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 あれからは特に変わりない日々を過ごしていた。オリーブにこちらでもお化粧品を売ってもらえないかとお手紙を書いたら、久々に会いにきてくれたの。元ライラの侍女であったハンナはどうやら商売に関する才があったみたいで、オリーブの足となってあちこち回ってくれているみたい。
 今回のこのお話を受けて、オルビス国の支部長候補として一緒に来てくれたの。彼女は開口一番「天職を見つける機会をいただいてありがとうございますっ」って言ってくれて、嬉しかったわ。
 伯母様は話し合いの場を設けてくださって、一緒に参加してくれているの。オルビス国の情報も教えてくれて、とてもスムーズに話がまとまったわ。
 あとはアーティに話を持っていけば、すぐにでもこちらで商品を売ることができるみたい。うまくいきそうでよかったわ。
「あ、明日アーサーが来るみたいよ。その時お話通して頂戴な」
「わかりました。話してみますね。オリーブもハンナもわざわざこちらまで来てくれてありがとう」
 あ、明日彼が来るのね……
 心の準備をしておかないと。というかどうやって準備をしていいかわからないわっ。とりあえず、寝なきゃ……



 まあ、案の定眠れなくて瞼を擦っているけれど、カリンは優秀なので手早く用意してくれる。なんだか久々にちゃんとしたドレスをきたわね……
 コルセット窮屈だわ。ちょっと太ったかしら……
 そんなこんなでお出迎えがきて馬車へ。彼への胸の高鳴りと緊張でもうバクバク言ってるわ。これ、心臓止まらないわよね……?
 若干頭がふらふらするけれど、頑張らなくちゃ。ちなみにお化粧品のことは馬車の中ではいえなかったわ……
 アーティに連れられ、謁見の間へと向かう。途中すれ違った方々にキラキラとした羨望の眼差しを向けられ、首を傾げてしまったけれど。イーリス国にいた時と同じなのよね。アーティももちろん王太子殿下なのでそうだったんだけれど、それとはまた別で、明らかにわたくしをみているのよね。
 一体何かしら……
 そして仰々しく騎士の方が扉を開けてくださって、謁見の間へと通される。
 挨拶を済ませ、本題へ入るのだけれど、チラホラとみたことのある顔が見えて気になってしまったわ。どこかであったと思うのだけれど、どこかしら?
「ようこそ我がオルビス国へ。そして我が息子アーサーとの婚約を承諾してもらったと聞いているが、あっているかな?」
「はい、相違ありません」
「ならばすぐにでも婚約披露の夜会でも開くか。王妃よ、頼んだぞ」
「わかりました。アリアさん、この国へ来て、アーサーを選んでくれてありがとう。後でぜひ向こうでのお話も聞きたいわ」
「畏れ多い御言葉でございます」
「そんなにかしこまらないで頂戴な。これからも末長くお世話になるんだもの。よろしくね」
 思ったよりも国王陛下も王妃様も親しみやすい方だったわ。それにすんなり婚約も決まってしまってびっくりよ。普通は隣国のしかも伯爵令嬢なんて怪しんで当然なのに。
 いろいろと寛容な国なのかしら……
 廊下を歩いていると向こうから青髪の可愛い女の子が歩いてくる。ツカツカと一直線でわたくしたちに向かってきたその子は、開口一番からなかなかだったわ……
「あなたがお兄様の婚約者? まあまあね」
 うん、短い言葉だけれどツッコミどころが満載ね……
 お兄様ということは王女様かしら。とても可愛らしいかただけれど、言葉が強い方ね。
「エリーゼ、お前挨拶くらいまともにできないのかな?」
 アーティはちょっと怖い顔で女の子を見ているけれど、女の子の方はなんだかむくれているわ……
 どういう子なのか全く掴めない……
「ふんっ。お兄様に言われても全く怖くないわっ」
「レオンに言い付けるぞ」
「や、やめてよっ!」
 レオンって、確かイアン元殿下のお兄様の王太子殿下のお名前と同じね。もしかして、王太子殿下が言っていた可愛い婚約者って……
「あの、もしかしてイーリス国の王太子殿下のご婚約者のエリー様で?」
「な、なんであなたがそんなこと知ってるのよっ。しかも愛称まで……」
「わたくし、イーリス国第三王子の婚約者をしておりましたアリアと申します。今はマーリス伯爵家の養子にしていただきましたけれど……」
「あっ、あなたやっぱり! ちょっと後できなさいな。お話がありますの」
「こらエリーゼ。今日はもうだめだ。後でな」
「……わかりましたわ」
 実は王太子殿下から彼女の話は聞いていたのよね。あまり言葉は素直じゃないけれど、態度はわかりやすいって惚気ていたわ……
 完璧なまでの王太子殿下も少し変わっているところがあるのに驚いたものよ。
 素直じゃないところがまたいいみたいね。前世でいうツンデレに属する方みたい。リアルで見たのは初めてよ。仲良くなれるかしら。
 さっそく次の日、お茶会に呼ばれたので、参加することにしたの。
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