41 / 206
第5章 ヤーベ、地元のピンチに奮い立つ!
第39話 町を守るために出陣しよう
しおりを挟む
「お、お前の手勢だけで打って出るだと!」
ゾリアが大声を上げる。
まあ、一万の魔物を自分たちだけでどうにかする、と言っているようなものだがらな。驚かれるのも無理はないか。
「しかも、打って出るということは、この町の外壁を盾に防御しながら対応する、ということでなく、平原で一万の魔物に真っ向正面から当たるってことか!?」
信じられないという表情を浮かべて捲くし立てるゾリア。
「そう言う事だな」
「いくら何でも自殺行為では?」
代官のナイセーもさすがに無理があると思ったのか、疑問を呈する。
そりゃそうだよな・・・。
実際の所、一万ってどーなのよ?と自分でも思わないではない。
だが、どう考えてもこの町に一万の魔物が押し寄せて来たら、今までの平和な生活は崩壊するだろう。俺はそれを許容できない。
・・・所詮ノーチートのスライム野郎でしかない俺が、一万もの魔物をどうにか出来る・・・それは思い上がりでしかないのかもしれない。うまくいかないかもしれない・・・。でもまだわずかしか滞在していないが、この町の人々が好きだ。そして、カソの村の人々も好きだ。なら、そんな人たちが笑って生活して行けるよう、脅威は排除せねばなるまいよ。
「うまくいくかどうかはわからないが・・・比較的直進的に向かって来てくれるのであれば、策がないわけでもない。尤も、万一を考えると、当然この町の外壁で防御戦を行えるよう準備はしておいてもらった方がいいと思うけどな」
「その言い分だと、うまくいけば魔物はこの町に魔物が来ないように聞こえるが?」
ゾリアが俺を見つめる。
「そうだな、気持ち的には一匹たりとも魔物を通すつもりはない」
言い切る俺・・・カッコイイ?
隣を見ればイリーナが真剣な目でこちらを見ている。
・・・てっきり両手を胸の前で組んで目をハートにでもして感動しているかとばかり思ってたのに。まあ、ここでクッダク出されても困りますからねー。
「具体的にはどのような戦略で?」
ナイセーはこの町を取りまとめて来た代官だ。実務に長けた人間であるだけに、具体的な方法がわからないと納得できないだろう。だが・・・。
「俺様必殺の魔法?で、みたいな?」
「なんだそりゃ」
あきれ顔のゾリア。
「それでは安心してお任せすることが出来ませんよ・・・」
代官のナイセーも顔を顰める。
「もちろんこの町を救って頂けるのであれば、それに見合った報酬も用意せねばなりません。特に一万もの魔物の襲来という未曽有の危機を救ってくださるというのですから、その報酬は莫大なものになるでしょう。そしてこの町を救った英雄としての地位も。それらは、一万の魔物を退けたという結果が必要です」
一万の魔物を退けたという結果・・・。
この言葉の意味は深くて重い。
俺という存在を示す意味で、一万もの魔物を退けられるという存在がどういうものか。
筋肉馬鹿っぽいゾリアと違い、このナイセーは町を預かる代官だ。
この<迷宮氾濫>も領主やその上の王都へある程度正確な報告が必要だろう。その時、俺という存在はどのように映るのか・・・。
「それに関して、相談というか、提案がある」
「何だ?」
「何でしょう?」
同時に口を開くゾリアとナイセー。案外この二人仲がよかったりしてな。
「俺は自分の手の内というか、能力をある程度秘密にしておきたい。だから自分の手勢だけで打って出ると提案した理由もそこにある。だが、俺が迎撃に出た後「魔物を討伐した」と言って帰って来たとして、討伐した魔物が全く残っていなければ、現実として討伐が完了したかどうか判別は出来るか?」
「ま、魔物が全く残っていない・・・だと?」
「それは・・・、基本的には依頼完了、と判断できかねる事象ですね・・・」
そうだよね、証拠となる一万もの魔物が残っていないんだもの。
「だが、現実として多くの魔物がこの町へ押し寄せてきているわけだ。魔物の迎撃は必須・・・。だが、一万と正確に魔物の規模を把握しているのはここにいる俺たちだけだ。それならば、処理はともかく、報告はやりようがあるだろう?」
