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やり残したこと
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目が覚めると、知らない部屋にいた。ここはどこだろうと見回すと病院である事に気付いた。起き上がろうとすると、体の至る所に激痛が走る。よく見てみると痛んだ場所に包帯が巻かれていた。何故ここにいるのか。何故怪我をしているのか。状況が読み込めない。思い出そうとすると頭が痛い。もう少しで思い出せそうなんだけど…。そんなことを考えていると、病室に誰か入ってきた。
「やっと目を覚ましたのね…」
『やっと』という話し方からよるに、僕はかなり長い間眠っていたらしい。まだ意識が朦朧とする中で、僕は誰なのか尋ねた。
「すみません…まだ意識がはっきりしてなくて…どちら様でしょうか…?」
しばらくの間沈黙があり、口を開いた。
「ここの看護婦です。かなり長い間眠っておられました。怪我が治って、リハビリを受けて、歩けるようになれば退院できますよ。」
「そうですか…わかりました、頑張りますね」
「はい…頑張ってください」
その声は涙ぐんでいた。体が起こせないので看護婦さんの姿を見ることが出来なかったが、優しそうな人だったので安心した。
それから看護婦さんはカルテだろうか。ボードに何かを書き記した後、部屋を去っていった。
恐らくずっと僕の看護をしてくれていたのだろう。
退院する前にお礼を言おうと思った。
扉の向こうから話し声が聞こえる。が、また意識が遠のいていく。襲いかかる睡魔に抗えなかった僕はまた眠りについた。
「・・・また・・・ですか・・・これ以上は・・・」
それからしばらく経ち、怪我が治るとリハビリを受けるようになった。他の人たちと比べると結構順調に回復していった。
そして退院が決まった。一週間後だ。退院するまでが暇だった。することが無い。なので病室で本を読んでいた。病室には僕のものと思われる通学鞄が置いてあった。登校中、あるいは下校中に病院に搬送されたようだ。中にはたくさんの小説が入っていた。暇だったので退院するまではその小説を読んでいた。長い間眠っていたせいか、内容を初めて見たような感覚だ。
知っているよりかは新鮮味があって楽しく読めるのでいいんだけどな。
また1冊、また1冊と読み終えていく。次の小説を読もうとして鞄の中を見ると、最後の1冊が入っていた。5、6冊ほど入っていたのにもう最後の1冊だ。どれだけ自分が暇なのか痛感したところで、最後の1冊を取り出そうとすると、鞄の底に封筒があることに気付いた。中には文字が書かれた紙が。手紙だろうか?それを取り出し、読んでみるとそこにはこう書いてあった。
「これを読んでいるということは小説を読み終えたんだろう?君はいつも小説を読んでいるからね。そこに入れて置いて正解だった。さて、本題に入ろう。この手紙を書いたのは誰か分かるかな?分からないのであれば、もう君は…手遅れだな。私は今から死ぬことだろう。
出来ることなら死にたくなかったんだけれどね。
私にはやり残したことがあるんだ。君はそんなことなければいいんだけど…。私の死が無駄ではないことを祈るよ。」
…だそうだ。自分宛なのはわかるが、誰からなのか分からない。手紙の中にもあったが手遅れとはなんなんだ…
「今から死ぬ」という事は遺書だろうか…?何故僕宛なのだろう?様々な疑問が次々出てくる。混乱しているようで、内容が理解できない。ひとまず心を落ち着かせた。
数分経つと、落ち着いてきた。まずは一つ一つ考えよう。誰が書いたのか。恐らくは僕に関係が深い人が書いたものだと考えるのが妥当だろう。次に手遅れとはなんのことだろうか。…しばらく考えたがわからない。
他の疑問もそうだ。色々考えてみたけどやっぱり答えが分からないんだ。その日は夜までずっと手がかりを掴むために何度も文章を読んだ。何度も何度も。
朝だ。多分寝ていない。寝たかもしれないが覚えてない。意識はあった気はするんだが。それが現実か夢かはわからない。そんなことは今はどうでもいい。ずっと考えてた。そして、ひとつの結論に辿り着いた。これが正解とは限らない。むしろ嘘だと信じたかった。私は気付いたんだ。この文章の意味が。ごめんな。君の死は無駄だったのかもしれない。僕の結論が間違いならな。
