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リップサービス【高垣視点】
予定外の誕生日
しおりを挟む誕生日の日は近下と過ごす約束をしていた。
けど、中学時代からの友人たちがサプライズでお祝いにやってきた。
近下に約束を遅らせてほしいとメッセージを送った。
すると、まさかの近下から『せっかく友達来てくれたなら、そっちで楽しんで!俺はお祝いするのいつでもいいから。』という返信がきた。
(え?!え、ちょっと待って……!!近下絶対なんか勘違いしてる!!)
近下は多分この日のためにたくさん想像力を働かせて準備してくれたはずだから、すごいへこんでると思う。
それに俺自身も近下とお祝いできるの、すんごい楽しみにしてたから会えないのはショックすぎる。
俺は友達と別れた後、急いで近下に電話した。
けど、全然出てくれない……。
(近下がめちゃくちゃ怒ってる……?)
俺は不安になりながら近下の家まで会いに行った。
何度目かの電話でようやく近下と繋がった。
呼び出すと窓から顔を覗かせてくれた。
(寝てたんだ……寝癖ついてる……めちゃくちゃ無防備な近下だ……)
俺は嬉しくなって近下に手を振った。
近下は薄着のまま誕生日プレゼントであろうものを握りしめて出て来てくれた。
近下から誕生日プレゼントを受け取った。
何気なくした会話を覚えていてくれて俺は嬉しい気持ちが爆発した。
気づいたら近下を抱きしめていた。
(今ロマンチックだし、俺誕生日だし、キスしてみようかな……)
近下の頬に触れて、顔を近づける。
近下が緊張した顔で、ぎゅっと目をつむってくれた。
(可愛い……キスしていいんだ……)
「……」
俺は近下に触れる直前までいって、制止した。
理由はご機嫌とりのためにキスしたみたいで、それってチャラすぎると思ったから。
近下との最初のキスはもっとロマンチックなものにしたかった。
近下もその方が喜んでくれると思う。
けど……
『高垣、俺たち恋人やめよう。普通のクラスメイトに戻ろう。』
その晩、別れ話のメッセージが届いた。
俺はメッセージを見つめたまま数分固まってしまった。
胸もズキンズキン痛い……。
ショックで状況が受け止めきれなくて、既読無視して寝ずに悩んだ。
近下もやっぱり俺に嫌気がさしたんだ……友達と平等なんて嫌なのかな……俺の付き合い方が悪いんだ。
俺は悩みに悩んだ末、近下の申し出を受け入れた。
『近下がそうしたいならそうする。今までごめんね近下。』
(近下を傷つけてるなら、俺が諦めるべきだ……)
これまでも友情の延長線だったし、気持ちが落ち着いたらまた友人として二人で喋れる日が来るだろうし、そしたら出かける約束もできるだろう。
また一緒に過ごせる日が来るはず。
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