「変態だっていいじゃないか!そういう年頃なんだ!思春期なんだ!あと、「あんた」って呼んだだけでなんでダメなんだ!実際は呼んでないけど。何でもかんでも見透かされると、少し怖いよ!」
と、そんな彼の後ろに一つ、プルプル震えているものがあった。
それは、
「そうですか、やはり私のような人間は怖くて気持ち悪いですか。そうですか。」
そうやって、いつもの無表情で述べる彼女であるが、言葉には不安、怯えのような震えがあり。また、落胆や絶望といった、声の小ささが聞こえる。
「待ってくれ!待ってくれよ!実は、怖いって言ったのはHなこと考えているとバレちゃうっていう不安が怖いっていう意味で・・・」
言い訳は、
「言い訳は、通用しないとあなたは知っているでしょう。貴方がさっき言った通り見透かせています。」
そして、彼女は右の拳をパーにし、
刹那、加賀の頬を殴った。
殴った頬は赤くなっているだろう。突然の殴りで彼は舌を噛んだかもしれない。もしかしたら、彼は出血しているかもしれない。
今私は殴った手ごと振り抜いて、殴られた彼を見れない。
ただ、身体を戻せばすぐ見れる。しかし、
付き合って一日で愛した人を殴った。
という、今まで読んだ本はまるで役に立たないような内容に彼女は今、困惑している。
・・・やってしまった。こんなことをしてしまった私はもう彼の目を見れない。
と言うのも「物理」的にではなくて「人間」としてだ。
そんな感じで青ざめた彼女の殴った男は、
「イッテテ。口の中少し切っちまったぜ。」
直立していた。が、彼は殴られた勢いで、左に向いた顔をそのままにし、男は、左下を見ていた。
・・・あんなこと言っちまったんだもんな。殴られて当然だよ。こんなんじゃ彼女の目は二度と見れないなあ。
結衣は、たしかにその声を聞いた。魔術でだが。しかし、
・・・そちらも私とおんなじような事を考えているようですね。
ならば、と、彼女は
・・・魔術で彼の考えていることを聞き、上手く話をし、再び、笑って二人で過ごせるように仲を修復する。
だか、しかし。彼女は、
・・・今まで、否、この学園に来てからは、友達があまりいなかったため、仲直りはあまり慣れてはいない。でも流石に学生として生活する以上、他の学生との喧嘩は起こる。だからいつも、私は相手の思っていることを読み取り、どうすれば良いかを考える。簡単だ。答えが見えているのだもの。
「痛いです。殴られれば痛いですし、殴ればその手が痛いです。そして、殴られた方の気持ちも痛み、殴る方の気持ちも痛みます。辛く、とてもせつないです。」
また、
「私には分かりません。この気持ちを味わったこともありません。」
だから、
「教えてください。貴方が今思っていることと、その言い訳を。」
そして、しばらくの沈黙が生まれ、男は、
「いいでしょう」
と、男は真剣な眼差しで、しかし、未だに下を見たまま、
「僕は貴女が好きだ。本当に好きだと思っている。だけどさ」
息をのみ女は聞く。
そして、
「好きと同じくらい、僕は貴女が怖い。」
女は心の中で「やっぱりか」と思った。しかし、それには続きがあり、
「だって、一緒にいたら僕は貴女を傷つけてしまうかもしれない、否(いや)傷つける。しょうがないさ、貴女が僕に対してそんな魔術を使っているのだから。」
彼は一つ息をのみ、
「貴女が仮に僕の事が好きだというなら、そんな魔術を使う必要がない。何しろ「信用」しているならば「疑い」の余地は無くなる。それなのに貴女の魔術は僕と一緒にいるとき、ほとんど使われてる。一字一句はみ出さないように、ね。」
だから、
「いつものように、本を読み、話をし、一緒にいるとき、僕は貴女を好きだと思える。けど、僕に向けてその魔術を使う貴女はとても嫌で怖い。これが僕の言い訳だ。」
成程。と、彼女は小さい声で言い、
「では、私はどうすればよいのでしょうか」
簡単だ。と彼は言う、
「そんなの、魔術を使わなければいいじゃないですか」
と、彼は普通に言った。が、
「それができていれば、今すぐ使おうとするのをやめています。」
「え?」
「それができていれば、今すぐ使おうとするのをやめる、と言っているのです。」
「じゃ、じゃあ、貴女は魔術のコントロールが」
「ききません。」
そして、
「現状、この魔術が発動するのはイレギュラーです。でも何故でしょう、貴方といるとき、否、あった時も魔術は発動しました。」
これは一体何なんでしょうね、と、彼女は呆れたような声で言う。
「成程。何故、イレギュラーなものが僕と関わると常時発動になるんでしょう。」
それは、
「おそらく推測ですが、あなたの事をもっと知りたいという私自身の「強欲」なのでしょう。」
「じゃあ、貴女の強欲は僕に対しての想い。という事ですか?」
ええ、と、
「そのようです。私の強欲はあなたの為に、発動しているようです。しかし、私には今、あなたの事をとやかく言うことはできません。」
