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冒険者達の宿
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◇
予想通りにゼークト将軍ってのとは相いれずで協力の兆しは一切なしで軍舎を出たわ。立ち去る際も悪意を受けてって感じ、まったくなんなのかしらね。そういう態度が解っただけでも収穫だって思うことにしましょうか。
「次は宿屋に行きましょう」
「冒険者を雇用するおつもりで?」
こちらの意図を直ぐに感じてくれて嬉しい限りね。というか選択肢が少ないのよ、別に自分でやることもないんだけれど。性格なのよね、やるなら出来るだけ上手に頑張りたいのは。
「ええ。市長も将軍も気乗りがしないみたいだけど、私はやらないとここに居る意味がないの」
専属部隊をそれに使うのはちょっと違う気がするのよ、もちろん手助けはしてもらうことになっちゃうけど。ここの宿屋は探索者とか冒険者って人たちの拠点になっているわ、未開の地にはきっとお宝があるってね。だから自力で出る人も居ればそれを支援する人もいるの。
間接的に宿屋の主人が詳しいってことにもなったし、何よりここなら人手が集まるわ。先立つものは……必要よね。こういうのもツケで成り立つものなのかしら? ダメならその時に考えましょう。
三人で宿屋に入ると注目を浴びたわ。特に黒服の二人は睨まれてる、どうして? 奥のカウンターに立ってる中年の男の人と、受付嬢らしき人に話しかけるわ。
「あのー依頼を出したいんですけどここで良いですか?」
ちょっと背伸びする感じでカウンターの向こうの二人に話しかける。中年はこっちをみてから、ハマダ大尉らを見てもう一度こちらに視線を戻して「お嬢ちゃんがか?」まあ想定通りのことを言ったわ。明らかにオマケですものね私って。
「そうよ。支払いはマケンガ侯爵が後払いでも良いですか?」
またその人は黒服の二人を見てから「構わんよ。そいつらが居るんだ、嘘じゃねぇのはわかるからな」侯爵の部下ってのを知ってるのね。ここは侯爵の領地っていうんだから納得よ。制服ってこういう利点もあるのね。
「北西にある山を調査するって依頼なんですけど、ここの動員能力はどのくらいかしら?」
「あの山を調べるだって? 最大で五十人くらいは登録してるが、稼働中や休暇中も居るからな。それらも報酬次第だろうが」
他の案件を遂行中はどうにもならないわね、でも休暇中は金額が高ければ参加しそうな気がするわ。こういう宿屋で五十人も登録してるのが多いのか少ないのか全然だけど、半分も参加してくれたら助かるわ。
「適切な額で依頼を出したいです。どうしたらいいでしょう」
「ああじゃあ、向かう日時や規模はどうする。必要な技能や、同道の有無なんかも詳細を」
「ええと、そうですね……ハマダ大尉、どうしたら?」
こういう実務ってピンと来ないわ。でも行かないと何も出来ない日々を過ごすことになるの。困った時には素直に訊ねましょう、これで失敗したら恥ずかしいだけでは済まないわ。
「予算や期限の区切りはありますか?」
「予算は特には、でも早い方が良いわよね。人が集まるのと相反するかもしれませんけど」
時間を掛ければスケジュール調整が出来て参加者が増えるわよね。でもあまり出発が遅れたらそもそも意味がないわ。出来るだけ集めるで出来ないが多ければそれまた困るけど、尺度が無いのよ。
「了解です。店主、出発は三日後の朝、人数は可能な限り何人でも構わん、我等二十名も同道し、調査技能だけでなく戦闘技能のみでも可とする。日程は日帰り、状況によっては一晩を山で過ごす可能性もある。指揮権はレディ・アルヴィンにある。この条件で募集を、金額はいかほどだろうか」
「可能な限りって、五十人でもですかい」
「そうだ」
即答すると店主も一瞬だけど思案して、それほど大切な調査なんだろうなって受け止めてくれたみたい。さっきの軍隊とは大違いね。
「あんたらが居るんだ、支払いはまず間違いないな。するとだ、一人頭純金貨一枚、集まった人数分だな。それと一泊するなら更に純金貨一枚追加。大怪我人が出れば見舞金で純金貨三枚、死亡者が出れば純金貨十枚。もし指揮に従わない場合は違反金で倍額差し戻す、これでどうだ」
無事に終われば純金貨五十枚、死者が出たら数倍の支払いになるわけね。どうなのかしら、これって多いの? それとも少ないの?
