婚約破棄、喜んでお受けします。わたくしは隣国で幸せになりますので

しおの

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番外編

sideアーティ4

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 ある日、王宮でアリアを見かけることはなかった。彼女の秘書官に聞くとどうやら二日分の仕事を終わらせて今日は休みにしたらしい。
 もしかして王都にでも行っているのか? レオンからもこの国を見ていくといいと言われているし、ちょうどいいかな。アリアを探しに行こう、そう思って街へと繰り出した。
 変装してこなかったからかご令嬢に絡まれてしまったがなんとかかわし探し歩く。店の人にピンク髪の少女を見かけなかったかと聞きながら歩いているとなんだかよろしくない人に絡まれている。手に何か持っているが、あれはなんの実だ?
 そんなことより助けないと。彼女を抱き寄せ一瞬にして沈める。一応体術、剣術は一通り教わっているから簡単だった。驚いている彼女はとても可愛い。それにいい匂いがする。
 考え込んでいた僕を見た彼女は一瞬にして僕のことを思い出してくれていた。たった一度、会っただけなのに覚えていてくれたことがすごく嬉しかった。
 それから彼女を連れてカフェに入り、色々聞いた。どうやら彼女の生家でも色々あるらしい。本当によくこんな環境で今までやってこれたよ。
 さらに、この国の国王陛下と王妃は仕事ができるアリアをどうも手放したくないらしい。それどころかさらに仕事を押し付けているようでもあった。本当によく今まで平和でいられたな。中から崩されたら一瞬だろうに。
 よっぽど国民性がいいというか運がいいというか。レオンが焦るのも頷ける。
 それから、どうやらアリアが王妃に物申したようだ。結構ズバズバと言っていたようで不敬罪と取られてもおかしくないようなことまで。
 もしかして婚約破棄をしようとしている?
 そんな、自分に都合のいいように考えてしまうほど僕はもうアリアを好きになりすぎていた。


 王宮でもわざと遭遇するようにしていた。彼女は休憩の時に王宮内を散歩する。それに合わせたのだ。ついでにレオンと仕事の話をしながら歩いていると向こう側からアリアがやってきた。
 どうやらレオンに用事があったらしい。ついでだから同席させてもらうとどうやらイアンがやらかしていたらしい。教育すら放棄しているのによく人の金まで手が出せるな。まあ、その前にそんなやつでも簡単に金が使えること自体がおかしいことなんだが。
 そこも改善しなければならない。それにしてもアリア、優秀すぎないか? まだ婚約しかないだろうに。でもまあ、これで婚約は解消できるな。こんなことしてたら普通に廃嫡に加えて処罰されるだろ。
 アリアがさった後、レオンに告げる。これが発覚した以上は廃嫡されるだろう。それに婚約は解消されるだろうと。だから僕は僕で動かせてもらうとも。
「もちろんいいと思うよ。ただ、今の時点ではまだ婚約中だからね。その辺は弁えたほうがいい。困るのはアリア嬢だ」
「わかっている。謁見でも申し込んでくるかな」
「ふふ。了解」
 こうして僕は国王陛下との謁見に向かった。多分なんの話か分かってはいるんだろう。
「時間をいただき感謝します。レオンから報告があると思いますが、イアン殿下は金銭の使い込みをしています。あのイアン殿下でも使い込みが容易にできるこの体制、問題があると思います。さらにはそんなイアン殿下を放っておいているあなた方にも疑問を抱きます。アリア嬢と婚約を解消するつもりはないのでしょうか?」
 本来なら他国の王子が国王陛下に物申すなどできないがどうも父上とはそれなりに付き合いがあるらしく、何かあれば思いっきり言っていいと許可を貰っていた。昔から物事をあまり深く考えず、なおかつ争い等は避けたがる人だからと。
「そなたの言うことはもっともだ。だが、今解消してしまえば、レオンの負担も多大なるものになるであろう。アリア嬢にも我々は助けてもらっているのだ。そなたの留学が終わるまで、辛抱してはくれまいか」
「それはアリア嬢もと言うことでしょうか。彼女はただの婚約者にすぎません。あなた達の事情など今の彼女の立場ではあまり関係ないでしょうに」
「そうである……が、どうか」
 なるほど。こうしてこの国は回っているんだろうな。上のものが下手に出ることで周りのものの良心につけ込んで自分の都合よく回している。自分の息子でさえ、仕事を代わりにやってくれる駒としか見ていない、そう言う印象を受ける。
 まあ、いろんなタイプの王がいるからなんとも言えないが、このタイプは王より先に下が倒れていってそのまま共倒れになるパターンをよく見かけるな。
 早くレオンに渡したほうがいい気もするがそれはそれぞれだから何もいえないな。
「では、もしまたイアン殿下が問題を起こしたその時は、アリア嬢との婚約は解消してください。彼女のことは僕が責任を持って預かります」
「……なるほど。そなたの目的は彼女であったか。うちのバカ息子には勿体無い令嬢だ。そのあとは任せよう」
 了承も取れたし、まあよしとしよう。
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