「・・・どういうことだ?」
ゾリアは意味が分からないと言った表情でナイセーに聞く。
「つまり、報告は一万という規模を隠し、もっと小規模な氾濫として対処出来た事にする、という事でしょうか。あなたという存在を隠したまま」
「ご名答」
俺は魔導士の杖で床をコツンと鳴らすように突いた。
「・・・ですが、それでは一万の魔物を退けた英雄としての結果を隠すのと同じことです。報酬も栄誉も無くなるということですよ?」
「おいおい、無報酬で働けってのかよ!?」
冒険者ギルドのギルドマスターであるゾリアが厳しい表情をナイセーに向ける。
こういうところは単純なゾリアに好感が持てるけどな。俺も一応だがギルドに登録している身だし、報酬無しで冒険者が働くという事は容認出来ない・・・という事だろう。
「むろん、さすがに無報酬というわけにはいかないと思いますが・・・。一万という魔物の規模を隠す以上、それに見合う報酬はもちろん出せません。そして、結果を確認するための魔物そのものが存在しない状況では、<迷宮氾濫>の被害を防いだ英雄としての評価も出来ない・・・ということになりますが」
「一体、魔物の存在を残さないって、どうするんだ? 極大呪文でもぶっ放して消し炭にでも変えちまうってか」
「ナイセーの言う通り、一万という規模の魔物を仕留めるという報酬は事実を隠す以上無理がある事は承知できる。元々英雄なんて立場に興味もないし、それも問題ない。後は<迷宮氾濫>の魔物たちを仕留めたことをどう確認してもらうかという事と、お前達二人が俺の事を誰にも話さないという言質を取ってから出陣したいという俺の希望を叶えてもらえるかどうかだな」
「なに?」
「・・・やはり、あなたは自分自身の存在を領主や国王に知られるとやっかいだ・・・とお考えなのですね」
ナイセーは溜息を吐く。
「なぜだ? 町を救う英雄だろうがよ! それこそ王都で国王様から褒美が賜われるかもしれない規模の災害だぞ!」
「だから、それが不要だと言っているんだよ、ゾリア」
「だから何故だ! 男なら誰しもが英雄に伸し上がる事を夢見るはずだ! これはチャンスなんだぞ、ヤーベ!」
力強く語るゾリア。きっと正道を駆け抜けて来たであろうゾリアの言葉は重く響く。
だが・・・。
「まあ、なんだ。お偉い方々からすれば、異質な力は不気味に映るものだよ。その力がどこへ向くのか・・・とか、益体も無い事を考えてしまいがちなものさ。ならば、最初からそんな力があると知られない方がリスクは少なくなるということだ」
「・・・・・・」
ゾリアは沈黙した。目の前に映るこの俺が、いかに怪しく見えるか。ローブをすっぽりかぶり、その姿を見せることはない。そして、一万の魔物を迎撃すると宣う。
「・・・俺がこの国の王ならば、お前を宮廷魔術師に迎えるんだがな」
ふっと苦笑するように言うゾリア。俺という存在のリスクを少し感じたような苦笑いだな。
「もし、辺境伯や国がお前に何か良からぬことをしようと企むなら、俺がお前の味方に付いてやるぜ。何といっても誰にも言えなくてもお前はこの町を救う英雄になるんだろうからな!」
ゾリアが今度は悪ガキが悪戯でも思いついたような悪そうな笑顔を浮かべる。
「そうならないために、彼は私とあなたにその秘密の一端を話してくれたんだと思いますがね」
今度はナイセーが苦笑しながら言う。どうやらナイセーには正しく俺の気持ちが伝わったようだ。後は彼が俺という存在をどう評価するか、だな。
「領主様と王国への報告は結果だけを伝えて、うまくあなたの事を隠しておきます。尤も、分かる人間がみれば、必ず調査が入るでしょうから、そうなれば冒険者ギルドの助力を得た、という事にしますので、ゾリアからもうまい説明協力をお願いしますよ」
「俺かよ!?」
「逆にあなた以外の誰がいるというのですか・・・」
ゾリアの驚きに呆れた声で返すナイセー。
「ところで、私も今気が付いたのですが・・・」
「どうした?」