「レディ、適切な額と考えます」
「そう、ハマダ大尉がそう判断したならそれで決定しましょう」
書類を用意して店主が「では契約書に署名を」求めて来たわ。受付嬢が踏み台を用意してくれたのでそれに乗っかって、左手でサインする。店主も受付嬢も指輪の紋章を見逃さなかったわね、注意力は上々よ。これで反故には出来ないでしょう、お互いに。
「これで良いかしら」
「ええ、結構ですお嬢様」確かめてから店内のホールで飲み食いしてる冒険者に向かい声をあげる「てめぇら大仕事だ、気合い入れて聞けよ! 三日後の朝に日帰りで隊を組む、このアルヴィンお嬢様に従い動く奴らを集めろ!」
「ピクニックにでも行くんですかい」
からかいでそんなことを言うやつが居たわ、店内は「ははははは!」笑い声が響く。それも嘲笑的な方ね、解らなくもないわよ。
「ああそうだ。危険報酬別で純金貨一枚の報酬だぞ、これで文句がある奴は冒険者なぞやめちまえ!」
「マジか!」
予想通りにゼークト将軍ってのとは相いれずで協力の兆しは一切なしで軍舎を出たわ。立ち去る際も悪意を受けてって感じ、まったくなんなのかしらね。そういう態度が解っただけでも収穫だって思うことにしましょうか。
「次は宿屋に行きましょう」
「冒険者を雇用するおつもりで?」
こちらの意図を直ぐに感じてくれて嬉しい限りね。というか選択肢が少ないのよ、別に自分でやることもないんだけれど。性格なのよね、やるなら出来るだけ上手に頑張りたいのは。
「ええ。市長も将軍も気乗りがしないみたいだけど、私はやらないとここに居る意味がないの」
専属部隊をそれに使うのはちょっと違う気がするのよ、もちろん手助けはしてもらうことになっちゃうけど。ここの宿屋は探索者とか冒険者って人たちの拠点になっているわ、未開の地にはきっとお宝があるってね。だから自力で出る人も居ればそれを支援する人もいるの。
間接的に宿屋の主人が詳しいってことにもなったし、何よりここなら人手が集まるわ。先立つものは……必要よね。こういうのもツケで成り立つものなのかしら? ダメならその時に考えましょう。
三人で宿屋に入ると注目を浴びたわ。特に黒服の二人は睨まれてる、どうして? 奥のカウンターに立ってる中年の男の人と、受付嬢らしき人に話しかけるわ。
「あのー依頼を出したいんですけどここで良いですか?」
ちょっと背伸びする感じでカウンターの向こうの二人に話しかける。中年はこっちをみてから、ハマダ大尉らを見てもう一度こちらに視線を戻して「お嬢ちゃんがか?」まあ想定通りのことを言ったわ。明らかにオマケですものね私って。
「そうよ。支払いはマケンガ侯爵が後払いでも良いですか?」
またその人は黒服の二人を見てから「構わんよ。そいつらが居るんだ、嘘じゃねぇのはわかるからな」侯爵の部下ってのを知ってるのね。ここは侯爵の領地っていうんだから納得よ。制服ってこういう利点もあるのね。
「北西にある山を調査するって依頼なんですけど、ここの動員能力はどのくらいかしら?」
「あの山を調べるだって? 最大で五十人くらいは登録してるが、稼働中や休暇中も居るからな。それらも報酬次第だろうが」
他の案件を遂行中はどうにもならないわね、でも休暇中は金額が高ければ参加しそうな気がするわ。こういう宿屋で五十人も登録してるのが多いのか少ないのか全然だけど、半分も参加してくれたら助かるわ。
「適切な額で依頼を出したいです。どうしたらいいでしょう」
「ああじゃあ、向かう日時や規模はどうする。必要な技能や、同道の有無なんかも詳細を」
「ええと、そうですね……ハマダ大尉、どうしたら?」
こういう実務ってピンと来ないわ。でも行かないと何も出来ない日々を過ごすことになるの。困った時には素直に訊ねましょう、これで失敗したら恥ずかしいだけでは済まないわ。
「予算や期限の区切りはありますか?」
「予算は特には、でも早い方が良いわよね。人が集まるのと相反するかもしれませんけど」
時間を掛ければスケジュール調整が出来て参加者が増えるわよね。でもあまり出発が遅れたらそもそも意味がないわ。出来るだけ集めるで出来ないが多ければそれまた困るけど、尺度が無いのよ。
「了解です。店主、出発は三日後の朝、人数は可能な限り何人でも構わん、我等二十名も同道し、調査技能だけでなく戦闘技能のみでも可とする。日程は日帰り、状況によっては一晩を山で過ごす可能性もある。指揮権はレディ・アルヴィンにある。この条件で募集を、金額はいかほどだろうか」
「可能な限りって、五十人でもですかい」
「そうだ」
即答すると店主も一瞬だけど思案して、それほど大切な調査なんだろうなって受け止めてくれたみたい。さっきの軍隊とは大違いね。
「あんたらが居るんだ、支払いはまず間違いないな。するとだ、一人頭純金貨一枚、集まった人数分だな。それと一泊するなら更に純金貨一枚追加。大怪我人が出れば見舞金で純金貨三枚、死亡者が出れば純金貨十枚。もし指揮に従わない場合は違反金で倍額差し戻す、これでどうだ」
無事に終われば純金貨五十枚、死者が出たら数倍の支払いになるわけね。どうなのかしら、これって多いの? それとも少ないの?
「レディ、適切な額と考えます」
「そう、ハマダ大尉がそう判断したならそれで決定しましょう」
書類を用意して店主が「では契約書に署名を」求めて来たわ。受付嬢が踏み台を用意してくれたのでそれに乗っかって、左手でサインする。店主も受付嬢も指輪の紋章を見逃さなかったわね、注意力は上々よ。これで反故には出来ないでしょう、お互いに。
「これで良いかしら」
「ええ、結構ですお嬢様」確かめてから店内のホールで飲み食いしてる冒険者に向かい声をあげる「てめぇら大仕事だ、気合い入れて聞けよ! 三日後の朝に日帰りで隊を組む、このアルヴィンお嬢様に従い動く奴らを集めろ!」
「ピクニックにでも行くんですかい」
からかいでそんなことを言うやつが居たわ、店内は「ははははは!」笑い声が響く。それも嘲笑的な方ね、解らなくもないわよ。
「ああそうだ。危険報酬別で純金貨一枚の報酬だぞ、これで文句がある奴は冒険者なぞやめちまえ!」
「マジか!」
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