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偵察団の帰還
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「お前もだリベンゲ、優先順位を見誤るとは何事だ!」
「も、申し訳ございません。私も侯爵が来るのを待ってから行動するものかと」
市長も居るわね、もしかして私達のことかしら? 確かにそこそこスピード勝負で出かけたけれども。ちょっとここからじゃこれ以上はわからないわね。
「たわけが! 部下を上手く使えぬようならば降格して兵卒にしてやろうか? もし聖女が失われでもしたらゲベートの未来は十年単位で暗いままになる、解っているのか!」
うわぁ、満座で説教はまずいわよ。近づくにつれて、罵声を浴びせているのがはっきりとしてきたわ。気まずい雰囲気の中で近づいていくけど、不審がられても邪魔はされなかったわ。
「ごめんなさい、ちょっと通してください」
半ばリスィに抱きかかえられるようにして、大激怒しているマケンガ侯爵の側に歩いていく。ちょうど後ろからだから気づいてないみたいね。兵士の皆さんはこっちをちらちら見ているけど。
「野面を晒しておらんでさっさと探しに行かんか愚か者が!」
将軍と市長が並んで低頭しているのって、あの態度を受けた私でもドン引きよ。これは流石に不味いわ。
「あの、ただ今戻りました」
声に気づいてマケンガ侯爵が振り返るわ、眉を寄せて歯を食いしばってる鬼の形相ね。こっちは立っているだけでも精一杯、黒服と冒険者、そして私の姿を見て驚いてる。怒りの表情がみるみるかわって青ざめていく。
「ど、どこか怪我をしているのか!? 医者を呼べ、司教もだ!」
側近に怒鳴るように命令すると、飛び跳ねるようにして走って行ったわ。この様子を見ればズタボロって感じするわよね。
「魔力切れを起こしているだけで怪我は無いです。聖域構築の阻害を取り除いてきました」
「なんと、だがクァトロまでそんな状態だと……一体何が出たのだ」
怒りよりも驚き、そしてかなり危険な事態があったと多少なりとも冷静さを取り戻す。やるべきことを速やかに思い出せる、指揮者として上出来じゃない。ハマダ大尉が顔を蒼くしたまま一歩踏み出した。
「報告致します。レディ・アルヴィンの指揮で北西山地の調査にクァトロ並びに徴募者四十二名で向かい、現地で上級悪魔デュラハンに遭遇、その後古代竜とも遭遇しました」
「デュラハンにドラゴンだと!」
流石にこれにはその場の皆もざわついたわ、逆の立場なら私も声を出しちゃうわね。理性を最大限きかせて報告を待つ、青ざめていた顔が難しそうになっていく。
「レディの判断で竜を退けることに成功。同時に不可侵の約束を取り付けました」
「なん……だと」
みんなの視線が集まってるわ、今凄い不細工な顔してるから見ないでよね。寝たい、休みたい、気絶したい。こちらを凝視されても今は喋りたくないの、というか無理。
「ごめんなさい、詳細は休んでからにさせて欲しいわ。それと、市長と将軍をそんなに怒らないでください、私達は無事でしたから」
力ない微笑みをしていよいよリスィに持たれかかってしまう。熱出て来たかも、ボーっとする。みんなよく歩いてこれたわね、こっちは馬車だったのにもう限界よ。
「むむむ! ……隊を解散だ。宿を全て借り上げて皆を休ませよ、足りなければ兵舎を空けろ。一先ず不問とするゆえ通常業務に戻れ」
そう命じるとこちらに歩いてきて、フラフラの私をひょいと抱き上げたわ。ああ歩かなくていいのね。
「神殿の方が静かで良かろう。リスィ、お前もついて来い。ハマダ大尉、三日の休暇を与える」
「了解です」
お姫様だっこをしたマケンガ侯爵は凄く力強い気がした。何だか空を飛んでるみたいな変なふわふわした感覚があって、いろんな喧騒が聞こえてくるけど何を言ってるのか理解出来ないの。いつからか意識が半分なくなって、周りがどうなっているのか解らなくなったわ。
それからどこの位眠り続けたのか全然わからないまま、目を覚ますまで神殿は出入り禁止。静寂が全てを支配する最高の場所だったわ。リスィがずっと傍に居てくれたと聞くのは、三日後の日中ね。
◇