俺とゾリアはナイセーに視線を移す。
「彼女はよろしいのですか?」
そうナイセーの指さす方向には・・・ローガに半分ほど埋まったままモフモフし続けていた副ギルドマスターのサリーナが。
「うおうっ!?」
「サリーナ、そんなところにいたのか! そういや話に夢中になってたけど、サリーナの気配がいつの間にか全くしなくなってたな」
「ふえっ?」
やっとローガから顔を上げるサリーナ。
「ローガ、ずっとモフモフされてたのか? 何なら声を掛けてくれればよかったのに」
『ボスが非常に重要な話をされていると思いましたので・・・』
若干サリーナに困ったような表情を浮かべながら気を使ってくれていたローガ。そりゃ悪かったね。
「で、我々の言質は取るとして、彼女はどうします?」
俺に意味ありげな笑みを浮かべて聞いてくるナイセー。
副ギルドマスターであるサリーナはギルドマスターであるゾリアの指示に従うんでないかい?
「サリーナよ、それで・・・」
話しかけたゾリアの言葉を遮るサリーナ。
「ヤーベ殿は素晴らしい人物。それだけです。私にはそれだけで十分です。モフモフは正義なのです! ローガ殿の主人ならば悪い人であるわけがないのです!」
えらく力説してくれるサリーナ嬢。
・・・まあなんだ、ありがたいですが。これもローガのおかげ・・・かな?
「わふっ(恐縮です!)」
笑顔で答えるローガ。出来る部下を持つと安心感が違うな。
「それでは、最後に・・・。我々としましては、町への脅威が完全に無くなった事をどうしても目で確認したいのです。つきましては、魔物を持ち帰れないという事であれば、ギルドマスターのゾリアを同行させてください。さっきの言葉にあったように、ゾリアはあなたを信頼しており、場合によっては領主や国と比べてもあなたを指示すると言っている。であれば、あなたの見せたくない手の内とやらを見ても、あなたに不利益になるような事はしないでしょう。どうです?」
ナイセーは問いかけてくる。そうだな、どうしても魔物の消滅を目で確認しないと安心できないわな。ゾリアなら・・・そうだな、遺失の魔法、とか、特別なスキル・・・とか、何とか説明を付けるか。納得しなきゃ・・・唐揚げで釣るか。
「おおっ! 任せておけ! ヤーベ、お前に命を預けるぞ!」
バンバンと俺の肩?あたりを叩くゾリア。
さて、お目付け役付きとなったが、この町を守るために出陣するとしましょうか!
ゾリアが大声を上げる。
まあ、一万の魔物を自分たちだけでどうにかする、と言っているようなものだがらな。驚かれるのも無理はないか。
「しかも、打って出るということは、この町の外壁を盾に防御しながら対応する、ということでなく、平原で一万の魔物に真っ向正面から当たるってことか!?」
信じられないという表情を浮かべて捲くし立てるゾリア。
「そう言う事だな」
「いくら何でも自殺行為では?」
代官のナイセーもさすがに無理があると思ったのか、疑問を呈する。
そりゃそうだよな・・・。
実際の所、一万ってどーなのよ?と自分でも思わないではない。
だが、どう考えてもこの町に一万の魔物が押し寄せて来たら、今までの平和な生活は崩壊するだろう。俺はそれを許容できない。
・・・所詮ノーチートのスライム野郎でしかない俺が、一万もの魔物をどうにか出来る・・・それは思い上がりでしかないのかもしれない。うまくいかないかもしれない・・・。でもまだわずかしか滞在していないが、この町の人々が好きだ。そして、カソの村の人々も好きだ。なら、そんな人たちが笑って生活して行けるよう、脅威は排除せねばなるまいよ。
「うまくいくかどうかはわからないが・・・比較的直進的に向かって来てくれるのであれば、策がないわけでもない。尤も、万一を考えると、当然この町の外壁で防御戦を行えるよう準備はしておいてもらった方がいいと思うけどな」
「その言い分だと、うまくいけば魔物はこの町に魔物が来ないように聞こえるが?」
ゾリアが俺を見つめる。
「そうだな、気持ち的には一匹たりとも魔物を通すつもりはない」
言い切る俺・・・カッコイイ?
