【本編完結】リップサービス

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リップサービス【近下視点】

距離間のないアイツ

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あの体育の時間以降、日浦が頻繁に声をかけてくるようになった。
廊下で会うと絡まれるし、教科書借りにきたりもするし。
何なんだよ、アイツは……。

俺が日直当番の日だった。
放課後教室で日直の仕事を終わらせようと日誌を書いていた。
そしたらなぜか高垣たちが教室に残っていた。
まだ日誌書けてない部分があったけど、高垣のいる空間から早く離れたくて廊下で日誌を書きはじめた。

すると、日浦がやってきた。

「寒いのに廊下で何やってんの?」
「日直の日誌書いてる。」
「真面目……」
「普通だろ。」

日浦が俺の肩に手を回して書くものを覗きこんでくる。

(こいつ本当パーソナルスペース近いよな。)

「お前もしかして、唇乾燥してる?」
「え?」

唇が乾燥してきて無意識に唇を噛む癖が出ていたんだろう。

「ほら」

日浦がリップを差し出してきた。

「……俺が使って不快じゃないの?」
「なんで?」

(陽キャはみんなこういうノリなのか?)

男同士なのに気にするのが可笑しいのか?
日浦からリップを受け取って塗ろうとした。


その時、


「待って……!!」


腕を掴まれて阻止された。


掴まれた腕の先を見ると、珍しく余裕のない表情をした高垣がいた。


(え、え?!高垣?!?!)

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