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別荘に着くとなんだか外からでもわかるくらい騒がしい。誰かいるのかしら……?
首を傾げながらもアーティに連れられて、中にはいる。そこにいたのは、国王陛下、王妃様、王太子殿下、ブライアンにオリーブ、それに秘書官の方がいて何やらパーティ状態。
一体、何が起こっているの……?
「アリア、とりあえず向こうの部屋で一と組ずつ話してきて。みんなアリアに言いたいことがあるといって来てくれたから」
言いたいことって何かしら……こんなにも集まっているなんて、わたくし、どうしていいかわからないわ。わたくしの不安に気づいたアーティは頭を撫でる。どうして撫でられているのかわからないけれど、少し落ち着いたみたい。
部屋で待っていると、国王陛下と王妃様が入ってくる。慌てて挨拶しようとしたわたくしを制して楽にしていいといってくださったので、ソファに向かい合わせに座った。
「あ、あの……」
「我が愚息が申し訳なかった」
深々と陛下に頭を下げられて慌ててしまう。いやいや国王たるものそんないち伯爵令嬢に、あ、今除籍されたから平民なんですけれど……
「顔をおあげください。わたくしは大丈夫ですので……」
「いや、これは私がいたらないことが原因でもある。そなたがあの愚息が何も言わず仕事をしてくれていることに甘えすぎていて、ここまで来てしまった。こちらとしても優秀な人材を手放したくないと、そなたの気持ちを無視してしまっていた」
「いえ、なんだかんだ言って楽しかったですし、自分のためにもなりましたから」
「それでも、我々の責任は重大であると判断した。それから愚息に関しても。愚息に関しては王位継承権の剥奪、一生涯炭鉱での労働を命じるつもりだ。そなたが極刑だけはというのでな。まあ、表向きは病気療養ということにさせてもらうが」
「まあ……」
王家の醜聞にもつながるものね。その判断は正しいと思うわ。それに極刑をわたくしが望まなかったのは優しいからじゃないのよ。人間死んだら終わりじゃない? それよりだったら、悔い改める時間がたくさんあった方が本人にとっても辛いと思うの。
使い込んだお金の返済もしないといけないし。死んでしまっては何もできないものね。
「アリアさん、私アリアさんのお陰で変われたの。王宮内で身分の低い妃ということで随分肩身の狭い思いをしてきたの。それがアリアさんのおかげで自分ができることを見つけられて、やっと周りからも認めてもらえたのよ。本当に嬉しかったわ」
「確かにきっかけを与えたのはわたくしかもしれません。でも、それを生かすも殺すもその人次第です。王妃様はご自分で変えていったのですよ」
瞳に涙を溜めながらわたくしの手を握り、頻りに「ありがとう」と呟く王妃様とその肩を抱く陛下。結構前から色々溜まっていて、その矛先がイアン殿下に対する過保護につながってしまったのかしらね。
人間誰でも間違いは犯すもの。それからどうやって立ち直れるかが大事になっていくわ。でも、このお二人なら大丈夫ね。
「いい国にしてもらえることを願っています。きっとできますよ」
にこりと微笑みあって、陛下と王妃様は深々と頭を下げる。こちらも深々と頭を下げ、「お世話になりました。ありがとうございます」と告げる。
入れ替わりで入ってきたのは王太子殿下と秘書官の方だった。秘書官の方まできてくれるなんて嬉しいわ。
「この度は愚弟のことで迷惑をかけ、申し訳ない。私からも言わせてほしい。それから、あなたがあまりにも優秀でそれに甘えて今まで頼ってしまっていたことも含めてこちらの都合なのは間違いない」
もう、謝ってもらうの苦手なのですけれど……少なくともわたくしも楽しかったし良い経験ができたので、気にしないでいただきたいと思うのだけれど。
「こちらこそ。おかげ様で貴重な体験をさせていただきましたわ。得るものも大きかったのです。お気になさらずに」
「そう言ってもらえてありがたいよ。そうだ、君の妹のことなんだけどね、間接的とはいえ王家の予算を使い尽くしたこと、学園のパーティに無断で参加していたこと、王家所有の別荘に無断で入ったことで、離島の修道院での生涯労働になったよ。ちなみに貢がれたものは全て回収したから」
さすが王太子殿下。仕事が早いわ……
「そうそう、向こうに行ったら私の婚約者がいるから、仲良くしてね」
「あら、お話に伺っていた方ですか? わたくしなんかが会えるのかしら」
「大丈夫。絶対会えるよ。それじゃあお元気で。それからこれからもいろいろ頼むよ」
最後の言葉と婚約者のことが気になるけれど、円満に終わってよかったわ。
「私が伝えたいのは一つです」
秘書官の方が一歩前に出て深々と礼をする。驚いてしまったけれど上がった顔を見るととても嬉しそうで。
「私たちのことまで気にしていただいて感謝しかありません。あなたのおかげで王宮内も外も色々変わりました。良い方向に進んでいると皆が喜んでおります。僭越ながら私が代表してお伝えさせていただきます。本当にありがとうございました」
心のこもった言葉に胸がジーンとする。わたくしはただただ与えられた仕事をして、気がついたことを口にしていただけなのにこんなにも慕ってもらえるなんて……
本当に嬉しいわ。
「こちらこそありがとう。あなたが仕事を丁寧に教えてくれたおかげでここまで来れたのよ?」
「私には勿体無いお言葉です。これから向こうへ行っても、そのままのアリア様でいてくださいね」
「あなたも、体に気をつけてってみんなにも伝えてくれる?」
笑顔でお別れをする。
なんだか感動しちゃったわ。前世の知識もこんなにも人の役に立ってくれて嬉しい。これからも誰かの役に立てたらいいわね。
別荘に着くとなんだか外からでもわかるくらい騒がしい。誰かいるのかしら……?
