上 下
43 / 49
番外編

sideアーティ2

しおりを挟む
sideアーティ2
 僕は父上の元を訪れていた。とあるお願いをするためだ。どうしても彼女にもう一度会いたい。けれど、一国の王子が勝手に隣国になど行けるはずもない。そこであることを思いついたのだ。
「父上、僕が十六の歳に隣国へ留学したいのです。一年でいい。それから隣国の第二王子も留学を希望しています。僕はアリアに会いに行くという目的の他に、隣国の第一王子に内政について助言がほしいと言われています。第二王子もこの国のことをよく知り、自国に生かしたいと。お許しいただけないでしょうか」
「そうかそうか。好きな女を追いかけるだけならば少々考えるが、向こうの王子達も国を変えたいと思っているのだな。今のところ友好国ではあるし、いいのではないか? 向こうに了承は?」
「こちらがいいというのであればぜひお願いしたいと」
「なるほどな。いいだろう。ただし、一年だぞ。好きな女一人落とすのにダラダラとかかっているようではな。落とすまで行かなくともこちらに連れてきたらいい。妻からもとても賢そうでいい子だと聞いている。逃すなよ」
 父上はパチリとウインクをしてのける。ここまで自由にさせてもらっているなんてとてもありがたい話だ。両親に感謝しながら部屋を後にした。
 

 それから少しして、ネイトとマーリス伯爵夫人がアリアの元を訪ねてくれたみたいで、その時のことを教えてくれた。少し誇張してイアンと婚約したって聞いたけど大丈夫なの? というスタンスで聞いてくれていた。そっちの方が話を引き出しやすいと思うとマーリス伯爵夫人が提案してくれたのだ。
 案の定色々教えてもらえたようで、そのまま伝えてくれた。人柄に関してはあまり好ましく思っていないこと、どうやら妹の方を気に入ってること、何かあった時のために資金源として化粧品を作っていること。
 芯の強い女性だと思ってはいたが、ここまでとは思わなかった。十歳の貴族令嬢にしてはしっかりしすぎているというか。まぁ僕も周りから見れば十分年齢の割に大人だと言われるけど。
 彼女の話を聞けば聞くほど興味が湧いていった。けれど、婚約してしまっている以上、こちらからは何も関与できない。だが、一年だけ会うことが出来る。早く会いたいな。



 それから、僕の妹とレオンの婚約が結ばれた。レオンはこちらに勉強と称してよく来ていたんだけど、どうも気に入ってしまったらしい。甘い言葉を人目も憚らず吐き続けるから次第に妹は逃げ回るようになっていた。
 いや、流石に気に入ったのはわかるけど、そんなに人前でやらなくてもって一瞬思ったけど、もし自分がアリアに会えたら、同じようにしてしまうかもしれない。少し自信がなくなってしまった。
 レオンやソルトとはよく手紙のやりとりをしている。僕もある程度の年齢になると知識も増えて王宮内のことがわかるようになってきた。そこで中の制度や仕事の分担方法、それから仕事をする人々の待遇など、わかる範囲で伝えている。次第に自分から内部の仕組みなどを聞き齧り、父上にお願いしてできる仕事をするようになっていった。
 それから縁談も申し込みが来ていたけど留学の一年が終わるまでは断っておいてほしいとお願いし、公務でご令嬢に言い寄られることもあったがそれとなくかわしていった。



 そしてついに留学する日が訪れた。学園ではアリアに僕だと気づかれないように髪をセットして眼鏡をかける。それからこの政略結婚が主流の国でご令嬢に言い寄られても面倒なので名前も変えさせてもらっていた。学園にいる間はこっそりと彼女の様子を伺う。小さい頃やネルトに聞いた話と僕の想像はピッタリと一致していて、真面目に授業を受けている。
 それからオリーブやブライアンと一緒に過ごすかと思いきや、昼食が終わると図書室に通っているようだ。図書室での彼女はとてもリラックスした様子で息抜きに来ているようだった。
 それからイアンは時折彼女に話しかけるだけであとはどこかへ行ってしまう。周りの生徒達が不仲だとかよく違う令嬢と外出しているところを見ただとか噂していた。
 王宮ではどうやら教育ではなく仕事をさせられているらしい。本来なら教師がいるだろうに教師の代わりに秘書官が出入りしている。これ、レオンが言っていたな。
 確か、陛下も王妃も必要最低限の仕事だけしていてあとは全部レオンに丸投げだって。外交だけはうまいからなんとかなっているけど中はボロボロだと。さらには第二王子が留学しているのでますますそうなってしまっている。
 イアンにも仕事を振っているがそもそも必要な教育すら終了しておらず、ずっと遊び歩いているらしい。そのことについて苦言を呈するが、放っておけと言われ話にならないとも言っていた。
 つまりレオンは陛下と王妃の仕事とさらには内政の改革を一気にやっている状態だった。その手伝いをするために僕は留学しているので、放課後はレオンの執務室に篭りきりだ。時折息抜きでアリアの様子は見に行くけど。


 
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます

富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。 5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。 15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。 初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。 よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

処理中です...