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 そしてついに年度末のパーティが学園で開催される日。皆ドレスで着飾っているわ。わたくしはといえば……
「似合ってるね」
「ドレス、ありがとうございます」
 そう、なぜかアーティにドレスを贈られてしまい、着る羽目になってしまった。青色にたくさんの刺繍が施されていて、茶色に青の混じったボルダーオパールと呼ばれる綺麗なイヤリング。
 全身アーティの色で染まってしまっている。
 この世界では、仲の良い婚約者や夫婦でよくみる光景で、まさかわたくしがこんなことになるなんて思わなかったわ……
 それにこのパーティでだけはアーティは得意の? 七三はやめていて、素を晒している。周りはいろめきだっているわ……
 わかる、わかるわよ。大変見目麗しいものね。
「いいよ。すごく似合ってる」
 キラキラとした笑顔を向けられて思わず顔が赤くなる。これで赤くならないご令嬢なんていないよね? ほら、近くのご令嬢方が倒れてるわっ。
 アーティに手を取られて、会場内へすすむ。学園の生徒のみのはずなのに、みてはいけないものがいるわね。
 この場に勝手に連れてくるなんて非常識よ。教師もとめなかったのかしら……
 ツカツカと二人揃って前へ出てくる。
 その顔ったら、なんと言ったらいいのかしら。勝ち誇っているというか、なんと言うか……
「アリア、貴様との婚約を破棄するっ」
「どうぞ」
「っ、貴様の今までの所業、王家に対する反逆罪にあたる!」
「具体的にご説明願います」
「まずは、オレとライラのために割り当てられた予算の使い込み」
 使い込んだのはあなたですし、ライラに予算なんて割り当てられていないのですが?
「こちら、皆様にお配りしましょうか? イアン殿下に割り当てられた予算と婚約者であったわたくしに割り当てられた予算の使い道、全てライラに渡っていますわね。こちら、王太子殿下とも擦り合わせ済みですのよ」
「ぐっ、オレがライラに送ったドレスを破っただろう」
「そちら以前申し上げましたとおり、ライラが自分でハサミでやったのを目撃しているものがいるとお伝えしたでしょう?」
 もうボケているのかしら。この二つは既にご本人にお伝えしているのですが?
「そ、それからっ、ライラに手をあげた件っ」
「それはいつのお話で?」
「オレたちが別荘へ行った日だ」
「あの日はむしろわたくしが怪我をしたのですが。手を挙げられたのはわたくしの方ですわ。証拠もございますので既に方々へ報告済みです」
 証拠もバッチリで既にアーティの手によって王家へ提出済みだ。
「っく……」
「わたくしから一つ確認いたします。婚約は破棄でよろしいですね」
「ああ、貴様なんかと結婚なんでできるかっ」
「そうですか。それだけ聞ければ結構です。それでは」
彼らに背を向け歩き出そうとするも、呼び止められる。まだ何かあるのかしら……
「貴様、無断で学園を休んでいるな。オレもちゃんと通っているのになぜ」
「はあ、あなたの脳の年齢は何歳でしょうか。ご説明いたしたでしょう。あなたがちっともご自分のお仕事をなさらないから代わりにわたくしがお仕事をしていたと。王妃様からも陛下からも許可をいただいております」
「そ、それでは、兄上の予算について……」
「それ以上はあなたの名誉のために言わない方がよろしいかと。こちらはきちんと証拠は押さえて王太子殿下、陛下、王妃様にお伝えしております」
 もう何もいえなくなったようだ。ブルブルと震えている彼を無視してわたくしは屋敷へ向かった。
 そこにはなぜか勝ち誇った顔のお母様と気まずそうな顔をしたお父様。
「アリア、お前を除籍する。修道院へいけ」
「やっと邪魔者がいなくなったわ。これでライラは王子妃になれるのね」
「はい、今すぐ行きます」
 高笑いしているけれど、多分ライラは王子妃にはなれないわよ。それどころか命があればいいほうね。王子なんていなくなるでしょうし、あなたたちも離縁されて放り出されるもの。
「お母様、お父様、一つだけ」
「何よっ」
「自分の行いは必ず自分に返ってくるのですよ。お気をつけて」
 わたくしの家族としての最後の言葉、お母様は全く意味がわかっていない様子だったけれどお父様は俯いていたわ。
 わかってくれればいいのよ。
 そしてわたくしは侍女のカリンとマルスの馬車に乗り込む。
 ふう、と一息つくと、なぜか隣にはアーティがいて驚いたわ……
「びっくりしたわ……」
「はは。途中まではこの馬車で、君の別荘からは違う馬車でいくよ」
「どちらに……?」
「大丈夫。君が安心できるところだから」
 意味深な彼の言葉に首を傾げながら馬車に揺られていた。
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