なので、
「あなたの方から今の気持ちを伝えてください。この心を読む、めんどくさい能力な私に。」
わかったよ、と、
「僕さ、こうやって喧嘩したの久しぶりなんだ。中学の頃は今よりもっとコミュ障で、喧嘩する奴なんて全然いなかったんだ。でも、喧嘩する奴がいないという事は、同時に友達がいないというものなんだよね。でも、そんなとき、僕の前に一人の救世主が現れたんだ。」
そいつはね、
「凄いお人好しだったって言うとあれだけど、とりあえず優しくていい奴だった。」
そして、彼は声を少し明るくし、続けた。
「ある日、僕がいつものように教室でラノベを読んでいる時に、ある事が起こったんだ。」
「ある事って?」
ニヤッ、と俯いている顔に笑顔が見える。
「いじめだよ」
え?と、呆然と思う彼女に考える時間もなく新しく言葉が生まれる。
「僕さ、「ミーハー」みたいな奴らがすごい嫌いで、クラスとかで「アニメとかラノベとか見てる奴ってキモくない?(笑)」とか言って、しばらくすると、「youの名は。見た?超泣けるよね!」とか「このラノベ今流行ってるらしいから買ってみたよ」とか言ってる奴らに、腹がたって、ある日言ってしまったんだ。」
それはね、と、
「僕はお前等みたいなミーハーにアニメやラノベの事を言われるのがスゲー腹立つんだよ!」
と、ね。
そうしたら、
「ミーハーについてたスポーツの得意な奴とかに殴られてそれ以来、何もせずとも気晴らしに殴られたり、辱めを受けたんだ。」
そして、彼は、着ていたワイシャツのボタンを外し、さらに下着のシャツを脱ぐ。右胸の肋骨のあたりに手を置き、
「顔を上げてみてほしい。」
と、女に促し、顔を上げさせた。
「ほら、この肋骨、少し曲がってるだろ?これ、殴られて、折れるまでいかずに曲がったんだ。古傷ってやつだね。」
と、振り向いた先のありえないような光景に女は、
「い、今は痛くないんですか、」
ああ、
「痛くはないけどね、みてくれが悪いんだ。」
それでね、
「そんな感じで、いつものようにいじめを受けていた時にそいつが現れて、僕を助けてくれたんだ。」
そのセリフがなんとも言えなくてね、と、
「そんなに人に人を殴らせたり、人に人を辱めをさせることは楽しいのかい。俺だったらそういう事は自分でやって自分で楽しむものだと思うけどなあ。」
「とか、言ってすぐにそいつは僕を殴った男に、耳打ちで「その女の裸を見たくないか。」と、言ったらしくて(本人から後々聞いた)それに乗った男とそいつは、男に女の腕と口をあらゆる手段で塞ぎ、自由の効かない身体を覆う服を持っていたハサミで切って、下着姿にして、どっからか取り出した油性マジックで「変態です」とかそういうことを書き出して、身体いっぱいにそういうことを書いて、動けない女を一番人の通る、生徒玄関に置いたままにしたらしいよ。」
ヒェッ、と、そんな感じの表情の彼女に言葉を続ける。
「でまあ、そいつとその男は後々バレて、怒られたんだけど、それと同じようなことをした女も怒られたし、それ以来、いじめはなくなってね。」
と、話しているときに、彼女は言葉を挟んだ、
「・・・ミーハーに対して貴方が最初に言ったことが事の発端では?」
「え、」
僕は思い出してみる、
「 僕はお前等みたいなミーハーにアニメやラノベの事を言われるのがスゲー腹立つんだよ!」
「 あと、そいつと言っていた方も、下着姿が見たかっただけではないのですか。」
「言われてみれば・・・」
まあ!、と仕切り直した彼は、
「なんというか、要するに、ラノベへの理解があって、可愛くて、僕のことを思っている人がいるとすれば、僕はその人と付き合いたい。」
そして、
「くだらない喧嘩や、くだらない話、ふと出る相手への不満欲求などへの理解があればね」
彼は動揺している彼女に手を差し伸べ、
「貴女は僕の事を理解してくれるかい」
と、動揺していた彼女はみるみるうちに落ち着きを取り戻し、呆れた声で「やれやれ」と、言ってから
「本気で好きになった人への理解は出来ているはずです。しかし、私も人間です。理解してわかっているつもりでも、「嫉妬」と言う大罪を持っている限りは、貴方に不安や嫌気を与えてしまうかもしれません。それでも貴方が理解し合う対等な関係として側にいてくれるとしたら私は、理解したと言えるのでしょうか。」
と、不安げに、震える手をゆっくりと彼に向わせるが、その手は今も答えを求めている。
すると、彼女の怯えた手がもう一つ、自信に包まれた手に包まれる。すると声がかかり、
「いや、理解をするにはまだ時間がかかるかもしれない。だからこそ、二人で答えを求めようじゃないか、隠し事はせずにね。」
すると、彼女の瞳から輝く涙が落ちる。
そして、その涙は繋がっている手に落ち、それは、酷く熱いように感じられた。
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