【本編完結】リップサービス

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リップサービス【近下視点】

ロマンチックな修学旅行

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修学旅行の1日目はテーマパーク観光だ。
前日までの気持ちとは裏腹に楽しくなってきた。
友人たちと次どうするか確認しながらアトラクションを待ってる時だった、急にスマホにメッセージが届いた。

相手は高垣だった。

(え、なに……?!)

『近下、右見て』

(右?)

アトラクションに並ぶ列の遠くで手を振る高垣の姿が見えた。

俺は思わず顔が緩んだ。
俺も無意識に手を思いっきり振っていた。
俺の友人たちはテンションの高い俺の様子を不信がっていた。
高垣から『何のアトラクション乗った?』とか『もうお土産買った?』とかメッセージがちょくちょく届いて俺はその度にキュンキュンときめいた。

(なんかちょっと恋人っぽいやり取りな気がする!!)

俺は旅行前からあることを決めていた。
実行するべく終園間近お土産屋に寄った。
そして高垣にプレゼントするものを選んだ。

(こっそりお揃いにしようかな……へへっ)

(旅行が終わって放課後挨拶に来てくれた時ひき止めて、二人っきりになって渡すんだ。)

俺はお揃いでもバレにくいペンをプレゼントすることにした。

(お揃いって知ったらさすがの高垣も引くかもしれないしな。俺は家で使おう。)


1日目の修学旅行が終わろうとしていた。
俺は友人とホテルの部屋に入って荷ほどきをしていた。
そして友人とどっちが先に風呂入るか決めるためジャンケンしてる最中、扉をノックする音が聞こえた。

「先生かな?」
「さぁ」
「近下出て。」
「はぁ?」

めんどくせぇって思いつつも、しぶしぶ俺が対応することにした。

「はい……」
「よかった、近下だ。」
「……」

目の前にいたのは高垣だった。

「え、えっどうしたの?!」
「お土産渡しにきた。」
「えっ」

部屋の奥から友人がやってきた。

「あ、高垣じゃん。どうしたの?」
「おう!ちょっとな。」

高垣は教室の隅っこにいるような俺たちにも分け隔てなく優しいから、俺の友人たちからも慕われてる。

(本当どんだけ人気者なんだよ……じゃなくて、)

「ちょっと俺、高垣と話したいことあるから先風呂入って!」
「おー、わかった。」

友人は風呂の用意を持ってすぐ浴室に入っていった。
俺は部屋の中で高垣を待たせて自分が買ったものを取りにいった。
そして友人がシャワーを浴び始めて俺たちの会話が聞こえないことを確認してから話し出した。

「高垣、俺もっ、高垣にお土産……っ、」
「え、マジで?!じゃあ交換しよ!」

高垣からお土産を受け取った。
そして俺が渡したお土産を嬉しそうに高垣が開けはじめた。
俺も高垣からのお土産をドキドキしながら開封した。

(わぁ、キーホルダーだ……かわいい……)

高垣が俺のために選んでくれたのが嬉しくてまじまじキーホルダーを見てたから、高垣がこっちを見ていたことに全然気づかなかった。

「あ、ペンじゃん!俺もこれ買うか迷った!」
「高垣、ありがとう……」
「……こちらこそ、ありがとう。」

俺はまたキーホルダーを見て喜びを噛み締めた。

「近下」
「ん?」
「それ、俺もお揃いで買ったんだけど、そういうの迷惑じゃない?」
「えっ」

お揃い?!?!?!

「め、め迷惑じゃない!!!!あの、俺も、実はそれ、自分の分買ったから……!!!!」
「これ、近下も持ってるの?」

高垣が人なつこい、かっこいい笑顔を向けてくれた。
俺は頭を縦に振ることしかできなかった。

「お揃い二つもできたな!嬉しい。」
「お、俺、」

ガチャッ

友人が風呂から上がる音がした。

「俺そろそろ行くわ。」
「あ……」
「おやすみ、近下。」
「おやすみ……っ!!」

高垣が部屋を出て扉が締まると同時に俺は項垂れた。

(俺の走馬灯には絶対この瞬間が映るな……)

俺は一人で幸せを噛み締めた。

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