上 下
15 / 49

15

しおりを挟む
15
 次の日、今日はオリーブの屋敷でお茶会となった。わたくしの屋敷でもよかったんだけれど、お邪魔虫が二人乱入して来る可能性があったので、無理を言ってお願いしたのよね。
 今日の参加者は、わたくしとオリーブ、それにブライアン。まあ、いつもの面子ね。
「そういえばオリーブ、シアバターを使った保湿クリームを作って見たのよ。ちょっとシアバターを作るのが手間がかかるから少しの量しかないのだけれど……」
「わあ! ぜひ使わせてもらえる? それからお店にお試し用としておいてみるのもいいね」
「その辺はお任せするわ。一応、シアバターの生産さえできればすぐにいけると思うのよ」
 目をキラキラ輝かせながらメモ帳を取り出すオリーブは流石ね。何か新しいアイディアはないかと常にメモ帳とペンは持ち歩いているみたいなのよね。さすがとしかいえないわ。
 そこからわたくしは保湿クリームの作り方をオリーブに教える。周りにいる侍女やメイドたちも興味があるのか聞き耳を立てているわ……
「あなたたちも試してみます?少しだけですけれど……」
「いいんですかっ? ぜひ!」
 目をキラキラさせる彼女たちをみていると微笑ましいわ。こんなにも興味を持っていただけるのは嬉しいわね。
 まあ、使用人といえば家事をするから、肌荒れが気になるものね。わかるわぁ。わたくしも前世では洗剤や水でよく手荒れを起こしていたもの。
 まだまだ需要がありそうね。


「ところでアリア。俺まで呼んだってことはなんか用事があったんじゃないか?」
 ああそうだったわ。わたくしの目的の一つをすっかり忘れてたわ。こっちが本題のようなものだったのに。
「そうなのよ。あなた王宮へはたまに行っているのよね?」
「そうだね。アリアほどじゃないけど」
 ふふ。二日に一回は遅くまでいるものね。そう言われてみれば学園に通っている段階でこんなにも王宮でお仕事している人なんて王族以外いないわよね。
 はあぁ。思い出したらため息が勝手に出るようになってしまったわ……
「王太子殿下と、わたくしを繋げたりできない?」
「王太子殿下……? なんで? 俺一応イアン殿下の同級生だからって理由で行ってるから会ったこともないかも」
「そうよねぇ……」
「アリアの方が近いんじゃないか?」
 まあ、そうよね。王宮にいく機会が多いし、弟の婚約者だものねぇ。わたくしがいくのが確実か。ちょっとは楽できないかと思ったけれどやっぱりダメね。
 はあぁぁ。なんで伯爵令嬢のわたくしがここまでしなければならないいのでしょうね。
「まあ、殿下がらみなんだろうけど……お疲れさん」
「本当よ。変わっていただきたいくらいなんだけれど」
「いやいや、俺じゃあ殿下を諌めるなんて到底無理だね。人の話聞かねえし、最近はだいぶ距離取られてるしな」
「そうなの?」
 まあ意外。男性同士ってあまり細かいこととか気にせずつるむイメージがあるんだけれど、そうでもないのね。よほどひどいことをしていてもなんだかんだ言って仲良くしている感じよね。
 前世の男の浮気も自分で気づいたものもあるけれど、基本お友達からのリークがほとんどで、リークしたにも関わらずずっと仲良くしているもんだからそんなもんなのかなって思っていたのよね。
「他の奴らももう側を離れてるよ。王宮へ行けば仕事してないだの婚約者がいるのに遊び歩いてるだの嫌でも聞こえてくるからな」
「ああ、なるほどね」
 まあ、そんな話を聞いても彼に仕えたいなんて思う人はまずいないでしょうね。一部の貴族は彼を傀儡の王子にしようとしているみたいだけれど、優秀な王太子殿下や第二王子がいるもの。それは無理でしょうね。
 少しづつその勢力も削がれているみたいだし、きっと王太子殿下や第二王子に処理されているんでしょうね。

「それと、アリアに関する噂もたくさん聞くぞ。知りたい?」
「……どうせ殿下に相手にされない婚約者だとでも言われているんでしょう?」
「それが違うんだよ。あの方こそ王族にふさわしい。我々のことも考えてくださる偉大な方だって、みんなアリアのことを崇めてたぞ。一体何をしたんだ?」
 そんなことになっているなんて知らなかったわ。なんだかすごいことになっているのね……
「わたくしはただ王妃様に物申しただけよ。不敬で婚約破棄にでもなったら万々歳と思って素直に思っていることを言っただけなんだけれど……」
 本当にそう。ただただ思っていることをぶつけただけなのよね。別にそれが通らなくても問題ないし、それで罰せられても構わないのよね。ちょっと時期が早まるだけで。
 こんなに仕事しているんだもの。処刑にはならないでしょうと思っての行動だったのよね。
 向こうは保守に走ったみたいだけど。
「さすがアリアだな。そういうしっかりしてるところ尊敬するわ」
「そうそう! アリアって行動力もあるし頭もいいし、本当すごいよねぇ」
「そんなに褒めても何も出ないわよ……」
「いや、本当にそう思ってるよ。アリアと友達になれてよかったよ」
 ここまで身近な人に褒められてしまうと流石のわたくしもちょっと照れてしまうわ。二人はくすくす笑っているし、もうっ。
「アリアはもっといい人と結婚できるよ」
「そうかしら? 可愛らしさのかけらもないし、容姿目当ての男としか今まで出会ったことがないのだけれど」
「本当にぃ? よおく考えてみてよっ」
 二人の物言いに小首を傾げながらどういうことか聞こうと思ったけれど、はぐらかされてしまったわ……
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます

富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。 5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。 15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。 初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。 よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

処理中です...