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玄関に向かうと既にアーティが仁王立ちで立ち塞がっている。なんだかよく漫画であるゴゴゴって効果音がつきそうなくらい、空気が震えているというかなんというか……
うちの使用人たちが萎縮してしまっているじゃない。
「どうしたの?」
平然を装ってみるけれど、ダメみたい。顔は笑っているんだけれど、目が笑っていないわ……
「その頬の傷は後からね。さ、行こう」
手を差し出され、そのままわたくしは手を重ねる。その仕草はとても優雅なのに、顔が怖いわ。
もう大人しく馬車に乗り込む。ブライアンもオリーブも心配そうな表情をしていたけれど、わたくしの隣に座っている彼の表情に怯えた後、憐れむような視線を送ってくれたわ……
今日は久しぶりに自分で買った別荘へ向かっている。そこで、お父様と話をすることにしたの。なぜ別荘かといえば、あの母娘にバレないようにするためなのよね。
別荘についてからは、ブライアンとオリーブは各々の部屋へ向かった。なぜか彼はわたくしの横に座っているけれど。
まあ、言っても無駄な気がするからそのままにしておくけれど。
「アリア、久しぶりだな。待たせたか?」
「いえ、今きたところです」
お父様もお話を始めてからわたくしに謝ってくれていた。口ではわたくしのことを悪く言っていたけれど、わたくしの分のお小遣いは毎月必ず入れておいてくれていたのよね。
そういうところはいいところだど思うの。
「それで話というのは?」
「わたくし、近々婚約破棄されると思いますの。ですから、お父様にお願いがありまして。破棄されましたらわたくしを勘当の上表面上は修道院へ送ってくださいませ」
「何? どういうことだ。そんなことはできん」
「わたくし、あの母娘とは縁を切りたいのです。それから不倫なさっていますよね? 離縁したらそちらと結婚するのでしょう? 子供もいるようですし」
「な、なぜそれを……」
そう、仕事ができることと金銭的に差別をしないことは尊敬するけれど、浮気するところが生理的に無理なのよ。できればお父様とも縁を切っておきたいところね。後でゴタゴタに巻き込まれたくないし。
大体不倫をした末の結婚で幸せになれるなんて夢物語だわ。みたことないもの。
そんなのに巻き込まれたくもないし。
「このことは最後まであの母娘に黙っておいて差し上げるわ。絶縁は絶対。追い出すことも絶対です」
「わ、わかった……」
「あの二人と離れられたらまた普通に生活することはできるでしょう。金銭の援助もそこまでということで」
「あ、ああ……すまない」
よし、これで全ての準備が整ったわね。これでお父様とも話す必要もなくなるわ。本当はとっても気持ち悪くて我慢するのが大変なのよね……
浮気性アレルギーでもあるのかしら。
お父様が帰った後で、彼はわたくしの側にぴったりくっつく。ちょっとこの距離はよろしくないんじゃあ、って思って彼の顔色を伺うけれど、相変わらず目が笑っていない。
「使用人が親切に教えてくれたけど、約束、破ったね?」
「うっ、ごめんなさい」
「はあぁ。自分を大事にしてって言ったよね? 心配したの僕だけじゃなかったでしょう?」
「う、はい……」
「もうダメだよ。次やったら……」
う、一体何をされるんだろう……
「次の時のお楽しみね。僕的にはどっちもお得だからどちらを選んでもいいけど」
ああ、これはきっと大変なことになるやつだわ……大人しくしてなくちゃ。
「ごめんなさい、もうしません」
「ふふ。本当に気をつけてね」
びくびくしていると、この間お世話になった彼の騎士の人? がこそりと彼に何かを告げている。
「なるほどね。どうやらあの殿下たち王家の別荘に行ったみたいだよ」
「え? 使用申請なんてなかったと思いますけど……」
「無断使用だね。そこで今度の学園でのパーティで何か企んでいるらしい。君の話通りのことが起こるのかな?」
「その可能性が高いでしょうね。さて、オリーブとも話をつけないと」
オリーブを呼びにいってもらい、話をする。話し合いの題材は化粧品事業についてとこの別荘について。
本当はここにいようかとも思ったのだけれど、父に場所はバレているし面倒になってしまったのだ。それにアーティが何か考えてくれているみたい。だとすると、この別荘はオリーブにあげた方が有効活用できるかなって思っているのよね。
「この別荘はオリーブへお願いするわね」
「そう……事業の方は? どうするの」
「そうねぇ。どうしようかしら。落ち着くまではお休みかしら」
「続けられる環境整えるよ? そこは気にしなくて大丈夫」
なぜ彼がそう断言できるのかはわからないけれど、彼は多分仕事はできる男だからまあ、心配はないんでしょうね。
「じゃあ、とりあえずはそれでいいかしらね」
みんなで頷き合う。
これで全て整ったわね。