もう大丈夫、すっきり爽快不自由はないわ。リスィにお礼を言って、神殿を出て市庁舎に向かったわ。でもマケンガ侯爵は市庁舎に居るのかしら? 行ってみて居ないなら場所を聞けばいいわね。中に入って受付? みたいなところで尋ねたけど、わからないって言われちゃった。市長なら部屋に居るって。
「市長のところに行ってみましょう。侯爵の居場所をしってるわきっと」
そういう願望だけで実際にどうかは不明、それでもここまで来たんだから寄る位はしておいたほうがいいわよね。何だか私の行動で迷惑をかけたみたいだし。市庁舎の最上階、そこに市長の執務室があったわ。前室に秘書とかそんな感じの人が居たから面会希望を伝えて貰ったらすぐに奥に通された。
「こんにちは。急にすみません」
「フロイラインアルヴィン、お気づきになられましたか」
あれー態度が変わってるわね。相当こっぴどくされてたからよねこれ、どうしましょう。我知らず、気づかないふりがいいのよね。
「随分と寝ていたみたいですけれど、もう平気です。侯爵を探しているのですけれど、どこに居るかご存知ですか?」
「ええ、屋敷に居られるはずです。向かうのであれば案内をお付けします」
「あら、助かります」
うーん、深く関わらないのがベスト。出来ればこのまま距離をおいて、互いの関係をこじれさせないほうがいい気がするわ。速やかに退室して一階で待っていると、案内役の事務官が来て先導してくれたわ。南東部にある屋敷は、そこまで大きいものでもなく、豪奢でもないところ。
侯爵の屋敷って言う割には、なんていうか普通? 別にそれでいいんだけれど、質素って感じが前に出ているわ。玄関前に執事さんが居て面会を求めたら速やかに通されたわね。二階の階段上にマケンガ侯爵の姿があるわ。
「こんにちは、お邪魔しています」
「うむ、こちらへ来たまえ」
すっかりいつもの侯爵ね、ってほど付き合いもないけど。階段をせっせと登って上に着くと、それを確かめて侯爵が奥の部屋にと歩んでいく。それに付いて行くけど、外見と比例する控えめな屋敷ね内側も。部屋に入るとまあ意外、先客が居たわ。
将軍と、移動をしてきた時の軍のリーダーね。何かの会議をしていたのかしら。
「えと、時間を改めましょうか?」
「も、申し訳ございません。私も侯爵が来るのを待ってから行動するものかと」
市長も居るわね、もしかして私達のことかしら? 確かにそこそこスピード勝負で出かけたけれども。ちょっとここからじゃこれ以上はわからないわね。
「たわけが! 部下を上手く使えぬようならば降格して兵卒にしてやろうか? もし聖女が失われでもしたらゲベートの未来は十年単位で暗いままになる、解っているのか!」
うわぁ、満座で説教はまずいわよ。近づくにつれて、罵声を浴びせているのがはっきりとしてきたわ。気まずい雰囲気の中で近づいていくけど、不審がられても邪魔はされなかったわ。
「ごめんなさい、ちょっと通してください」
半ばリスィに抱きかかえられるようにして、大激怒しているマケンガ侯爵の側に歩いていく。ちょうど後ろからだから気づいてないみたいね。兵士の皆さんはこっちをちらちら見ているけど。
「野面を晒しておらんでさっさと探しに行かんか愚か者が!」
将軍と市長が並んで低頭しているのって、あの態度を受けた私でもドン引きよ。これは流石に不味いわ。
「あの、ただ今戻りました」
声に気づいてマケンガ侯爵が振り返るわ、眉を寄せて歯を食いしばってる鬼の形相ね。こっちは立っているだけでも精一杯、黒服と冒険者、そして私の姿を見て驚いてる。怒りの表情がみるみるかわって青ざめていく。
「ど、どこか怪我をしているのか!? 医者を呼べ、司教もだ!」
側近に怒鳴るように命令すると、飛び跳ねるようにして走って行ったわ。この様子を見ればズタボロって感じするわよね。
「魔力切れを起こしているだけで怪我は無いです。聖域構築の阻害を取り除いてきました」
「なんと、だがクァトロまでそんな状態だと……一体何が出たのだ」
怒りよりも驚き、そしてかなり危険な事態があったと多少なりとも冷静さを取り戻す。やるべきことを速やかに思い出せる、指揮者として上出来じゃない。ハマダ大尉が顔を蒼くしたまま一歩踏み出した。
