18 / 206
第3章 ヤーベ、旅立つ準備を始める!
第18話 ヤーベの仲間を勢揃いさせてみよう
しおりを挟む「スライムって一体何のことなのだ?」
「んん?」
俺はイリーナが何のことを言っているかすぐ理解できなかった。何の事って?
「あっ! もしかして魔物の君の名前なのかな? ス、スライム殿とお呼びしてもよいだろうか・・・」
「いや、名前じゃねーし。スライムはどっちかっていうと、種族?みたいな・・・。というかスライムってモンスター知らないのか?」
「やっぱり魔物の君はモンスターだったんだな。でもスライムって種族の魔物は聞いたことがないな」
何だって・・・スライム知らないのか? というか、この世界にはスライムはいないってことか・・・? いや、このポンコツイリーナがただ知らないだけって可能性の方が高いな。きっと。
「イリーナは冒険者になる時に魔物の情報をもらったか?」
「うむ、冒険者ギルドに登録した時に、近隣の森に出る魔物の情報をもらったぞ。討伐対象で報奨金が出る魔物もいるからな」
「そこにスライムはなかったんだな?」
「うむ、スライムという魔物の情報は無かったし、王都に住んでいた時に聞いた話や物語を読んだりして得た魔物知識の中にもスライムなどという魔物が出てきたことは一度もないぞ」
なんてこった・・・。スライムがいない、もしくはレアモンスターの可能性もあるってのか。
「もしかして、魔物の君はすごく特殊な魔物なのだろうか?」
ちょっと顔を赤らめて両手を頬に当て訪ねてくるイリーナ。俺に聞かれても知らねーし。
「う~ん、これは一度ちゃんと調べた方が良さそうだな・・・」
だが、当然俺はこのまま村や町に行って図書館などで調べるわけにもいかない。どうしたものか・・・。
「一度、村に戻ってそれとなく調べて来るとしよう。不埒者どもを引き渡さねばならないことだし」
イリーナの言葉に俺はちょっと感動した。俺のためにスライムの情報を調べてくれるなんて・・・。ポンコツ女騎士だなんて思ってごめんね!
ついでに採取依頼の出ていた薬草を渡してやる。
亜空間圧縮収納による鑑定能力が備わってから、あらゆる草を取り込んで鑑定しまくっていたので、薬草や毒消し草は山のようにあるのだ。
それにしても、もう俺がカソの村で交渉した方が早いな。
早速悪党二人を引きずってカソの村の近くまで連れて行く。
村の入り口にいた見張りの男に村長を呼んできてもらい、事情を説明する。
「それは大変でしたな・・・。荷車に縛り付けて村の青年二人がかりで運ばせましょう」
ニッコリ笑顔の村長さんが快く引き受けてくれる。
「なになに、精霊様のお願いです。なんてことはありませんよ・・・それで開村祭の事なのですが・・・」
やっぱり気持ちよく協力してくれたな。
・・・こっちもいろいろお願いされたけど。
まあ祭りを盛り上げるためだ、出来る限り協力しよう。
よく見るとイリーナがポカーンとしている。
「ま、魔物の君は私には誰にも自分の事を言うなと言っておきながら・・・、このカソの村の住人とはとても仲良しにしているではないか!」
なんかちょっとプリプリして怒っている感じのイリーナさん。なんで?
後、大声で俺を魔物と呼ばないで欲しい。折角精霊を詐称しているというのに。
「このカソの村では、村の井戸が枯渇して困っているところだったんだけど、俺が掘って井戸を改善できたんだよ。それ以来『精霊様』って呼ばれるようになっちゃってね・・・。一応村長さんから村人たちに俺の存在は他の村の人たちには言わないように口留めしてもらってるけどね」
ポンコツイリーナでもわかるように懇切丁寧に説明してやる。
「そ、そうなのか・・・精霊様として・・・。それなら魔物の君として知っているのは私だけということ・・・? なら約束通り、ふ、ふたりだけの秘密ってことに・・・」
なんだか顔を赤らめてクネクネしているイリーナ。なんだ?風邪か?俺にうつすなよ。
そして村の青年たちの協力を受けてカソの村からソレナリーニの町へ旅立って行った。
スライムの事を調べて来るとか言っていたが・・・、まあ、依頼達成料や二人の盗賊?を引き渡した報奨金も手に入るかもしれない。わざわざこんな何もない俺のところへまた戻ってくる必要もないような気もする。
・・・ちょっと寂しい。あんなポンコツでも賑やかしとしては立派な存在感を・・・いや、ウザいだけか。いやいや、時代はウザカワ系ともいうし・・・。アホなことを考えながら俺は泉の畔へのんびり帰ることにした。
しばらくして、泉の畔で花に水をやっているとイリーナが戻ってきた。やたら早いな。ソレナリーニの町って歩いて片道二日のはずじゃあ・・・?