玄関に向かうと既にアーティが仁王立ちで立ち塞がっている。なんだかよく漫画であるゴゴゴって効果音がつきそうなくらい、空気が震えているというかなんというか……
うちの使用人たちが萎縮してしまっているじゃない。
「どうしたの?」
平然を装ってみるけれど、ダメみたい。顔は笑っているんだけれど、目が笑っていないわ……
「その頬の傷は後からね。さ、行こう」
手を差し出され、そのままわたくしは手を重ねる。その仕草はとても優雅なのに、顔が怖いわ。
もう大人しく馬車に乗り込む。ブライアンもオリーブも心配そうな表情をしていたけれど、わたくしの隣に座っている彼の表情に怯えた後、憐れむような視線を送ってくれたわ……
今日は久しぶりに自分で買った別荘へ向かっている。そこで、お父様と話をすることにしたの。なぜ別荘かといえば、あの母娘にバレないようにするためなのよね。
別荘についてからは、ブライアンとオリーブは各々の部屋へ向かった。なぜか彼はわたくしの横に座っているけれど。
まあ、言っても無駄な気がするからそのままにしておくけれど。
「アリア、久しぶりだな。待たせたか?」
「いえ、今きたところです」
お父様もお話を始めてからわたくしに謝ってくれていた。口ではわたくしのことを悪く言っていたけれど、わたくしの分のお小遣いは毎月必ず入れておいてくれていたのよね。
そういうところはいいところだど思うの。
「それで話というのは?」
「わたくし、近々婚約破棄されると思いますの。ですから、お父様にお願いがありまして。破棄されましたらわたくしを勘当の上表面上は修道院へ送ってくださいませ」
「何? どういうことだ。そんなことはできん」
「わたくし、あの母娘とは縁を切りたいのです。それから不倫なさっていますよね? 離縁したらそちらと結婚するのでしょう? 子供もいるようですし」
「な、なぜそれを……」
そう、仕事ができることと金銭的に差別をしないことは尊敬するけれど、浮気するところが生理的に無理なのよ。できればお父様とも縁を切っておきたいところね。後でゴタゴタに巻き込まれたくないし。
大体不倫をした末の結婚で幸せになれるなんて夢物語だわ。みたことないもの。
そんなのに巻き込まれたくもないし。
「このことは最後まであの母娘に黙っておいて差し上げるわ。絶縁は絶対。追い出すことも絶対です」
「わ、わかった……」
「あの二人と離れられたらまた普通に生活することはできるでしょう。金銭の援助もそこまでということで」
「あ、ああ……すまない」
よし、これで全ての準備が整ったわね。これでお父様とも話す必要もなくなるわ。本当はとっても気持ち悪くて我慢するのが大変なのよね……
浮気性アレルギーでもあるのかしら。
お父様が帰った後で、彼はわたくしの側にぴったりくっつく。ちょっとこの距離はよろしくないんじゃあ、って思って彼の顔色を伺うけれど、相変わらず目が笑っていない。
「使用人が親切に教えてくれたけど、約束、破ったね?」
「うっ、ごめんなさい」
「はあぁ。自分を大事にしてって言ったよね? 心配したの僕だけじゃなかったでしょう?」
「う、はい……」
「もうダメだよ。次やったら……」
う、一体何をされるんだろう……
「次の時のお楽しみね。僕的にはどっちもお得だからどちらを選んでもいいけど」
ああ、これはきっと大変なことになるやつだわ……大人しくしてなくちゃ。
「ごめんなさい、もうしません」
「ふふ。本当に気をつけてね」
びくびくしていると、この間お世話になった彼の騎士の人? がこそりと彼に何かを告げている。
「なるほどね。どうやらあの殿下たち王家の別荘に行ったみたいだよ」
「え? 使用申請なんてなかったと思いますけど……」
「無断使用だね。そこで今度の学園でのパーティで何か企んでいるらしい。君の話通りのことが起こるのかな?」
「その可能性が高いでしょうね。さて、オリーブとも話をつけないと」
オリーブを呼びにいってもらい、話をする。話し合いの題材は化粧品事業についてとこの別荘について。
本当はここにいようかとも思ったのだけれど、父に場所はバレているし面倒になってしまったのだ。それにアーティが何か考えてくれているみたい。だとすると、この別荘はオリーブにあげた方が有効活用できるかなって思っているのよね。
「この別荘はオリーブへお願いするわね」
「そう……事業の方は? どうするの」
「そうねぇ。どうしようかしら。落ち着くまではお休みかしら」
「続けられる環境整えるよ? そこは気にしなくて大丈夫」
なぜ彼がそう断言できるのかはわからないけれど、彼は多分仕事はできる男だからまあ、心配はないんでしょうね。
「じゃあ、とりあえずはそれでいいかしらね」
みんなで頷き合う。
これで全て整ったわね。
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