上 下
35 / 49

35

しおりを挟む
35
 朝目覚めると目の前に彼の顔があって飛び起きてしまったわ。一瞬パニックになってしまったけれど、昨日のことを思い出して恥ずかしくなってしまう。
 あ、服……ふとそう思って見てみるとしっかりと寝巻きを着せられていて体も清められている。もしかして彼がしてくれたのかしら。だとしたらさらに恥ずかしい……
「ふふ。朝から元気だね。体は大丈夫?」
「あ、大丈夫です……」
「おはよう」
 ちゅっとキスされてさらに照れる。なんか触れ合うのは好きなんだけれど、まだ恥ずかしい……これはいつなれるのかしら。
「昨日あんなことまでしたのに、まだ恥ずかしい?」
「……っ、もう!」
「ごめんごめん」
 ごめんにうすら笑いが含まれているわっ。絶対悪いと思っていないわね。彼を睨みつけていると、なぜか笑顔でわたくしを抱きしめてくる。
「好きだから触れたいって思うのは悪いこと?」
 うっ、その聞き方はずるいわ……いやなんて言えないじゃない。今だって抱きしめられて、何かが身体中に染み渡っていて幸せな気持ちが広がっているんだもの。
「悪くない……けど、恥ずかしいのよ」
「ふふ。いっぱい触れ合ったらなれるよきっと。だって、もうすでに抱きしめられてるのに恥ずかしくなくなってるでしょう? ねえ、今どんなことを考えてるの?」
 意地悪な顔でわたくしをみる彼。ああ、もう、わかっているから聞いてきたのでしょう? でもこの顔は意地でも言わせたいのね……
「……幸せだなって思ったの」
「僕も幸せだよ。ありがとう、僕を選んでくれて」



 しばらくまったりとベッドの上で話していた。というのもわたくし、足腰が立たなくて着替えすらまともにできなかったのよ……
 おかしいわ……前世ではこんなことなかったのに。それにこんなに心地いい肌のふれあいをしたことがなかったし、イったこともなかったもの……。
 ご令嬢って思ったよりも運動量が少なくて体力がなかったのも関係あるのかしら……
 初めての時は痛みは残っていて意識を失うなんてことはなかったし、そんなに気持ちいいなんて思ったこともなかったし、むしろ苦痛すらあったのに。
 今はただジンジンと響く感じとナカにまだ何かあるんじゃないかってくらいの異物感があって、その度に脳裏に昨日の記憶が蘇ってしまう。
 お互いの気持ちがあったからこそこんなに満足感があるのかしら。
「そうだ、このまま王宮へ行こうか。もう部屋は準備してあるから何もいらないよ。一緒に住もう」
「え……?」
「部屋はもちろん僕の隣だから安心していいよ」
 話が早すぎてついていけないわ。つまりは同棲ということ? というかアーティの隣の部屋って、王太子妃の部屋よね? それって安心できるの……?
 そんなことを考えていたけれど、どうやらすでに伯母様たちには話はついているみたい。
「本当はこっちにきてすぐに王宮に連れて行こうとしたんだけど、ネルトにとめられたんだ。もうちょっと落ち着いてからにしろって。その間に誰かにアリアのことを掻っ攫われたらどうするって言ったんだけど聞いてもらえなかった……」
 しょんぼり肩を落としながらそんなことを言うアーティがなんだか面白くて笑ってしまう。なんだか身体をつなげてからお互いに本音を話すようになっていて、今まではスマートなところしか見たことがなかったからなんだか嬉しくて。
 意外な一面を自分の目で確認できてわたくしも遠慮なく話を聞くことができるようになったの。
 なぜかはわからないけれど、不思議ね。きっとアーティはあのプレゼントを渡した時に素が出てしまってタガが外れてしまったのがきっかけじゃないかと思うけれど。
 そんな彼に引っ張られてわたくしも自然と接することができるようになったのね、きっと。
「でも、ネルトは正しかったと思うわ。あのまま王宮に連れて行かれてたとしたら、きっとこんなふうに自然と接することが難しかったかもしれないもの……」
「……いうこと聞いておいてよかった」
「ふふ。わたくしにも聞いてくださいな。だってわたくしとアーティのことでしょう?」
「そうだね」
 もうふれあいも恥ずかしさはなくなっていて、王妃様はすごいなって思ってしまったわ。わたくしとエリザベス様だけでは思いつかなかったもの。
 あ、そうだ。王宮にいったらエリザベス様にもお話ししないといけないわね。
「さて、そろそろ立てる?」
「うん、大丈夫そう」
 ちょっとよたよたするけれど、彼も着替えを手伝ってくれたわ。というか服着せるの上手すぎないかしら……
 そのまま馬車まで横抱きで連れて行かれたわ……誰にも会わなかったけれど、流石に誰かに見られるのは慣れの問題ではないでしょう?
 馬車の中はクッションで溢れていて、振動が響くたびに気遣ってくれて、あまりに心配するから大丈夫と言ったんだけれど、辞めてもらえなかったわ……
  
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

可愛すぎてつらい

羽鳥むぅ
恋愛
無表情で無口な「氷伯爵」と呼ばれているフレッドに嫁いできたチェルシーは彼との関係を諦めている。 初めは仲良くできるよう努めていたが、素っ気ない態度に諦めたのだ。それからは特に不満も楽しみもない淡々とした日々を過ごす。 初恋も知らないチェルシーはいつか誰かと恋愛したい。それは相手はフレッドでなくても構わない。どうせ彼もチェルシーのことなんてなんとも思っていないのだから。 しかしある日、拾ったメモを見て彼の新しい一面を知りたくなってしまう。 *** なんちゃって西洋風です。実際の西洋の時代背景や生活様式とは異なることがあります。ご容赦ください。 ムーンさんでも同じものを投稿しています。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

ワケあってこっそり歩いていた王宮で愛妾にされました。

しゃーりん
恋愛
ルーチェは夫を亡くして実家に戻り、気持ち的に肩身の狭い思いをしていた。 そこに、王宮から仕事を依頼したいと言われ、実家から出られるのであればと安易に引き受けてしまった。 王宮を訪れたルーチェに指示された仕事とは、第二王子殿下の閨教育だった。 断りきれず、ルーチェは一度限りという条件で了承することになった。 閨教育の夜、第二王子殿下のもとへ向かう途中のルーチェを連れ去ったのは王太子殿下で…… ルーチェを逃がさないように愛妾にした王太子殿下のお話です。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

処理中です...