首を傾げながらもアーティに連れられて、中にはいる。そこにいたのは、国王陛下、王妃様、王太子殿下、ブライアンにオリーブ、それに秘書官の方がいて何やらパーティ状態。
一体、何が起こっているの……?
「アリア、とりあえず向こうの部屋で一と組ずつ話してきて。みんなアリアに言いたいことがあるといって来てくれたから」
言いたいことって何かしら……こんなにも集まっているなんて、わたくし、どうしていいかわからないわ。わたくしの不安に気づいたアーティは頭を撫でる。どうして撫でられているのかわからないけれど、少し落ち着いたみたい。
部屋で待っていると、国王陛下と王妃様が入ってくる。慌てて挨拶しようとしたわたくしを制して楽にしていいといってくださったので、ソファに向かい合わせに座った。
「あ、あの……」
「我が愚息が申し訳なかった」
深々と陛下に頭を下げられて慌ててしまう。いやいや国王たるものそんないち伯爵令嬢に、あ、今除籍されたから平民なんですけれど……
「顔をおあげください。わたくしは大丈夫ですので……」
「いや、これは私がいたらないことが原因でもある。そなたがあの愚息が何も言わず仕事をしてくれていることに甘えすぎていて、ここまで来てしまった。こちらとしても優秀な人材を手放したくないと、そなたの気持ちを無視してしまっていた」
「いえ、なんだかんだ言って楽しかったですし、自分のためにもなりましたから」
「それでも、我々の責任は重大であると判断した。それから愚息に関しても。愚息に関しては王位継承権の剥奪、一生涯炭鉱での労働を命じるつもりだ。そなたが極刑だけはというのでな。まあ、表向きは病気療養ということにさせてもらうが」
「まあ……」
王家の醜聞にもつながるものね。その判断は正しいと思うわ。それに極刑をわたくしが望まなかったのは優しいからじゃないのよ。人間死んだら終わりじゃない? それよりだったら、悔い改める時間がたくさんあった方が本人にとっても辛いと思うの。
使い込んだお金の返済もしないといけないし。死んでしまっては何もできないものね。
「アリアさん、私アリアさんのお陰で変われたの。王宮内で身分の低い妃ということで随分肩身の狭い思いをしてきたの。それがアリアさんのおかげで自分ができることを見つけられて、やっと周りからも認めてもらえたのよ。本当に嬉しかったわ」
「確かにきっかけを与えたのはわたくしかもしれません。でも、それを生かすも殺すもその人次第です。王妃様はご自分で変えていったのですよ」
瞳に涙を溜めながらわたくしの手を握り、頻りに「ありがとう」と呟く王妃様とその肩を抱く陛下。結構前から色々溜まっていて、その矛先がイアン殿下に対する過保護につながってしまったのかしらね。
人間誰でも間違いは犯すもの。それからどうやって立ち直れるかが大事になっていくわ。でも、このお二人なら大丈夫ね。
「いい国にしてもらえることを願っています。きっとできますよ」
にこりと微笑みあって、陛下と王妃様は深々と頭を下げる。こちらも深々と頭を下げ、「お世話になりました。ありがとうございます」と告げる。
入れ替わりで入ってきたのは王太子殿下と秘書官の方だった。秘書官の方まできてくれるなんて嬉しいわ。
「この度は愚弟のことで迷惑をかけ、申し訳ない。私からも言わせてほしい。それから、あなたがあまりにも優秀でそれに甘えて今まで頼ってしまっていたことも含めてこちらの都合なのは間違いない」
もう、謝ってもらうの苦手なのですけれど……少なくともわたくしも楽しかったし良い経験ができたので、気にしないでいただきたいと思うのだけれど。
「こちらこそ。おかげ様で貴重な体験をさせていただきましたわ。得るものも大きかったのです。お気になさらずに」
「そう言ってもらえてありがたいよ。そうだ、君の妹のことなんだけどね、間接的とはいえ王家の予算を使い尽くしたこと、学園のパーティに無断で参加していたこと、王家所有の別荘に無断で入ったことで、離島の修道院での生涯労働になったよ。ちなみに貢がれたものは全て回収したから」
さすが王太子殿下。仕事が早いわ……
「そうそう、向こうに行ったら私の婚約者がいるから、仲良くしてね」
「あら、お話に伺っていた方ですか? わたくしなんかが会えるのかしら」
「大丈夫。絶対会えるよ。それじゃあお元気で。それからこれからもいろいろ頼むよ」
最後の言葉と婚約者のことが気になるけれど、円満に終わってよかったわ。
「私が伝えたいのは一つです」
秘書官の方が一歩前に出て深々と礼をする。驚いてしまったけれど上がった顔を見るととても嬉しそうで。
「私たちのことまで気にしていただいて感謝しかありません。あなたのおかげで王宮内も外も色々変わりました。良い方向に進んでいると皆が喜んでおります。僭越ながら私が代表してお伝えさせていただきます。本当にありがとうございました」
心のこもった言葉に胸がジーンとする。わたくしはただただ与えられた仕事をして、気がついたことを口にしていただけなのにこんなにも慕ってもらえるなんて……
本当に嬉しいわ。
「こちらこそありがとう。あなたが仕事を丁寧に教えてくれたおかげでここまで来れたのよ?」
「私には勿体無いお言葉です。これから向こうへ行っても、そのままのアリア様でいてくださいね」
「あなたも、体に気をつけてってみんなにも伝えてくれる?」
笑顔でお別れをする。
なんだか感動しちゃったわ。前世の知識もこんなにも人の役に立ってくれて嬉しい。これからも誰かの役に立てたらいいわね。
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