向こうに一日居たとしたって、計算おかしい気がする。もう一、二日かかりそうなものだが。
走って来たのか? 汗をかいてハァハァ言ってるな。・・・うん、変な気持ちにはならないよ。ダッテボクスライムダカラ。
・・・ん?大きなリュックを背負ってるな。明らかにリュックの上部にはテントらしきアイテムが鎮座している。
「・・・イリーナさん?」
「やあ、スライム殿! 無事に悪党二人は引き渡せたぞ。それに薬草採取も無事達成となって報奨金とギルドポイントも受け取ることが出来た。ありがとう、これも全てスライム殿のおかげだ」
満面の笑みを浮かべて喜びを表すイリーナ。だが、背中の大荷物は何だろう?
「で、イリーナさんは何でそんなに大きな荷物を持ってるんだ?」
「スライム殿。スライム殿は私の命の恩人だ。さん付けなんてやめて、どうかイリーナと呼び捨てで呼んではもらえまいか」
前も言われたね、それ。そういえば俺もイリーナって呼んでたね。
呼んだらメンドクサイ反応するんだろうけどね。
「・・・で、イリーナは何でそんなに大きな荷物を持ってるんだ?」
「イ、イリーナと呼び捨てに・・・、きっとこの後触手で絡め捕られて「イリーナ、お前は俺の女だ!」って抑え込まれて・・・くっ、抱くがいい!」
「イリーナと呼び捨てにしろって言ったのそっちだからね! ていうか、大体荷物の話はどこへ行った!?」
「もちろん、スライム殿のそばで暮らすために決まっているではないか。私はまだスライム殿に何の恩返しも出来ていないのだからな」
そう言って嬉しそうに泉の畔にテントを立て始めるイリーナ。君、イイトコのお嬢さんだよね?
「もしもーし、イリーナさん? 暮らすの? ここで? どうやって?」
「スライム殿・・・。スライム殿は私の命の恩人だ。さん付けなんてやめて、どうかイリーナと呼び捨てで呼んではもらえまいか」
「それ、さっきと同じパターンだからね? 呼んで妄想して「クッダク」パターンだからね? しつこい天丼ノーセンキューだからね?」
「スライム殿。ちょっと何を言っているのかわからないのだが」
「狙って言ってるとしたらサンド○ッチマンレベルだからね?」
可愛く首を傾げて俺を見つめるイリーナにかなり激おこプンプン丸レベルでプリプリしてみる。よくわかってないイリーナ、無駄にくっそカワイイなぁ、おい!
『ボス! 調査からただいま戻りました!』
『ついでにエモノ取ってきましたぜ~』
『そろそろあの村で祭りが始まるでがんしょ? いいエモノ捕まえやしたぜ!』
ん? おお、やっとローガたちが帰って来たか。
何か一頭聞いたことない喋り方のヤツがいるな? だいぶキャラ濃いけどそんな奴いたかな?
「なななっ!? 狼たちがたくさん? くっ、魔物の君をやらせはしないぞ!」
よたよたと腰の剣を抜きかまえるイリーナ。絶対弱いよな、イリーナって。
『ボス、なんです?このへっぽこそうな女は』
いや、ローガよ、そう思ってもストレートに言葉に出してはいけないときもあるのだよ。
君はもう少しコミュニケーション能力を学びたまえ。ちなみに俺もその意見には全面的に賛同するがな。
『あ、わかったでがんす。人間の雌のようですし、アニキの女じゃないですかい?』
だから、キャラ濃いんだよ。てか、誰だよお前?
『おおっ!ボスが嫁を娶ったということか!』
部下の言葉にローガが勝手に納得する。勝手に人の嫁にするんじゃないよ。
てか、ローガよ。だから、お前直属の部下にそんなキャラの濃いヤツいたか?
