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 それからは平和な日々が続いていた。エリザベス様からは相変わらずレオン王太子殿下からの手紙がって真っ赤になりながら相談がくるけれど。ちらりと内容を聞いたらただただエリザベス様の可愛いところがあげられていて、わたくしはひたすら頷いていたけれど。
 わたくしの反応ににさらに私に怒るのだけれど全く怖くないのよね……
 というかレオン王太子殿下はこの状況を愉しんでいらっしゃると思うわ。エリザベス様の反応があまりにも可愛いもの。
「アリア、迎えにきたよ」
 アーティはあれから真面目に取り組んでいるみたいで、夜遅くまでお仕事をしていることもしばしばで。とても喜ばしい限りよ。王妃様や国王陛下からも感謝されている。
 そして王宮内もピンクな雰囲気が漂っていて、とてもすごいことになっているわ……
 恋愛相談に乗り続けた結果なのだけれど、これでよかったのかしら。一応、恋人同士になった方々には、お仕事とプライベートは分けてねと声をかけているけれど。
 そんな中、お父様から一通のお手紙をいただいた。自室に戻った際に読んでみたのだけれど、わたくしが思っていたのと違う人生を歩むことにしたみたい。
 お父様はお母様と離縁したのだけれど、愛人とも縁を切ったみたい。そのまま一人で伯爵家の当主として真面目に領地経営をしているみたい。そして、孤児院から養子をとって跡取りとして育てているのだとか。
 色恋にうつつを抜かすこともなくしっかりと我が子と向き合っているという手紙だった。最後には、私の過ちを気づかせてくれてありがとう。幸せに。と添えられていた。
 どうやら新しい人生を歩んでいるみたい。お父様もお父様なりに考えていたみたいね。これから幸せになれるといいけれど。
 実はレオン王太子殿下からもお話を聞いていたのよね。だから大体の様子は聞いていたのだけれど、お父様本人から聞けるのは嬉しかったわ。


「アリア様、ドレスの打ち合わせの方がいらしてます」
「今行くわね」
 そしてわたくしはドレスの打ち合わせへと向かった。あまりこだわりはないから全てお任せする予定ではあるのだけれど。そんなことを思いながら部屋へ入るとそこにはアーティがすでに来ていた。
「あら……? お仕事は?」
「ちゃんと終わらせてきたよ。そんな目で見ないで」
 疑いの眼差しをむけていたことはしっかり気づかれていたみたい。でも一度約束したら守ってくれるのも彼のいいところね。周りからも仕事をしていないとあまり聞かないし頑張っているのは知ってるわ。
「ねえアリア。ドレス、俺が選んでもいい?」
「どうぞ」
 どうやらアーティが決めてくれるみたい。わたくし的には助かるわ……
 そう思って見守っていたのだけれど……
 アーティって結構細かいのね。デザインから刺繍の柄から刺繍の場所から事細かに指定しているわ。特にこだわりのないわたくしは聞いているだけで終わってしまったけれど。
 今日のドレスの打ち合わせはわたくし達の結婚式の際のドレス。あれから仕事を倍以上片付けて王妃様と国王陛下に直談判して日取りを一番早めたみたい。おかげでわたくし、大変忙しくなっているのよね……
「アリアは何か希望はある?」
「着心地が良ければあとは特にありません」
「アリアのドレスなのに……」
「あまりこだわりがないのよ。基礎化粧品はこだわるのだけれど」
 そんなわたくし達のやりとりを生暖かい目で見ているデザイナーさんにハッとする。他の人もいるんだったわ……
「では、デザインはこちらで製作しますね。出来上がったら一度仮でお持ちするので細かいところは後で調整させていただきます」
 こうしてドレスの打ち合わせはおわった。自室へ戻るとクタクタのわたくしを抱きしめながらいつものように触れてくる彼。けれどなんだかそういう気分にはなれなくて断ってベッドに横になる。彼は案の定しゅんとしていたけれど、「疲れちゃった? ごめんね。急がせたから……」って言ってたけれど、わたくしは眠気に耐えきれず、返事もせずに眠りに落ちた。


 翌朝、珍しく自分では起きれなくて、アーティが起こしてくれた。なんだろう……疲れたのかな。
 いつもより寝ていたはずなのにすごく眠い。おかしいわね……
「アリア、今日は休もう。後で医者を呼ぶから部屋で休んでて」
「ごめんなさい、そうさせてもらうわ」
 彼の言葉に甘えてベッドに横になるとすぐに眠気が襲う。ああ、どうしてこんなに眠いのかしら。
 わたくしが眠っている間にお医者様が来てくださっていたみたい。けれどどこも異常がないと言っていて安心したわ。
「アリア、大丈夫?」
「ええ、いっぱい寝たらスッキリしたみたい。心配かけてごめんなさい」
「君が元気ならそれでいいよ。食事を持ってきたから食べよう」
 どうやら気を利かせてくれたみたいで、食事が運び込まれている。席に着いた瞬間、込み上げる吐き気。
「うっ」
「アリア⁈   大丈夫……?」
 優しく背中をさすってくれて少し楽になったけれど、ダメだわ。というかこれってもしかして……
 思わずお腹を撫でる。まさか……
 その様子にアーティは何か勘づいたのか先ほどとは別のお医者様を連れてきてくれる。先ほどのお医者様は男性だったけれど今度は女性のお医者様だった。
「おめでとうございます」
 その一言にアーティは涙をポロポロと流し、わたくしはといえばお腹を撫でる。
 そんなわたくし達の様子を嬉しそうにお医者様も見ている。
 ぎゅっとわたくしを抱きしめてくれて、「ありがとう。ありがとう」と何度も言ってくれた。
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