隣を見ればイリーナが真剣な目でこちらを見ている。
・・・てっきり両手を胸の前で組んで目をハートにでもして感動しているかとばかり思ってたのに。まあ、ここでクッダク出されても困りますからねー。
「具体的にはどのような戦略で?」
ナイセーはこの町を取りまとめて来た代官だ。実務に長けた人間であるだけに、具体的な方法がわからないと納得できないだろう。だが・・・。
「俺様必殺の魔法?で、みたいな?」
「なんだそりゃ」
あきれ顔のゾリア。
「それでは安心してお任せすることが出来ませんよ・・・」
代官のナイセーも顔を顰める。
「もちろんこの町を救って頂けるのであれば、それに見合った報酬も用意せねばなりません。特に一万もの魔物の襲来という未曽有の危機を救ってくださるというのですから、その報酬は莫大なものになるでしょう。そしてこの町を救った英雄としての地位も。それらは、一万の魔物を退けたという結果が必要です」
一万の魔物を退けたという結果・・・。
この言葉の意味は深くて重い。
俺という存在を示す意味で、一万もの魔物を退けられるという存在がどういうものか。
筋肉馬鹿っぽいゾリアと違い、このナイセーは町を預かる代官だ。
この<迷宮氾濫>も領主やその上の王都へある程度正確な報告が必要だろう。その時、俺という存在はどのように映るのか・・・。
「それに関して、相談というか、提案がある」
「何だ?」
「何でしょう?」
同時に口を開くゾリアとナイセー。案外この二人仲がよかったりしてな。
「俺は自分の手の内というか、能力をある程度秘密にしておきたい。だから自分の手勢だけで打って出ると提案した理由もそこにある。だが、俺が迎撃に出た後「魔物を討伐した」と言って帰って来たとして、討伐した魔物が全く残っていなければ、現実として討伐が完了したかどうか判別は出来るか?」
「ま、魔物が全く残っていない・・・だと?」
「それは・・・、基本的には依頼完了、と判断できかねる事象ですね・・・」
そうだよね、証拠となる一万もの魔物が残っていないんだもの。
「だが、現実として多くの魔物がこの町へ押し寄せてきているわけだ。魔物の迎撃は必須・・・。だが、一万と正確に魔物の規模を把握しているのはここにいる俺たちだけだ。それならば、処理はともかく、報告はやりようがあるだろう?」
「・・・どういうことだ?」
ゾリアは意味が分からないと言った表情でナイセーに聞く。
「つまり、報告は一万という規模を隠し、もっと小規模な氾濫として対処出来た事にする、という事でしょうか。あなたという存在を隠したまま」
「ご名答」
俺は魔導士の杖で床をコツンと鳴らすように突いた。
「・・・ですが、それでは一万の魔物を退けた英雄としての結果を隠すのと同じことです。報酬も栄誉も無くなるということですよ?」
「おいおい、無報酬で働けってのかよ!?」
冒険者ギルドのギルドマスターであるゾリアが厳しい表情をナイセーに向ける。
こういうところは単純なゾリアに好感が持てるけどな。俺も一応だがギルドに登録している身だし、報酬無しで冒険者が働くという事は容認出来ない・・・という事だろう。
「むろん、さすがに無報酬というわけにはいかないと思いますが・・・。一万という魔物の規模を隠す以上、それに見合う報酬はもちろん出せません。そして、結果を確認するための魔物そのものが存在しない状況では、<迷宮氾濫>の被害を防いだ英雄としての評価も出来ない・・・ということになりますが」
「一体、魔物の存在を残さないって、どうするんだ? 極大呪文でもぶっ放して消し炭にでも変えちまうってか」
「ナイセーの言う通り、一万という規模の魔物を仕留めるという報酬は事実を隠す以上無理がある事は承知できる。元々英雄なんて立場に興味もないし、それも問題ない。後は<迷宮氾濫>の魔物たちを仕留めたことをどう確認してもらうかという事と、お前達二人が俺の事を誰にも話さないという言質を取ってから出陣したいという俺の希望を叶えてもらえるかどうかだな」