「報告致します。レディ・アルヴィンの指揮で北西山地の調査にクァトロ並びに徴募者四十二名で向かい、現地で上級悪魔デュラハンに遭遇、その後古代竜とも遭遇しました」
「デュラハンにドラゴンだと!」
流石にこれにはその場の皆もざわついたわ、逆の立場なら私も声を出しちゃうわね。理性を最大限きかせて報告を待つ、青ざめていた顔が難しそうになっていく。
「レディの判断で竜を退けることに成功。同時に不可侵の約束を取り付けました」
「なん……だと」
みんなの視線が集まってるわ、今凄い不細工な顔してるから見ないでよね。寝たい、休みたい、気絶したい。こちらを凝視されても今は喋りたくないの、というか無理。
「ごめんなさい、詳細は休んでからにさせて欲しいわ。それと、市長と将軍をそんなに怒らないでください、私達は無事でしたから」
力ない微笑みをしていよいよリスィに持たれかかってしまう。熱出て来たかも、ボーっとする。みんなよく歩いてこれたわね、こっちは馬車だったのにもう限界よ。
「むむむ! ……隊を解散だ。宿を全て借り上げて皆を休ませよ、足りなければ兵舎を空けろ。一先ず不問とするゆえ通常業務に戻れ」
そう命じるとこちらに歩いてきて、フラフラの私をひょいと抱き上げたわ。ああ歩かなくていいのね。
「神殿の方が静かで良かろう。リスィ、お前もついて来い。ハマダ大尉、三日の休暇を与える」
「了解です」
お姫様だっこをしたマケンガ侯爵は凄く力強い気がした。何だか空を飛んでるみたいな変なふわふわした感覚があって、いろんな喧騒が聞こえてくるけど何を言ってるのか理解出来ないの。いつからか意識が半分なくなって、周りがどうなっているのか解らなくなったわ。
それからどこの位眠り続けたのか全然わからないまま、目を覚ますまで神殿は出入り禁止。静寂が全てを支配する最高の場所だったわ。リスィがずっと傍に居てくれたと聞くのは、三日後の日中ね。
◇
もう大丈夫、すっきり爽快不自由はないわ。リスィにお礼を言って、神殿を出て市庁舎に向かったわ。でもマケンガ侯爵は市庁舎に居るのかしら? 行ってみて居ないなら場所を聞けばいいわね。中に入って受付? みたいなところで尋ねたけど、わからないって言われちゃった。市長なら部屋に居るって。
「市長のところに行ってみましょう。侯爵の居場所をしってるわきっと」
そういう願望だけで実際にどうかは不明、それでもここまで来たんだから寄る位はしておいたほうがいいわよね。何だか私の行動で迷惑をかけたみたいだし。市庁舎の最上階、そこに市長の執務室があったわ。前室に秘書とかそんな感じの人が居たから面会希望を伝えて貰ったらすぐに奥に通された。
「こんにちは。急にすみません」
「フロイラインアルヴィン、お気づきになられましたか」
あれー態度が変わってるわね。相当こっぴどくされてたからよねこれ、どうしましょう。我知らず、気づかないふりがいいのよね。
「随分と寝ていたみたいですけれど、もう平気です。侯爵を探しているのですけれど、どこに居るかご存知ですか?」
「ええ、屋敷に居られるはずです。向かうのであれば案内をお付けします」
「あら、助かります」
うーん、深く関わらないのがベスト。出来ればこのまま距離をおいて、互いの関係をこじれさせないほうがいい気がするわ。速やかに退室して一階で待っていると、案内役の事務官が来て先導してくれたわ。南東部にある屋敷は、そこまで大きいものでもなく、豪奢でもないところ。
侯爵の屋敷って言う割には、なんていうか普通? 別にそれでいいんだけれど、質素って感じが前に出ているわ。玄関前に執事さんが居て面会を求めたら速やかに通されたわね。二階の階段上にマケンガ侯爵の姿があるわ。
「こんにちは、お邪魔しています」
「うむ、こちらへ来たまえ」
すっかりいつもの侯爵ね、ってほど付き合いもないけど。階段をせっせと登って上に着くと、それを確かめて侯爵が奥の部屋にと歩んでいく。それに付いて行くけど、外見と比例する控えめな屋敷ね内側も。部屋に入るとまあ意外、先客が居たわ。
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「えと、時間を改めましょうか?」
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