「安心してくれ、イリーナ。この狼牙族は俺の部下なんだ」
とりあえず先にイリーナを安心させるか。
「ま、魔物の君はこんなにもたくさんの部下がいるのか?」
周りの狼牙族を見渡してびっくりするイリーナ。
「まだ帰って来てないけど、二百羽のヒヨコも部下にいるぞ」
「ひ、ヒヨコ?」
『ボス、ヒヨコも部下にしたのですか?』
ああ、ローガには話してなかったな。
「ローガが部下になる前にヒヨコを助けたら部下になったんだよ」
俺の説明にガーンとなって落ち込むローガ。どうした?
『わ、我がボスの一番最初の部下とばかり・・・』
あ、順序気にしてるのか。となると・・・
①ヒヨコ隊長(単独一羽)
②ローガたち狼牙族(六十頭)
③ヒヨコ軍団(二百羽)
という順番だな。
『やはり、我には先輩となるヒヨコが一羽いるわけですな。しかも隊長の役職を持っているのですな・・・』
若干ジトッとした目で見てくるローガ。そう言われましてもね・・・。
そこへヒヨコ隊長以下二百羽のヒヨコ軍団が帰ってくる。
「「「ピヨピヨピヨ~」」」
バサバサバサッと約二百匹のヒヨコが戻ってくる。
『ボス!ただいま戻りました!』
俺の前で膝をつき傅くヒヨコ隊長。いつ見ても堅いね、コイツは。
でも俺は忘れない。コヤツはハーレム王なのだ。
『むっ・・・』
ヒヨコ隊長を初めて見たローガがこちらへ寄ってくる。
『貴殿がヒヨコ隊長であるか。我は狼牙族リーダーのローガ。ローガの名はボスより頂いたものだ。貴殿の方が先にボスの部下になったと聞き及んでおる。これからよろしく頼む』
ローガよ。お前も律儀で硬いね。
『おお、貴殿もボスの部下になられたのであるか! それにしても狼牙族とは心強い限りでありますな! これからもぜひお互いボスの力になりましょうぞ! よろしくお頼み申します、ローガ殿!』
と言って両翼でローガの前足を取るヒヨコ隊長。
というかヒヨコ隊長も部下のヒヨコたちも狼牙族がたくさんいたのに、全然気後れせず戻って来たな。もしかしてヒヨコって強い?
「こ・・・、こんなに魔物の君にはたくさんの部下が・・・、す、すごい! やはり魔物の君は優良物件であるな!」
独りで両こぶしを握り、ふんすっ!と気合を入れるイリーナ嬢。
いや、アナタ貴族の娘なのに揉め事のために王都から逃げて来たポンコツ不良物件だからね!
俺が優良物件だったとしても、アンタ事故物件だからね! まず自分見て!
1
お気に入りに追加
303
あなたにおすすめの小説
ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした
月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。
それから程なくして――――
お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。
「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」
にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。
「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ!
うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
そんなの知らん。
設定はふわっと。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル
14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった
とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり
奥さんも少女もいなくなっていた
若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました
いや~自炊をしていてよかったです
石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!
udonlevel2
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。
皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。
この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。
召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。
確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!?
「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」
気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。
★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします!
★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
小さな希望を紡ぐ姫と鋼鉄の王虎を駆る勇者 ~ティーガー戦車異世界戦記~【挿絵あり】
ニセ梶原康弘
ファンタジー
――この力を、弱き者を救う為に捧げたい
異世界リアルリバーへ現れたチート勇者達の暴虐によって魔族は迫害され、今まさに滅びようとしていた。そんな彼等を救ったのは、ひとりの少年と重戦車「キングタイガー」だった。
少年を仲間に迎え入れた魔物達は王姫アリスティアに導かれ新天地を求め西へと旅立つが、魔族を追うチート勇者達は執拗に一行をつけ狙う。そして、それらを冷ややかに見つめる謎の魔少女……
幾度も迫る危機、流される血と涙。明かされる異世界の真実……果たして最後の楽園は見つかるのか?異世界チートの暴虐を蹴散らす怒りの砲声と共に少年は叫ぶ、「戦車前へ!」
これは異世界で悪を捨てた魔族が求めた希望と救済と、そして小さな愛の物語
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる