魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました

ふうか

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婚約編

28 兄妹のたくらみ

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 レティシアの兄ケイトはある日一番下の妹カラメリアに呼ばれた。最近のカラメリアは非常に機嫌が悪くケイトはあまり近づかないようにしていた。そんな妹からの呼び出しに少々うんざりしながらも言われた通りにカラメリアの部屋へ足を向けた。

 ケイトには2人の妹がいたが、関りがあるのはカラメリアだけだ。魔力を持たずに生まれてきた長女レティシアをケイトは徹底的に避けていた。魔力主義的な思考の持ち主であるケイトは魔力内のレティシアは家の恥であるという認識だった。両親が彼女を社交界デビューさせたことも反対したほどだ。そんなレティシアが四大公爵家の嫡男と婚約したという話を聞い他時には耳を疑った。あの魔力なしは碌な婚約者が見つからないと思っていたのに。

 ケイトは昔からレティシアが嫌いだった。魔力なしという理由だけではなく。レティシアは昔から頭のいい子どもだった。幼い頃から様々な書物を嗜いそれでいて謙虚な彼女は家庭教師の先生からの心象もよくケイトはよくレティシアと比べられてた。ケイトは自分がそこまで頭がよくないことを理解していたが、父ににて魔術は得意だった。父からも魔術師としてやっていけるだろうと言われていたし、レイエアズマン家の長男である自分はこの家を継ぐことも決まっている。そんな俺が唯一勝てないのが勉学で、それも自分よりも年下の女に負けているということが我慢ならなかった。ケイトよりもレティシアそ褒めた家庭教師は見る目がないと言ってやめさせた


 いくら賢くても魔力の全くないレティシアはおそらく嫁ぐこともできず家に残るだろう。そのころになってこの家を継いでいるのはケイトだ。養ってもらうレティシアはきっとケイトに逆らえない。自分のいうことを聞くしかなくなったレティシアに今までの屈辱を返してやろうと思っていたのに。アルハイザー家に嫁いでしまえばケイトはレティシアを敬わなければならないのだ。

 ケイトはそんなことを考えてイライラとしながら廊下を歩いて、ノックもせずにカラメリアに部屋へ入った。


「ちょっと、お兄様。ノックもせずにレディーの部屋へ入るなんて!」

 カラメリアの甲高い声に眉を寄せる。カラメリアの向かいにドカッと足を組んで座ったケイトは着いた肘に頬を預けてカラメリアに視線をやる。

「カラメリア、何の用だ。僕は忙しいんだ。」

「あら? そうですの?」

「はあ、それで? 頼み事があるって?」

「そうですの!」

 カラメリアは怒ったように机に両手を置くと腰をあげてケイトの方に体を大きく乗り出した。

「レティシアのことですわ!」

「魔力無しがどうしたってんだ。」

「どうしてあいつがイサイアス様の婚約者なんですの? このままではカラメリアはあの女に頭を下げなければいけなくなっていしまいますわ。そんなの耐えられない。」

「それは同感だが、どうするんだ?」

 カラメリアの愚痴を聞いて自分と同じ不満を持つ者がいると気をよくしたケイトは崩していた姿勢を直した。

「どうするって、そうですわね。私が皇太子様の婚約者となるとかはどうですか? 皇太子様ならカラメリアと釣り合うイケメンなかたですし、皇后というのもいいわ!」

 カラメリアが夢見心地という様子で話す様子にケイトは鼻で笑う。

「おいおい、こんな田舎公爵家の後ろ盾のないお前が皇后なんて夢のまた夢だろう。」

「ひどいですわ! じゃあ、お兄様にはどんな案があるんですの?」

 カラメリアの問いかけにケイトはよく聞いてくれたと歪んだ笑みを見せ、姿勢を低くして声を潜めた。そんなケイトの様子にカラメリアも悪い顔を浮かべるとケイトの言葉に耳を潜めた。

「レティシアを消すんだよ。」

「レティシアを消す?」

 分かるような分からないようなそんな提案にカラメリアが首をすくめる。

「レティシアがいなくなればアルハイザー家との婚約も白紙に戻る。」

「わかったわ、お兄様! そこで私がイサイアス様を慰めるの。そしてイサイアス様の心射止めて婚約者の座は私のものになるのね。」

「そうだ。アルハイザー家との繋がりも守られるし、邪魔なレティシアもいなくなる。いい案だと思わないか?」

 思い通り食いついてきたカラメリアにケイトはほくそ笑む。実際のところカラメリアがイサイアスのことを射止められるとは微塵も思ってはいなかったが、そこはレイエアズマン家の娘なのだからとかなんとか適当なことを言ってしまえばいいと思っていた。

「お兄様、レティシアを消す方法はどうしますの?」

「まあ、それも任せておけ。」

「お兄様がレティシアを?」

「俺が自分で手を下すわけにはいかないだろう。安心しろあてがある。」

 ケイトはそういって笑うと話は終わったとばかりに立ち上がった。一旦部屋に戻って着替えたケイトが向かったのは町だった。
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