幼なじみのマイペースな男子と情緒不安定な男子が恋人になってみる。

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幼なじみの僕ら【ユウト】

僕らの関係【第1章完結】

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「ユウトもしかして見てた?」
「……っ、」
「……そっか。」

ショウちゃんが珍しく落ち込んだ顔してる……。


『僕がショウちゃんだけ好きになったらショウちゃんも僕だけを好きになるの?』


僕がこんなこと言っちゃったせいだ。


「ユウトは心配しなくていいよ。」
「……」

ショウちゃんが頭をポンポンと撫でてくれた。

「ショウちゃん……」
「ん?」

僕の意思に反して涙が溢れてくる。

「なんでユウトが泣くの?」

ショウちゃんが笑って抱きしめてくれた。
落ち着かせようと背中をポン、ポンって心地よく撫でてくれてる。

僕は意を決してショウちゃんから身体を離した。

「ユウト?」

ショウちゃんの声に少し不安が混じってる……。

「ショウちゃん……」
「ん?」
「僕、ショウちゃんと付き合えない……」
「……」

僕がショウちゃんを独占するみたいな変なこと言ったせいで、ショウちゃん辛い目にあったのに僕は何もしてあげられない。

多分、今まで通りに戻してあげることがせめてもの救いになると思う……。

それに……この先僕と付き合ってもショウちゃんは幸せになれない……絶対。

だからこれがいい。


「いやだ。」


え……?


「俺、絶対ユウトと付き合うから。」
「え……でも、ショウちゃんお試しって言ったじゃん……」
「言ったけどユウトは絶対俺と付き合った方がいいって。」
「でもショウちゃんは僕と付き合わない方がいいよ……」
「なんで?」
「だって、だって……」
「言えないなら付き合う。」
「だって、僕と付き合ってからショウちゃん無理ばっかりしてる……!」

苦手な早起きしたり、バイトや家事で忙しいのに僕に合わせてくれてる……今日のデートだって……彼女と別れたのだって……。

「無理してないよ。早起き以外。」
「僕のせいで彼女と別れたんでしょ?」
「違う。」
「……」
「俺がユウトと付き合いたくて別れたの。」
「やっぱり僕のせいじゃん……」
「どこがユウトのせいなんだよ。」
「僕が変なこと言わなきゃ恋人になろうって話にならなかったじゃん……」
「……そうだっけ?」
「……」

僕がうつ向くとショウちゃんが両手を繋いできた。

「ユウト。」
「……」
「俺はユウトのこと誰にも渡したくないって思ったから恋人になりたいって言ったんだよ。」
「……僕のことなんか誰も盗らないよ。」
「……でもユウトは俺以外に特別に想う人と出会うかもしんないだろ。」
「……」

(ショウちゃん以外の人……?)

「俺は一生ユウトの一番で、俺だけがユウトの特別でいられるって思ってたの。でもユウトが他の人にも心許してるって思ったらすげぇ嫌だった。」
「……」
「俺はずっとユウトの一番特別でいたいんだよ。」

ショウちゃんが僕を抱き寄せて、自分のそばに繋ぎ止めるみたいにぎゅうっと抱き締めた。

「……ショウちゃんの一番は?」
「俺にはユウト以外特別はいないから。」


(ショウちゃんの特別が僕……?)


