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朝目覚めると目の前に彼の顔があって飛び起きてしまったわ。一瞬パニックになってしまったけれど、昨日のことを思い出して恥ずかしくなってしまう。
あ、服……ふとそう思って見てみるとしっかりと寝巻きを着せられていて体も清められている。もしかして彼がしてくれたのかしら。だとしたらさらに恥ずかしい……
「ふふ。朝から元気だね。体は大丈夫?」
「あ、大丈夫です……」
「おはよう」
ちゅっとキスされてさらに照れる。なんか触れ合うのは好きなんだけれど、まだ恥ずかしい……これはいつなれるのかしら。
「昨日あんなことまでしたのに、まだ恥ずかしい?」
「……っ、もう!」
「ごめんごめん」
ごめんにうすら笑いが含まれているわっ。絶対悪いと思っていないわね。彼を睨みつけていると、なぜか笑顔でわたくしを抱きしめてくる。
「好きだから触れたいって思うのは悪いこと?」
うっ、その聞き方はずるいわ……いやなんて言えないじゃない。今だって抱きしめられて、何かが身体中に染み渡っていて幸せな気持ちが広がっているんだもの。
「悪くない……けど、恥ずかしいのよ」
「ふふ。いっぱい触れ合ったらなれるよきっと。だって、もうすでに抱きしめられてるのに恥ずかしくなくなってるでしょう? ねえ、今どんなことを考えてるの?」
意地悪な顔でわたくしをみる彼。ああ、もう、わかっているから聞いてきたのでしょう? でもこの顔は意地でも言わせたいのね……
「……幸せだなって思ったの」
「僕も幸せだよ。ありがとう、僕を選んでくれて」
しばらくまったりとベッドの上で話していた。というのもわたくし、足腰が立たなくて着替えすらまともにできなかったのよ……
おかしいわ……前世ではこんなことなかったのに。それにこんなに心地いい肌のふれあいをしたことがなかったし、イったこともなかったもの……。
ご令嬢って思ったよりも運動量が少なくて体力がなかったのも関係あるのかしら……
初めての時は痛みは残っていて意識を失うなんてことはなかったし、そんなに気持ちいいなんて思ったこともなかったし、むしろ苦痛すらあったのに。
今はただジンジンと響く感じとナカにまだ何かあるんじゃないかってくらいの異物感があって、その度に脳裏に昨日の記憶が蘇ってしまう。
お互いの気持ちがあったからこそこんなに満足感があるのかしら。
「そうだ、このまま王宮へ行こうか。もう部屋は準備してあるから何もいらないよ。一緒に住もう」
「え……?」
「部屋はもちろん僕の隣だから安心していいよ」
話が早すぎてついていけないわ。つまりは同棲ということ? というかアーティの隣の部屋って、王太子妃の部屋よね? それって安心できるの……?
そんなことを考えていたけれど、どうやらすでに伯母様たちには話はついているみたい。
「本当はこっちにきてすぐに王宮に連れて行こうとしたんだけど、ネルトにとめられたんだ。もうちょっと落ち着いてからにしろって。その間に誰かにアリアのことを掻っ攫われたらどうするって言ったんだけど聞いてもらえなかった……」
しょんぼり肩を落としながらそんなことを言うアーティがなんだか面白くて笑ってしまう。なんだか身体をつなげてからお互いに本音を話すようになっていて、今まではスマートなところしか見たことがなかったからなんだか嬉しくて。
意外な一面を自分の目で確認できてわたくしも遠慮なく話を聞くことができるようになったの。
なぜかはわからないけれど、不思議ね。きっとアーティはあのプレゼントを渡した時に素が出てしまってタガが外れてしまったのがきっかけじゃないかと思うけれど。
そんな彼に引っ張られてわたくしも自然と接することができるようになったのね、きっと。
「でも、ネルトは正しかったと思うわ。あのまま王宮に連れて行かれてたとしたら、きっとこんなふうに自然と接することが難しかったかもしれないもの……」
「……いうこと聞いておいてよかった」
「ふふ。わたくしにも聞いてくださいな。だってわたくしとアーティのことでしょう?」
「そうだね」
もうふれあいも恥ずかしさはなくなっていて、王妃様はすごいなって思ってしまったわ。わたくしとエリザベス様だけでは思いつかなかったもの。
あ、そうだ。王宮にいったらエリザベス様にもお話ししないといけないわね。
「さて、そろそろ立てる?」
「うん、大丈夫そう」
ちょっとよたよたするけれど、彼も着替えを手伝ってくれたわ。というか服着せるの上手すぎないかしら……
そのまま馬車まで横抱きで連れて行かれたわ……誰にも会わなかったけれど、流石に誰かに見られるのは慣れの問題ではないでしょう?
