婚約破棄、喜んでお受けします。わたくしは隣国で幸せになりますので

しおの

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番外編

sideアーティ7

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sideアーティ7
 それから、誕生日だからと母上から宿泊券をプレゼントされ、アリアを誘った。まさか彼女がプレゼントを用意してくれるとは思わなくて、嬉しくなってしまってつい、素を見せてしまった。それがよかったんだろうか、彼女は僕に心を開いてくれて、そのまま一つになった。今まで生きてきた中で一番幸せな時間だった。
 あれから、とても仲睦まじく過ごすことができていた。ただ、僕は一応王族として学園に通わなくてはいけなくて、離れている間に彼女の様子を知ることができなくて不安だったが、学園に通ったら通ったで他の男に目をつけられても困るので、そこは我慢した。それに母上も子ができたらどちらにせよ退学になるし、アリアさんの意思を尊重しましょうと言われ、アリアは学園に通わないことを選んでくれたから。
 そう、そして僕は学園での授業中に公務をこなし、できる限りアリアとの時間を作っていた。それがバレてしまって母上にもアリアにも怒られたので、それ以降はしないようにしているが。
 それからしばらくしてアリアの妊娠が発覚した。ちょうど結婚式の予定を立てていた時で医師とも相談し、体調が落ち着いた頃にあげることとなった。そこではオリーブやブライアンはもちろんだかアリアの父親とその養子の男の子もきていた。どうやら心を入れ直したらしい父親は立派に男の子を育て上げているようだ。とても賢そうな子で、アリアも安心した様子だった。




 それからしばらく経ち、僕とアリアの間に第一子となる男の子が生まれた。名をイースとつけ、二人で大切に育てた。どうやら生粋のお母さん子で、僕が抱くと泣いて暴れ出してしまう。落ち込む僕を笑って慰めてくれるアリアに甘えながらなんとか子育てをしていた。
 イースが歩き始めた頃、二人目の妊娠が発覚した。二人目はあまりつわりもなく、穏やかに過ごせているみたいだ。ただ問題が一つあった。
「おかあしゃま、おかあしゃま、ぎゅってしてくだしゃい! イースはおかあしゃまだいしゅきです!」
「だから言ってるだろう? アリアは僕の妻だって。こら、離れなさい。お腹の子に触るだろう」
「いやでしゅ。おとうしゃまきらいでしゅ」
「うっ、嫌い、なのか……」
「はい! おかあしゃまをひとりじめ、じゅるいでしゅ」
 大変落ち込む。確かに子供たちからすればお母様で、大好きなのはわかる。が、なんだかとられてしまいそうで、自分の子供なのに嫉妬してしまう。
「もう、アーティ? 夜は一緒なんだから子供たちと一緒にいる時くらいいいでしょう? あなたがわたくしを独り占めしてしまったらかわいそうよ」
「そう、なんだけど……」
「後でね」
 ちゅっと頬に軽くキスしてくれたので今のところはひとまず許すことにしよう。そうだ。夜は僕だけのアリアでいてくれる。うん、頑張れる。
 それからイースはずっとアリアにべったりだった。それになんか不敵な笑みを僕に向けてくるあざとさ。あれ、わざとやってんのか?
 でも、アリアは全くそれに気づくことなく遊んであげていた。なんか悔しい。負けた気がする。が、子供と張り合ってもしょうがないか。
 諦めて残りの仕事を片付けに向かった。これはいつまで続くのか……
 すっかり肩を落としていると母上と偶然会い、お茶に誘われた。仕事があると断ろうとしたが、どうも話がしたいらしいので付き合ってあげることにする。
 それからイースのことを相談したんだが、母上はお腹を抱えて笑っていた。一体なんなんだ?
「あなたは覚えていないかもしれないけど、小さい頃はイースそっくりだったわよ。私にべったりで。それに陛下とよく喧嘩してたわ。さすが親子ってところかしら? 全く覚えていないでしょうけど、六歳くらいまでかしらね。あなたはそのくらいで離れたけど、あの子はどうなるかしら」
「それは、知らなかった……」
「ふふ。大丈夫よ。きっと大人になればちゃんとするわ。そのためにはしっかりあなたが仕事をしている姿を見せるのもいいかもしれないわ。父親の仕事している姿って刺激になると思うの」
「なるほど……それもそうですね」
「まあそのうち、母親よりも大切な子を見つけたら自然と離れるわ。気にしなくていいのよ」
 さすが経験者は語るというか。僕とそっくりだと言われたことがショックだったけど、それなら仕方ない。今、小さいうちは日中だけ、アリアを譲ろう。そのうち教育が始まれば忙しくもなってくるだろうしね。
 それがイースが好きな人を見つけるまで続くとはまるで予想していなかったが……
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