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第6章 ヤーベ、辺境伯のピンチを華麗に救う!

第52話 『聖女のおパンツ騒動記』を華麗にスルーしよう

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華麗に屋根から屋根へと飛び移って移動しているヤーベ。

ぐるぐるエネルギーを巡回させ移動すると、体が羽の様に軽くなったような気がして、かなり調子に乗って移動した。時には大通りを跨ぐように空中を飛んだ。

「いやー、空中を飛ぶって気持ちいいな、イリーナ」

「ひょわわ~」

空中を飛んで移動する事にすっかり慣れたヤーベに比べて、いまだ体を操られているイリーナは奇声を上げてビビっていた。





「ふうっ!一息入れよう」

俺は屋根の上で一旦止まってイリーナに一声かける。

「ひょわわ~」

よく見ればちょっと目が回っているようだ。三半規管弱すぎだぞ?
コルーナ辺境伯家はこの先、坂になっている大通りを上がって行けば着く。
もうすでに視界には入っているしな。やっとここまで移動出来たわけだ。

と、少し落ち着くと腹が減って来たな。

・・・いつから腹が減る様になったかって?
確かに一人でいた時は睡眠も空腹も感じないし不要だったけどね。
ローガ達やヒヨコ隊長たち、なによりイリーナと生活するようになって、食事の準備をしたり一緒に食事しているうちに、何となく時間になると空腹感を感じるようになった。
生活リズムって大事ね。

「というわけでイリーナ。コルーナ辺境伯家に戻る前にメシにしよう」

「ほわっ? 何がというわけでかはわからんが・・・確かにお腹は空いたぞ」

「じゃあ食べに行こう」

「で、何を食べるのだ?」

イリーナは小首を傾げて聞く。
だが今の俺は<勝利を運ぶものヴィクトル・ブリンガー>を発動してるため、俺の視線はイリーナの後頭部を見ているような感じだ。ちょっとヘンな感じ。

「ふふふ、すでにアタリは付けてある。この屋根の下だ。滅茶苦茶香ばしい良い匂いがする。オレのカンに間違いない」

地球に居た頃から、こういった事には鼻が利くのだ。

「この匂い、間違いない・・・醤油を使ってるな」

異世界ラノベでなぜか手に入らないのが日本食。それも醤油はなかなか希少だったり、手に入らなかったりしている。それは醤油という調味料が日本独自の文化で培ってきたものだからだろう。同義語に味噌がある。だが、異世界だからと言って、無いとも限らないのだ。あっても別におかしくはない。作り上げた職人に感謝すればいいのだ。心の底からありがとうと。

今香って来ているモノ、それはチャーハンだ。俺のカンがそう告げている。

「イリーナ、行くぞ」

「ほえっ!?」

俺は屋根から空中二回転した後ふわりと店の前に着地する。

「ふっ、華麗に決まった!」

そう思ったのだが、

「ヤヤヤ、ヤーベ!」

イリーナさんが怒っています。どうした?
とりあえず<勝利を運ぶものヴィクトル・ブリンガー>を解除して亜空間圧縮収納からローブを取り出して着込む。

イリーナの前に立った俺をイリーナが真っ赤な顔をしてほっぺを膨らませて睨んでいた。

「ヤーベが手をコントロールしているから、スカートを押さえられなかった・・・」

「ほわっ!?」

イリーナの口調が移っちまった。
というか、イリーナってミニスカートだったな・・・
まったく気が付かなかった。
今、空中二回転で無駄に華麗に店の前に着地した時、足から真っ直ぐ降りた。
両手も無駄に華麗に回した。
スカートは押さえなかった。
つまり、下へ降りた時、スカートは全力で捲れ上がっていた事が予測される。
俺は風の精霊シルフィアと契約しているが、スカートを守ってなんてお願いはしていないから、ラノベのお約束にある美人エルフのミニスカの中が絶対見えない!なんてことは無い。

それは、つまり、イリーナのおパンツが全開で丸出しになっていたということで・・・。

「ヤ~~~~ベェ~~~~」

イリーナの目は涙が溢れて決壊寸前のダム状態だ!

「バカバカバカバカ!」

そう言って俺の胸に飛び込み、ポカポカパンチを繰り出す。
地球時代、リア充爆発すべしっ!って思ってたけど・・・ポカポカパンチ、全然痛くない。むしろ守ってあげたくなる。リア充共が感じていたのはこれだったのか!

「まあまあ、イリーナのおパンツは俺だけのものだから気にするな。それよりお腹空いたろ? お店に入って腹ごしらえしよう」

「ふえっ!? ヤーベだけの・・・ほわっ・・・うん、お店入いりゅ」

何だが顔を真っ赤にしてろれつが回らなくなったイリーナ。どうした?俺なんか変なこと言ったか? まあ、ローブの裾はしっかり握っているから、とりあえず大丈夫か。



「毎度! 大将やってる?」

俺はボロ目の木でできた引き戸を開けて中に声を掛ける。

「毎度。やってるよ」

ちょっとぶっきらぼうなガタイのいい親父がカウンターの奥から返事をする。

「どこでも好きな所へ座ってくれ」

俺はイリーナを促してカウンターに座る。ありがたい事に丁度他の客が誰もいない。

「この匂い醤油だな。実に香ばしい良い匂いだ。それをメシで絡めて炒めた料理か?」

「そうだ、よくわかるな。チャーハンってんだ」

「マジか!」

それ、地球時代と同じじゃん!食べるしかねェ!

