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前編
思いもよらない朝
しおりを挟む「宮島くん、おはよう」
「……」
翌日登校してきて自分の席で本を読んでると、まさかのコウちゃんから声をかけられた。
「っ、おはよう!」
「昨日せっかく声かけてくれたのに素っ気ない返事になってごめん」
「いや、俺こそ急に話しかけてごめん……!」
「昨日家で記念写真と手紙確認したら宮島くんと仲良くしてた時のこと思い出したよ」
「え、え……本当?!」
「うん、空手道場で俺から声かけたよね?」
「そう!そうだよ……!」
(コウちゃん思い出してくれたんだぁ!!)
俺は身体が浮き上がるほどの喜びを感じた。
「あの、長瀬くん!手紙返事返せなくてごめん!!」
「……」
「ウチの事情で住所とか手紙とか全部失っちゃって、空手道場に出向くことも出来なくて、音信不通になってごめん」
「小さい頃の出来事だし、どうにもできないこともあるよね。俺は怒ってないよ。気にしないで」
「ありがとう……ごめん」
「もう謝らないで。再会できてよかったよ」
「うん、俺も!再会できて本当嬉しい!!」
(ほらぁ、やっぱりコウちゃんは優しい……)
目の前にいるのが自分の知ってるコウちゃんだって実感が湧いて胸が温かくなった。
「ねぇ今日お昼一緒に食べない?」
「え、いいの……?友だちは?」
「みんなとはいつでもいられるし、宮島くんと一緒に過ごしたい。宮島くんは?」
「俺も……!!一緒に過ごしたい!!」
「よかった。じゃあお昼にまたここに来るね。」
「う、うん!待ってる!!」
(わぁ、一人で昼食卒業だ……!!)
空手道場の時もこうやって1人でいた俺に優しく声をかけてくれて孤独を埋めてくれたんだ。
(やっぱりコウちゃんが好きだな……)
コウちゃんは昔から内面も外面もキラキラしてる。そしてイケメンにさらに磨きがかかった。前よりも、もっともっと王子様みたいになってる……笑顔が眩しい。めっちゃモテるんだろうな。
うちが男子校だから俺はコウちゃんと平然とやり取りできるけど、女子がいたら今よりさらに人気者でコウちゃんになかなか近づけなかったかもな。
「……」
俺はあることに気づいた……俺、母さんかバイト先の店長と教育指導の先輩に受け答えするしか会話しない毎日を送ってる。コウちゃんとちゃんと会話できる自信がない……。
俺は昼休みまでずっと会話のイメトレをして過ごした。
「宮島くん」
「あ、えっとどうぞ!!」
お昼休みになってすぐコウちゃんが教室にやってきた。
俺は友だちと昼ご飯を食べたことがないからどう振る舞っていいのかわからなくて、とりあえずコウちゃん用に用意しておいた(事前に前の席のクラスメイトに借りる許可を取った)椅子を引いて腰をかけてもらうよう促した。
「ははっ、紳士だね」
「いや、……ごめん」
「ううん、嬉しいよ」
コウちゃんが持ってきたお弁当を広げたから、俺もそれに習ってお弁当を広げた。
「宮島くん、よく俺だって気づいたね」
「新入生代表挨拶してるの見てすぐにわかったよ!ていうか、代表挨拶とかすごいね!」
「挨拶は運が良かっただけだよ。それより宮島くんが俺のこと覚えててくれたのが嬉しい」
(うぅ……こんなふうに微笑まれると女子なら一瞬で恋しちゃうだろうな……)
「忘れるわけないよ。空手道場で助けてくれたこと死ぬまで忘れないもん」
「……」
(あ、ヤバイ……!!重いやつって思われたかも!!)
「これは言葉の文で、それくらい大切な思い出って思ってるってことだよ!!ごめん!!」
「いや、すごく嬉しいよ」
コウちゃんが微笑みかけてくれるだけで顔が熱くなった。
「明日からもお昼一緒に過ごしたい」
「え、いいの?」
「宮島くんはいいの?」
「いいよ!!俺いつも一人だから!!いつでも!!」
「やった。じゃあ今日からよろしくね」
「こちらこそよろしく」
「なんか変な会話だね」
「ふふっ」
気恥ずかしくて変な笑い方してしまった自分が気持ち悪くて爆発したかったけど、コウちゃんは引いたりせずに笑ってくれた。
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