「なに?」
「・・・やはり、あなたは自分自身の存在を領主や国王に知られるとやっかいだ・・・とお考えなのですね」
ナイセーは溜息を吐く。
「なぜだ? 町を救う英雄だろうがよ! それこそ王都で国王様から褒美が賜われるかもしれない規模の災害だぞ!」
「だから、それが不要だと言っているんだよ、ゾリア」
「だから何故だ! 男なら誰しもが英雄に伸し上がる事を夢見るはずだ! これはチャンスなんだぞ、ヤーベ!」
力強く語るゾリア。きっと正道を駆け抜けて来たであろうゾリアの言葉は重く響く。
だが・・・。
「まあ、なんだ。お偉い方々からすれば、異質な力は不気味に映るものだよ。その力がどこへ向くのか・・・とか、益体も無い事を考えてしまいがちなものさ。ならば、最初からそんな力があると知られない方がリスクは少なくなるということだ」
「・・・・・・」
ゾリアは沈黙した。目の前に映るこの俺が、いかに怪しく見えるか。ローブをすっぽりかぶり、その姿を見せることはない。そして、一万の魔物を迎撃すると宣う。
「・・・俺がこの国の王ならば、お前を宮廷魔術師に迎えるんだがな」
ふっと苦笑するように言うゾリア。俺という存在のリスクを少し感じたような苦笑いだな。
「もし、辺境伯や国がお前に何か良からぬことをしようと企むなら、俺がお前の味方に付いてやるぜ。何といっても誰にも言えなくてもお前はこの町を救う英雄になるんだろうからな!」
ゾリアが今度は悪ガキが悪戯でも思いついたような悪そうな笑顔を浮かべる。
「そうならないために、彼は私とあなたにその秘密の一端を話してくれたんだと思いますがね」
今度はナイセーが苦笑しながら言う。どうやらナイセーには正しく俺の気持ちが伝わったようだ。後は彼が俺という存在をどう評価するか、だな。
「領主様と王国への報告は結果だけを伝えて、うまくあなたの事を隠しておきます。尤も、分かる人間がみれば、必ず調査が入るでしょうから、そうなれば冒険者ギルドの助力を得た、という事にしますので、ゾリアからもうまい説明協力をお願いしますよ」
「俺かよ!?」
「逆にあなた以外の誰がいるというのですか・・・」
ゾリアの驚きに呆れた声で返すナイセー。
「ところで、私も今気が付いたのですが・・・」
「どうした?」
俺とゾリアはナイセーに視線を移す。
「彼女はよろしいのですか?」
そうナイセーの指さす方向には・・・ローガに半分ほど埋まったままモフモフし続けていた副ギルドマスターのサリーナが。
「うおうっ!?」
「サリーナ、そんなところにいたのか! そういや話に夢中になってたけど、サリーナの気配がいつの間にか全くしなくなってたな」
「ふえっ?」
やっとローガから顔を上げるサリーナ。
「ローガ、ずっとモフモフされてたのか? 何なら声を掛けてくれればよかったのに」
『ボスが非常に重要な話をされていると思いましたので・・・』
若干サリーナに困ったような表情を浮かべながら気を使ってくれていたローガ。そりゃ悪かったね。
「で、我々の言質は取るとして、彼女はどうします?」
俺に意味ありげな笑みを浮かべて聞いてくるナイセー。
副ギルドマスターであるサリーナはギルドマスターであるゾリアの指示に従うんでないかい?
「サリーナよ、それで・・・」
話しかけたゾリアの言葉を遮るサリーナ。
「ヤーベ殿は素晴らしい人物。それだけです。私にはそれだけで十分です。モフモフは正義なのです! ローガ殿の主人ならば悪い人であるわけがないのです!」
えらく力説してくれるサリーナ嬢。
・・・まあなんだ、ありがたいですが。これもローガのおかげ・・・かな?
