婚約破棄、喜んでお受けします。わたくしは隣国で幸せになりますので

しおの

文字の大きさ
上 下
37 / 49

37

しおりを挟む
37
「アリアお義姉様っ、あれ? なんか雰囲気変わってない? 気のせいかしら……」
 まあ、二つも年下の子に勘付かれてしまうなんて……どうしてこんなにわかってしまうのかしら……
「それよりっ、お兄様とお泊まりに行ったんでしょう? どうだったのっ」
「ど、どうと、言われましても……」
「……なんとなくわかったわ。私を置いて行ってしまったわねっ」
 ああ、完全にバレてしまったわ。
 もう恥ずかしい……
「それで、どうやって克服したのっ」
「えと、それは……」
 ぐいっと身体を乗り出して目をキラキラさせているエリザベス様、かわいいわね。
 って、そうじゃないわ。
「うーん。ゆっくりでいいから、自分の気持ちを正直に伝えてみたらどうかしら。それから、ちゃんとお話ししたいって伝えてみたらどう?」
「そうしたらうまくいくかしら」
「やってみないとわからないと思うの。ほら、相手の性格にもよるだろうし……あの方なかなか掴めない方だったわ」
 二人で考え込んでいるところへ、アーティが訪ねてきたわ。
 制服のままでこちらにきていたみたいで、学園が終わってすぐにきたのかしら?
「やあアリア。元気かい?」
「元気ってお兄様……朝も顔を合わせたのでしょう?」
「それでもだよ。あ、エリーゼ。明日着くみたいだぞ」
 一気に顔が赤くなるエリザベス様、かわいいわ……
 きっとレオン王太子殿下のことね。反応ですぐわかっちゃうのもかわいいわねぇ。
「さ、アリア。帰るよ」
 手を引かれてエリザベス様の部屋を後にする。部屋へ戻ると彼は着替えるために自室へと向かった。初めから着替えてからきたらよかったのに……
「はあ……」
 大きなため息をつきながらわたくしを抱きしめる。というかため息をつくの初めて聞いた気がするわ。
「どうしたの?」
 わたくしをぎゅっと後ろから抱きしめる。何かあったのかしら……?
「充電」
 わたくし、発電体質なのかしら。よくわからないけれど、わたくしも疲れがどんどん抜けて行くのが心地いいのでそのままにしているわ。なんだか婚約する前と今じゃ全然違うのだけれど……
 そのままわたくしの肩に顔を埋めるとスンスンと鼻を鳴らす。
「いい匂い」
 なんだかそれはそれで恥ずかしいんですけれど……それにわたくしの匂いじゃなくてアーティの方がいい香りがするわ……
「ひゃっ、ちょっと……っ」
 ぴちゃぴちゃと音がするくらい耳を舐め回される。彼の吐息や音がダイレクトすぎて、変な気持ちになってきちゃうじゃない。
 首筋まで舐められ、前に回されていた手が胸を揉みしだき始める。ちょっとっ、まだ明るいんですけれどっ。
「アーティ、ちょ、っん」
 文句を言おうと振り向いたらそのまま深い口づけをされてしまう。すっかりとろけてしまったわたくしを横抱きにして寝室へ連れて行かれてしまった。
 あとはご想像された通り、美味しく戴かれてしまい、夕食も食べずに彼に貪られてしまった。

 翌朝の彼のご満悦な笑顔に少し腹が立ったけれど、諦めることにしたわ……だって、見えないはずに尻尾がブンブン揺れているんだもの……
 なんだか怒れないわ。


 その日の午後、イーリス国からレオン王太子殿下が王宮へ来られた。わたくしも元イーリス国にいたということで、同席して欲しいと言われてるのよね。それなのに……身体中が痛いわ。一体何回したのよあの人はぁっ。
 4回目までは覚えているんだけれど、それ以降はもう記憶がないのよね……

「久しぶりだね。元気だったかい?」
「はい、おかげさまで」
 穏やかな雰囲気の中、曲がり角から誰かきたみたい。あら、あの方は……
「きゃーっ」
 わたくし達をみた途端走り出す女性。うん、あれはエリザベス様ね。
 本当に見かけた瞬間逃げてしまうなんて……かわいいわ。
「ふふっ。今日も元気だね」
「そうですわね。王太子殿下の言ってたこと、わかるわ。あれは可愛い」
「でしょう?」
「でも、彼女も悩んでいましたよ? もう少しお話をしてあげてくださいな」
「そう。じゃあ、迎えに行ってあげようかな」
 笑顔が少し怖いですけれど……きっとなんとかなるでしょう。レオン王太子殿下を見送って執務室へと向かう。
 今日は少しだけお仕事をすると決めているのよね。と言ってもあちこち痛いので少しだけだけれど。
 どれどれ、気になる人がいるのですが、彼に告白してもいいのかわかりません。ぜひアドバイスを……
 わたくしなら当たって砕けろなんだけれど、女の子の性格にもよるし相手の性格にもよるわね。ちょっと呼んでみようかしら。
 秘書官の方にお願いして呼んできてもらう。きたのは可愛らしいメイドの女の子。
「あ、あの、初めまして……」
「初めまして、アリア・マーリスと申します。少しお話を伺っても?」
「はい、お願いします……」
 どうやら恋をしている相手は騎士の方で、たまに話す程度なのだという。最近彼があまり話してくれなくなってそれでもどうしても告白したいのだとか。
 でも、それだけじゃわからないわ……
「あの、告白の場に一緒にいていただくだけでいいのです。どこかに隠れてもらってて構いません。もし振られたら慰めていただければ」
 そうね。女性の場合相談というより話を聞いて欲しかったり、背中を押して欲しかったりすることが多いものね。
「わかったわ! そんなことでいいのならいくらでも協力いたします」
「僕も行くよ」
「わあっ」
 突然の乱入に驚いてしまう。誰かと思ったらアーティだったわ……昨日と同じ制服姿だけれど。  
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

【完結済み】婚約破棄致しましょう

木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。 運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。 殿下、婚約破棄致しましょう。 第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。 応援して下さった皆様ありがとうございます。 リクエスト頂いたお話の更新はもうしばらくお待ち下さいませ。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 魔族 vs 人間。 冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。 名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。 人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。 そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。 ※※※※※※※※※※※※※ 短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。 お付き合い頂けたら嬉しいです!

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...