ふくろうくんのくるみボタン

舟崎葵葉

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ふくろうくんのくるみボタン

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 ある日のばん。きつねのこん吉は、ふくろうくんの店でキャンドルを1本かいました。
「こん吉くん、おまけあげるよ」
「これ、なあに?」
「くるみボタンだよ。木のボタンを ぬのでくるんで、ししゅうしたから、くるみボタンっていうんだよ」
「へえー、すてきだねえ」
 くるみボタンには、ビーズがぬいつけられていて ふくろうくんのかおになっています。
「ボタンの うしろのひもで、カバンやぼうしにつけてみて」
「うん」
こん吉は、ボタンを くろいかばんにむすびつけました。
「ふくろうくん、ありがとう」
 店をでると、あたりはまっくらです。
 森のなかは、ふくろうくんのキャンドルだけが くらやみをてらす あかりです。

 キャンドルに火をともすと、くるみボタンがキラキラとかがやきました。
「うっふふふ。すてきなボタンを もらっちゃった。きっと、ぼくにだけのおまけだ! 」
 こん吉は、なんどもボタンをみて、うっとりしました。

〈おまけ
 おまけ
 おまけのボタン
 ふくろうくんから 
 もらったよ〉
 こん吉は、はなうたを うたいだしました。

「森のみんな、こんばんは。ぼくのうたきこえた?」
 こん吉は、ひとりで ぺらぺらとしゃべったり、うたったりしています。

〈こん こん こん こん ぼくにだけ
 こん こん こん こん おまけつき

 こん こん こん こん こん吉の
 こん こん こん こん たからもの〉

 こん吉が おおごえでうたっていると、
「うるさいなぁ、ねむれやしない」
 うさぎのぴょんすけが、家のまどからかおをだしました。

「やあ、ぴょんすけ。いいものをみせてあげるよ」
 こん吉が、カバンをもちあげてくるみボタンをみせました。
「えっ、みせてみせて。どこでかったの?」
 ぴょんすけが、まどから みをのりだしてきました。
「うっはっはっは~、これはもらったんだ。ふくろうくんの店で キャンドルをかったから」
「ふーん」
 ぴょんすけは、そういうと、 まどをしめてしまいました。
「なんだ、ぴょんすけったら・・・・・・。そうだ! あした、森のみーんなにくるみボタンをみせようっと」
 こん吉は、はなうたをうたいながら 家にもどりました。

 つぎの日。こん吉は ボタンをむすびつけた カバンをもってひろばにむかいました。
「みんなー、ぼくのたからものみせてあげるよ」
 こん吉がおおきなこえでいうと、森のみんながあつまってきました。
「これは、くるみボタンっていうんだ。木のボタンを ぬのでつつんで、ししゅうしてあるんだぞ」
「うわあ、いいなあ」
「ふくろうくんにもらったんだよ。ぼくにだけのおまけなのさ」
 こん吉がいうと、みんながざわざわしはじめました。

 そこに、ちいさなぼうしをかぶった、ぴょんすけがやってきました。

〈ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん おいらにも
 ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん おまけつき

 ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん ぴょんすけの
 ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん たからもの〉 
 
「やあ、こん吉。こんにちは」
 ぴょんすけが、ぼうしをとってあいさつをしました。
「キャンドルをかったら、ふくろうくんがくるみボタンをくれたんだ」
 ぴょんすけのぼうしに、金いろにひかるボタンがついています。

「えっ、きみもくるみボタンをもらったの?」
「うん、そうだよ。いいだろう。ひとはり ひとはり金いろの糸でぬってあるんだって」
 ボタンは、おほしさまのかたちにししゅうされています。
「ほら、みてよ。ボタンのうしろにあながあるだろう。ふくろうくんがリボンをとおすといいよって」
 ぴょんすけが、ぼうしからボタンをとって みせてきました。
「こんなに金いろにがやくボタンをみたことないよ」
 こん吉が、ぴょんすけから ボタンをとって ふたつならべました。

「金いろのボタンもいいな。ぼくのかばんにぴったりだ」
「こん吉のボタンもすてきだね。なないろに かがやいていてみえるよ」
「ねえ、ぼくのぼうしにもつけさせて」
 こんどは、ぴょんすけが ふたつのボタンをとって ぼうしにつけました。
「おいらのぼうしにぴったりだ!」
 ぴょんすけがぼうしをかぶってとびまわりました。

「そうだ! ぼく、いいことかんがえた」
 こん吉がおおきなこえでさけびました。
「ぴょんすけ、たいけつしようぜ! ボタンをなげて、さきにひろったほうが ふたつもらうっていうのはどうだ」
「よし、わかった。おいらがとってやる!」
ぴょんすけは、ボタンをひとつ うけとりました。

「それーっ!」
 こん吉とぴょんすけは、ボタンをそらたかくなげました。
「がんばれー、こん吉」
「がんばれー、ぴょんすけ」
 まわりでみていたみんなが、おうえんしはじめました。
 ボタンは、くるくるとまいながら、ぴょんすけのあしもとにおちました。
「やった、ボタンをとったぞ。おいらのかちだ!」
 ぴょんすけがとびあがってさけびました。
「いや、だめだ。やりなおし。きみのほうがなげるのがおそかったじゃないか」
「でたらめいうな、おなじくらいになげただろう」
 ぴょんすけがこん吉につかみかかりました。
「あともういっかい、しょうぶしようぜ。ぼくがうたいおわったら、ボタンをなげよう」
「もういっかいだけだぞ」

〈こん こん こん こん ぼくにだけ
 こん こん こん こん おまけつき

 ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん おいらだけ
 ぴょん ぴょん ぴょん ぴょん おまけつき〉
「それーっ!」

 ふたつのボタンがそらをまうと、それぞれが、ひとつずつひろいました。
「あっ、それぼくのボタン」
「そっちこそ、おいらのボタンじゃないか」
 こん吉は、金いろのボタンをつかみ、ぴょんすけは、なないろのボタンをとったのです。
「あしたもたいけつするぞ」
「こんどこそ かってやる」
「ふんっ」
「ふんっ」
 おたがい、ひとつずつボタンをもって 家にかえりました。

 たいけつをみた森のみんなは、こぞって ふくろうくんのみせにキャンドルをかいにいきました。
 ふくろうくんは、たくさんボタンをつくっていたので、みんなもおまけがもらえて大よろこびです。

 こん吉とぴょんすけは、みんながボタンをもらったこともしらず、きょうもたいけつをしています。
 ふたりとも、こんどこそふたつとももらうぞともえていました。


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