小さい頃からショウちゃんと一緒に育った。

みんなに囲まれて、たくさんの人に愛されてるショウちゃんを見てきた。

みんなの特別な存在であるショウちゃんが僕だけを特別に思ってるなんて……思いもしなかった。


でも同時に気づいた。


僕はみんなの特別だからショウちゃんが好きなわけじゃない。

お互い相手を想い合えたり、怒っても仲直りできたり、お互いに悪い部分を知ってても好きでいられる。
そんなショウちゃんとの関係が好きだ。

そういう相手になってくれたショウちゃんが大好きだ。

先輩や他の友達とは違う。

ショウちゃんは僕の特別だ。


「ショウちゃん……」


僕はショウちゃんの叩かれた頬を撫でた。
ショウちゃんが僕の手に顔を擦り寄せた。


「ユウト、好きだよ。」
「……」


ショウちゃんに好きって言ってもらうとどうしようもなく感情が高ぶる。


「本当に僕でいいの……?」
「ユウトじゃないとだめ。」
「……」
「また泣いてる。」
「ショウちゃん……」
「ん?」


ショウちゃんが僕の顔を覗きこんで目が見えるよう前髪を指で優しく撫でた。
僕は緊張しながら顔を上げて真っ直ぐショウちゃんの目を見た。


「僕も……ショウちゃんが好き。」
「……」
「みんなへの好きと違うよ。ショウちゃんは特別。特別大好き。」


ショウちゃんが固まってる。


(え……引いてる……?)


僕はソワソワしてきた。
拒絶されるのが怖くなってショウちゃんの腕から出ていこうと身体を離した。
そしたらすぐにショウちゃんに腕の中に引き戻された。

「うっ……ショウちゃん……?」
「本当に?ユウト……」
「え……?」
「俺、特別?俺のこと好きなの?」

こんなの初めてだ。
ショウちゃんの方がパニクってる。

「そうだよ。」
「そうだよ、じゃなくてちゃんと言って。」
「え……うぅ、」
「……」
「ショウちゃんが好きだよ。僕ショウちゃんの恋人でいたい。」
「……」

ショウちゃんがぎゅうってさっきより強く抱きしめてきた。

「俺心臓バクバクしてる……」
「本当だ。」
「こんなの初めて。」
「ふふっ」
「俺ら今から本当の恋人だね。」
「うん。」

ショウちゃんがすっごく嬉しそうで僕も胸があったかくなった。

「キスしていい?」
「え……」
「恋人になったんだからキスしようよ。」
「う、う……でも、」
「俺からしてあげるから目つむって。」
「うん……」

恥ずかしい……でも、ショウちゃんともっと深く繋がりたい。

「……っ!!」

目を閉じたらすぐショウちゃんの唇が僕の唇に重なった。

(うわぁ……)

心臓がすごい早さで動いてる……。

呼吸……呼吸しなきゃ。

息継ぎしようと口を開いた。

そしたらまたショウちゃんの唇が重なった。
さっきよりもさらに深く重なった。
ショウちゃんが僕の唇を唇でハムって食べちゃうみたいにした。

そこで僕はキャパオーバーで腰が砕けて座りこんでしまった。

「ユウト?」
「……っ、」

僕は恥ずかしくてショウちゃんの顔が見れなかった。

「ユウト立てるか?」
「……」

ショウちゃんが差し出してくれた手を取って立ち上がったけど、なんか僕の身体はふにゃふにゃでショウちゃんに抱きついてしまった。

(はずかしい、はずかしい……!!)

ショウちゃんは腕の中に収まる僕の頭を撫でていた。

その後ショウちゃんに手を引かれて僕は無事帰宅できた。


それから僕は恥ずかしくて恥ずかしくて一週間ショウちゃんの顔が見れないし口も聞けなかった。
ショウちゃんはちょっと怒ってたけど恋人のままでいてくれた。

彼女さんとは何度も話し合って、ちゃんと円満に解決できたそうだ。

(二人が納得いく結果になってよかった。)


「ユウト、今夜ウチ泊まる?」
「なんで?」
「母さん夜勤なんだよ。」
「あー」

(一人ぼっち淋しいよね)

「うん。行く!」
「わかった。飯どうする?出前取る?」
「出前……!」
「何食べよっか。」
「えっと……」


僕らはいろいろあったけどようやく一段落ついて恋人として関係を育みはじめた……と思っていたけど、この夜お互いが暴走してまた関係を拗らせることになる。

性格のまるで違う僕らに『落ち着いてお付き合いする』ってことはどうやら難しいみたいだ。



第一章 end.
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