馬車の中はクッションで溢れていて、振動が響くたびに気遣ってくれて、あまりに心配するから大丈夫と言ったんだけれど、辞めてもらえなかったわ……
朝目覚めると目の前に彼の顔があって飛び起きてしまったわ。一瞬パニックになってしまったけれど、昨日のことを思い出して恥ずかしくなってしまう。
あ、服……ふとそう思って見てみるとしっかりと寝巻きを着せられていて体も清められている。もしかして彼がしてくれたのかしら。だとしたらさらに恥ずかしい……
「ふふ。朝から元気だね。体は大丈夫?」
「あ、大丈夫です……」
「おはよう」
ちゅっとキスされてさらに照れる。なんか触れ合うのは好きなんだけれど、まだ恥ずかしい……これはいつなれるのかしら。
「昨日あんなことまでしたのに、まだ恥ずかしい?」
「……っ、もう!」
「ごめんごめん」
ごめんにうすら笑いが含まれているわっ。絶対悪いと思っていないわね。彼を睨みつけていると、なぜか笑顔でわたくしを抱きしめてくる。
「好きだから触れたいって思うのは悪いこと?」
うっ、その聞き方はずるいわ……いやなんて言えないじゃない。今だって抱きしめられて、何かが身体中に染み渡っていて幸せな気持ちが広がっているんだもの。
「悪くない……けど、恥ずかしいのよ」
「ふふ。いっぱい触れ合ったらなれるよきっと。だって、もうすでに抱きしめられてるのに恥ずかしくなくなってるでしょう? ねえ、今どんなことを考えてるの?」
意地悪な顔でわたくしをみる彼。ああ、もう、わかっているから聞いてきたのでしょう? でもこの顔は意地でも言わせたいのね……
「……幸せだなって思ったの」
「僕も幸せだよ。ありがとう、僕を選んでくれて」
しばらくまったりとベッドの上で話していた。というのもわたくし、足腰が立たなくて着替えすらまともにできなかったのよ……
おかしいわ……前世ではこんなことなかったのに。それにこんなに心地いい肌のふれあいをしたことがなかったし、イったこともなかったもの……。
ご令嬢って思ったよりも運動量が少なくて体力がなかったのも関係あるのかしら……
初めての時は痛みは残っていて意識を失うなんてことはなかったし、そんなに気持ちいいなんて思ったこともなかったし、むしろ苦痛すらあったのに。
今はただジンジンと響く感じとナカにまだ何かあるんじゃないかってくらいの異物感があって、その度に脳裏に昨日の記憶が蘇ってしまう。
お互いの気持ちがあったからこそこんなに満足感があるのかしら。
「そうだ、このまま王宮へ行こうか。もう部屋は準備してあるから何もいらないよ。一緒に住もう」
「え……?」
「部屋はもちろん僕の隣だから安心していいよ」
話が早すぎてついていけないわ。つまりは同棲ということ? というかアーティの隣の部屋って、王太子妃の部屋よね? それって安心できるの……?
そんなことを考えていたけれど、どうやらすでに伯母様たちには話はついているみたい。
「本当はこっちにきてすぐに王宮に連れて行こうとしたんだけど、ネルトにとめられたんだ。もうちょっと落ち着いてからにしろって。その間に誰かにアリアのことを掻っ攫われたらどうするって言ったんだけど聞いてもらえなかった……」
しょんぼり肩を落としながらそんなことを言うアーティがなんだか面白くて笑ってしまう。なんだか身体をつなげてからお互いに本音を話すようになっていて、今まではスマートなところしか見たことがなかったからなんだか嬉しくて。
意外な一面を自分の目で確認できてわたくしも遠慮なく話を聞くことができるようになったの。
なぜかはわからないけれど、不思議ね。きっとアーティはあのプレゼントを渡した時に素が出てしまってタガが外れてしまったのがきっかけじゃないかと思うけれど。
そんな彼に引っ張られてわたくしも自然と接することができるようになったのね、きっと。
「でも、ネルトは正しかったと思うわ。あのまま王宮に連れて行かれてたとしたら、きっとこんなふうに自然と接することが難しかったかもしれないもの……」
「……いうこと聞いておいてよかった」
「ふふ。わたくしにも聞いてくださいな。だってわたくしとアーティのことでしょう?」
「そうだね」
もうふれあいも恥ずかしさはなくなっていて、王妃様はすごいなって思ってしまったわ。わたくしとエリザベス様だけでは思いつかなかったもの。
あ、そうだ。王宮にいったらエリザベス様にもお話ししないといけないわね。
「さて、そろそろ立てる?」
「うん、大丈夫そう」
ちょっとよたよたするけれど、彼も着替えを手伝ってくれたわ。というか服着せるの上手すぎないかしら……
そのまま馬車まで横抱きで連れて行かれたわ……誰にも会わなかったけれど、流石に誰かに見られるのは慣れの問題ではないでしょう?
馬車の中はクッションで溢れていて、振動が響くたびに気遣ってくれて、あまりに心配するから大丈夫と言ったんだけれど、辞めてもらえなかったわ……
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