でも。僕が意味あるものにしてみせる。
手紙を封筒にしまい、小説と共に鞄の中にいれた。
僕を見てくれていた看護婦さんにお礼と感謝の言葉を述べ、それから病院の屋上へ行き、靴を脱ぎ、強く願い、自分の考えが正しいと信じて。
僕はそこから飛び下りた。
「やっと目を覚ましたのね…」
『やっと』という話し方からよるに、僕はかなり長い間眠っていたらしい。まだ意識が朦朧とする中で、僕は誰なのか尋ねた。
「すみません…まだ意識がはっきりしてなくて…どちら様でしょうか…?」
しばらくの間沈黙があり、口を開いた。
「ここの看護婦です。かなり長い間眠っておられました。怪我が治って、リハビリを受けて、歩けるようになれば退院できますよ。」
「そうですか…わかりました、頑張りますね」
「はい…頑張ってください」
その声は涙ぐんでいた。体が起こせないので看護婦さんの姿を見ることが出来なかったが、優しそうな人だったので安心した。
それから看護婦さんはカルテだろうか。ボードに何かを書き記した後、部屋を去っていった。
恐らくずっと僕の看護をしてくれていたのだろう。
退院する前にお礼を言おうと思った。
扉の向こうから話し声が聞こえる。が、また意識が遠のいていく。襲いかかる睡魔に抗えなかった僕はまた眠りについた。
「・・・また・・・ですか・・・これ以上は・・・」
それからしばらく経ち、怪我が治るとリハビリを受けるようになった。他の人たちと比べると結構順調に回復していった。
そして退院が決まった。一週間後だ。退院するまでが暇だった。することが無い。なので病室で本を読んでいた。病室には僕のものと思われる通学鞄が置いてあった。登校中、あるいは下校中に病院に搬送されたようだ。中にはたくさんの小説が入っていた。暇だったので退院するまではその小説を読んでいた。長い間眠っていたせいか、内容を初めて見たような感覚だ。
知っているよりかは新鮮味があって楽しく読めるのでいいんだけどな。
また1冊、また1冊と読み終えていく。次の小説を読もうとして鞄の中を見ると、最後の1冊が入っていた。5、6冊ほど入っていたのにもう最後の1冊だ。どれだけ自分が暇なのか痛感したところで、最後の1冊を取り出そうとすると、鞄の底に封筒があることに気付いた。中には文字が書かれた紙が。手紙だろうか?それを取り出し、読んでみるとそこにはこう書いてあった。
「これを読んでいるということは小説を読み終えたんだろう?君はいつも小説を読んでいるからね。そこに入れて置いて正解だった。さて、本題に入ろう。この手紙を書いたのは誰か分かるかな?分からないのであれば、もう君は…手遅れだな。私は今から死ぬことだろう。
出来ることなら死にたくなかったんだけれどね。
私にはやり残したことがあるんだ。君はそんなことなければいいんだけど…。私の死が無駄ではないことを祈るよ。」
…だそうだ。自分宛なのはわかるが、誰からなのか分からない。手紙の中にもあったが手遅れとはなんなんだ…
「今から死ぬ」という事は遺書だろうか…?何故僕宛なのだろう?様々な疑問が次々出てくる。混乱しているようで、内容が理解できない。ひとまず心を落ち着かせた。
数分経つと、落ち着いてきた。まずは一つ一つ考えよう。誰が書いたのか。恐らくは僕に関係が深い人が書いたものだと考えるのが妥当だろう。次に手遅れとはなんのことだろうか。…しばらく考えたがわからない。
他の疑問もそうだ。色々考えてみたけどやっぱり答えが分からないんだ。その日は夜までずっと手がかりを掴むために何度も文章を読んだ。何度も何度も。
朝だ。多分寝ていない。寝たかもしれないが覚えてない。意識はあった気はするんだが。それが現実か夢かはわからない。そんなことは今はどうでもいい。ずっと考えてた。そして、ひとつの結論に辿り着いた。これが正解とは限らない。むしろ嘘だと信じたかった。私は気付いたんだ。この文章の意味が。ごめんな。君の死は無駄だったのかもしれない。僕の結論が間違いならな。
でも。僕が意味あるものにしてみせる。
手紙を封筒にしまい、小説と共に鞄の中にいれた。
僕を見てくれていた看護婦さんにお礼と感謝の言葉を述べ、それから病院の屋上へ行き、靴を脱ぎ、強く願い、自分の考えが正しいと信じて。
僕はそこから飛び下りた。
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