「チャーハン大盛で! イリーナは普通盛りでいいか?」

「ふぇ!?」

「だから、チャーハンの量は普通盛りでいいかって」

「ああ・・・普通盛りでいいら」

「さっきから語尾がおかしいぞ?」

「ふえっ!? そ、そんなことはないにゃ」

「? まあいいか、大将!チャーハン大盛と普通盛りで!」

「あいよっ!」

俺は大将の鉄鍋を振るう荒業を見ながらチャーハンの完成を楽しみに待つことにした。





-そのころのフェルベーン-


「み、見たか! 今の・・・」
「ああ・・・、天女だ」
「いや、聖女だろ。大勢の人を回復させて姿をくらましたと思ったら空飛んでたんだぞ」
「・・・しかも、おパンツ振りまいて」
「「「「ステキだ・・・」」」」

大勢の男たちが空を見上げながら恍惚とした表情を浮かべていた。



「女神様だ!女神様が現れたぞ!」
「いや、聖女様だ!王都の性悪聖女じゃなくて、本物の聖女が現れた!」
「女神様だ!」
「いや、聖女様だ!」

若い神官たちが大通りで揉めている。空を飛んでいた女性を女神様と呼ぶか聖女様と呼ぶかで揉めているようだ。何気に王都の聖女様はディスられていた。

「あれほどの重篤な者達を完全に回復させるなど、正しく女神の御業に違いない!」
「確かに!王都の性悪聖女とは雲泥の差だ!」
「バカ野郎!比べるのもおこがましいわ!」

イリーナの女神への昇格と共に、王都の聖女のディスりが加速する。

「それにしても・・・」
「「「純白のおパンツ、最高でした・・・」」」

神官たちは空に祈った。





町の女性たちは通りで狂喜乱舞していた。

「見た見た? 今空飛んでたよね! あれ、使途様の従者様なんでしょ?」
「なんだか、あの女性も聖女様みたいよ!」
「女神様だって聞いたけど?」
「「「キャーーーー!スゴイ!!」」」

キャイキャイと女性だけで盛り上がる一団。このような井戸端会議的な集団があちこちで勃発していた。

「すごーい、女神様だって!」
「ものすごい高価な鎧来てたよね!」
「さすが女神様!」
「それにしても・・・」
「「「白いおパンツ、カワイかった~~~~!」」」

イリーナの白いおパンツは女性にも大人気であった。

そして、城塞都市フェルベーンにて、清楚な白いおパンツが大人気となり、お店で売り切れが相次いだのであった。





-そして王都-

「聖女様!大変です!」

王都バーロンの大聖堂。聖女と呼ばれた少女の部屋はきらびやかで豪華な造りであった。
その部屋の扉をノックして神官が入って来た。

「何よ!うるさいわね!」

美人と言えば美人なのだろうが、口の利き方と目つきで非常にキツいイメージを与える少女が答える。

「城塞都市フェルベーンにて、聖女様が現れたそうです!」

「はあっ!? 何言ってんのよ。バカじゃないの?私はここにいるでしょ」

若い神官を見下すように伝える聖女と呼ばれた少女。

「千人以上の重篤な患者を完全に回復させたとか」

「なんですって!?」

そんなバカな話は無い。重篤な患者を完全に回復させる魔法など、奇跡の御業である。
当然聖女自身には無理な話だ。

「そして・・・回復させた後フェルベーンの町の屋根を飛び回って去って行ったとか」

「はあっ!? なんで屋根を飛び回ってんのよ?」

意味が分からない。

「それも、白いおパンツを振りまいて飛んで行ったとかで・・・。フェルベーン町では『聖女の白いおパンツ』として話題沸騰中です」

「な、な、な、何言ってんのよ!? あたしそんなハレンチな真似してないわよ!」

怒りだす聖女。若い神官も文句ばっかりで態度の悪いこの聖女の事だなどとは露程も思っていない。ぜひともその本物の聖女に王都に来てもらえないか・・・と切に願っていた。

「聖女様! 大変です!」

またも同じセリフでドアがノックされる。先ほど来た若い神官は目の前にいるので2人目だ。

「城塞都市フェルベーンで女神様が降臨なされました!」

「「はああっ!?」」

先ほど聖女が出たという話だったのに、今度は女神!?

「千人以上の重篤な患者を完全に回復させ、空を飛んで去ったそうです!」

「あ、さっきの聖女様の話ですかね?」

若い神官が口を挟む。

「そうそう、というか聖女ってレベルじゃないらしいよ!まさに奇跡の御業だって!」

神官たちのテンションが上がる。

「しかも女神様は清楚な白いおパンツを振りまいて空を飛んで行ったと・・・」

くうう~、すばらしい!」

感涙する神官たち。

「バカじゃないの!? なんなのお前達は!」

王都の大聖堂。聖女と呼ばれた少女は喚き散らしていた。
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