「わふっ(恐縮です!)」
笑顔で答えるローガ。出来る部下を持つと安心感が違うな。
「それでは、最後に・・・。我々としましては、町への脅威が完全に無くなった事をどうしても目で確認したいのです。つきましては、魔物を持ち帰れないという事であれば、ギルドマスターのゾリアを同行させてください。さっきの言葉にあったように、ゾリアはあなたを信頼しており、場合によっては領主や国と比べてもあなたを指示すると言っている。であれば、あなたの見せたくない手の内とやらを見ても、あなたに不利益になるような事はしないでしょう。どうです?」
ナイセーは問いかけてくる。そうだな、どうしても魔物の消滅を目で確認しないと安心できないわな。ゾリアなら・・・そうだな、遺失の魔法、とか、特別なスキル・・・とか、何とか説明を付けるか。納得しなきゃ・・・唐揚げで釣るか。
「おおっ! 任せておけ! ヤーベ、お前に命を預けるぞ!」
バンバンと俺の肩?あたりを叩くゾリア。
さて、お目付け役付きとなったが、この町を守るために出陣するとしましょうか!
1
お気に入りに追加
303
あなたにおすすめの小説
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル
14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった
とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり
奥さんも少女もいなくなっていた
若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました
いや~自炊をしていてよかったです
兄貴がイケメンすぎる件
みららぐ
恋愛
義理の兄貴とワケあって二人暮らしをしている主人公の世奈。
しかしその兄貴がイケメンすぎるせいで、何人彼氏が出来ても兄貴に会わせた直後にその都度彼氏にフラれてしまうという事態を繰り返していた。
しかしそんな時、クラス替えの際に世奈は一人の男子生徒、翔太に一目惚れをされてしまう。
「僕と付き合って!」
そしてこれを皮切りに、ずっと冷たかった幼なじみの健からも告白を受ける。
「俺とアイツ、どっちが好きなの?」
兄貴に会わせばまた離れるかもしれない、だけど人より堂々とした性格を持つ翔太か。
それとも、兄貴のことを唯一知っているけど、なかなか素直になれない健か。
世奈が恋人として選ぶのは……どっち?
とある辺境伯家の長男 ~剣と魔法の異世界に転生した努力したことがない男の奮闘記 「ちょっ、うちの家族が優秀すぎるんだが」~
海堂金太郎
ファンタジー
現代社会日本にとある男がいた。
その男は優秀ではあったものの向上心がなく、刺激を求めていた。
そんな時、人生最初にして最大の刺激が訪れる。
居眠り暴走トラックという名の刺激が……。
意識を取り戻した男は自分がとある辺境伯の長男アルテュールとして生を受けていることに気が付く。
俗に言う異世界転生である。
何不自由ない生活の中、アルテュールは思った。
「あれ?俺の家族優秀すぎじゃね……?」と……。
―――地球とは異なる世界の超大陸テラに存在する国の一つ、アルトアイゼン王国。
その最前線、ヴァンティエール辺境伯家に生まれたアルテュールは前世にしなかった努力をして異世界を逞しく生きてゆく――
前世ポイントッ! ~転生して楽しく異世界生活~
霜月雹花
ファンタジー
17歳の夏、俺は強盗を捕まえようとして死んだ――そして、俺は神様と名乗った爺さんと話をしていた。話を聞けばどうやら強盗を捕まえた事で未来を改変し、転生に必要な【善行ポイント】と言う物が人より多く貰えて異世界に転生出来るらしい。多く貰った【善行ポイント】で転生時の能力も選び放題、莫大なポイントを使いチート化した俺は異世界で生きていく。
なろうでも掲載しています。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます
ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。
何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。
生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える
そして気がつけば、広大な牧場を経営していた
※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。
7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。
5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます!
8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!
魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。
「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。
魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。
――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?!
――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの?
私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。
今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。
重複投稿ですが、改稿してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる