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「きゃーっ」
自宅に帰って早々、ライラの叫び声が聞こえる。
はあぁぁぁぁ
最近ため息をつく回数が以前にも増して増えている気がするわ。というかわたくしよりも早く帰ってきてたのね。
あの後すぐに解散したのかしら……? いつもは夕方までいるのにね。
彼女についていた侍女たちや屋敷の使用人たちが何事かと駆け寄る。もう、大きい声なんて出してはしたないったらないわ……
仕方なしにわたくしも声の発生源に向かうと、ボロボロのドレスを手に持ったライラがうずくまっている。
あら、あのドレス見たことがあるわね。確かこの間イアン殿下から送られてきたのよって自慢してたドレスじゃない。でも着ているところを見たことがないのよね。多分デザインが彼女好みじゃなかったんじゃないかと思っていたのだけれど、せっかくいただいたのに着ないであの状態なんて勿体無いわね。
「……お姉様でしょう」
「……は?」
あら、いけない。思わず素が出てしまったわ。人間理解できないことを言われると素が出てしまうものね。気をつけなくちゃ。
「イアン様と仲がいいライラに嫉妬したんでしょう⁈ こんなことするなんてひどい」
「まあ、アリア。あなたなんてことしてくれたのよっ」
「わたくし、ライラよりも早く家を出てさっき帰ってきたばかりですけれど」
「そんなわけないじゃない! こんなことするなんてお姉様くらいよっ」
はあぁぁぁ。なんなのかしらこの茶番。もう勝手にやっててちょうだい。
かかとを翻して去るわたくしに罵声を浴びせてきたけれど、いつものことだから知らないふりをしたわ。一体なんのためにこんなことをしたのかしらね。
自室に入る直前で腕を掴まれ、振り返るとものすごい形相のライラ。そんな顔してちゃ百年の恋も冷めちゃうわよってくらいあちこちに皺が寄っているわ……
それによく見たらかなりお化粧を塗りたくっているわね。肌荒れが隠しきれてないわ。こんなに若いのにお化粧品で隠すことしかしていないのかしらね。
「何かしら?」
「あなたがやったんでしょう! 正直に言いなさいよっ」
「はぁ。やっていないわよ。それはあなたが一番わかっているでしょう?」
「いいえっ。絶対お姉様よっ。じゃなきゃこんなことする人なんてっ」
カリンがわたくしの耳元で囁く。なるほどね。もう自分の侍女にすら見限られているじゃない。
「あなたがそのドレスを自分で切り裂いていたのを見ていたものが五人ほどいるのだけれど……それでもわたくしのせいにしたいの?」
「……っ、うるさいっ」
捨て台詞を吐いてライラは戻っていったわ……
本当、自分の思い通りにならないと気に入らない子供ね。全く。あんな子がわたくしがやっている仕事、できるのかしら。
まあ、どうせしないのでしょうけれど。イアン王子もきっとお仕事はされないでしょうね……
大きなため息をつきながらソファに座る。さっきまでの楽しい気持ちが台無しね。
もうこの家を出ても一人で生活はしていけるけれど、それはブライアンとオリーブに止められているのよね……一緒に学園に通いたいって言ってくれて。
目の前には先日買っておいたシアの実で作ったシアバター。そのまま使ってもいいけれど、オイルと混ぜると伸びもいいし、匂いも楽しめるのよね。
オリーブからもらったマカダミアナッツのオイルにシアバターを混ぜてみたけれど、油が固まってしまってうまく混ざらないわね。
カリンにお湯を持ってきてもらって湯煎をしながら混ぜてみると、だんだんとオイルとバターが溶け合っていい感じに混ざってきたわ。
香りは好みがあるから今の段階ではつけないようにしてと。あとは冷えるのを待つだけね。
「アリア様、ライラ様が何か画策をしている様子ですと彼女の侍女からありましたのでお気をつけください」
「ありがとう。おそらく大丈夫よ。あの二人の頭ではそこまでたいそうな事考えられないと思うの。それより、これ、試してみてくれない?」
「よろしいのですか?」
「保湿クリームを作ってみたのよ。どうかしら」
目を輝かせて手に塗り込むカリン。
「とてもいいですっ。これ、商品化しますかっ?」
「オリーブとも相談してからになるけれど、その予定よ」
「絶対買いますっ」
どうやら好評だったみたい。これもオリーブに早めに相談しなくちゃねっ。
商売の方は順調で、ある程度どの人にも合う商品が作れたことで、収入も安定しているの。本来ならばもう作らなくても十分なくらい稼げているのだけれど、わたくしの前世の血が騒いでしまって時間がある時はコツコツ商品を開発しているの。
自分の肌もファンデーションがいらないくらい綺麗になって、お化粧もポイントメイクのみで済んでいることがとても嬉しい。それに加えてたくさんの女性、男性が喜んでくれているのもやりがいがあるわ。
美の追求というのは今も昔も変わらないものなのね。というよりこの時代の人の方が一生懸命かもしれないわ……
「きゃーっ」
自宅に帰って早々、ライラの叫び声が聞こえる。
はあぁぁぁぁ
最近ため息をつく回数が以前にも増して増えている気がするわ。というかわたくしよりも早く帰ってきてたのね。
あの後すぐに解散したのかしら……? いつもは夕方までいるのにね。
彼女についていた侍女たちや屋敷の使用人たちが何事かと駆け寄る。もう、大きい声なんて出してはしたないったらないわ……
仕方なしにわたくしも声の発生源に向かうと、ボロボロのドレスを手に持ったライラがうずくまっている。
あら、あのドレス見たことがあるわね。確かこの間イアン殿下から送られてきたのよって自慢してたドレスじゃない。でも着ているところを見たことがないのよね。多分デザインが彼女好みじゃなかったんじゃないかと思っていたのだけれど、せっかくいただいたのに着ないであの状態なんて勿体無いわね。
「……お姉様でしょう」
「……は?」
あら、いけない。思わず素が出てしまったわ。人間理解できないことを言われると素が出てしまうものね。気をつけなくちゃ。
「イアン様と仲がいいライラに嫉妬したんでしょう⁈ こんなことするなんてひどい」
「まあ、アリア。あなたなんてことしてくれたのよっ」
「わたくし、ライラよりも早く家を出てさっき帰ってきたばかりですけれど」
「そんなわけないじゃない! こんなことするなんてお姉様くらいよっ」
はあぁぁぁ。なんなのかしらこの茶番。もう勝手にやっててちょうだい。
かかとを翻して去るわたくしに罵声を浴びせてきたけれど、いつものことだから知らないふりをしたわ。一体なんのためにこんなことをしたのかしらね。
自室に入る直前で腕を掴まれ、振り返るとものすごい形相のライラ。そんな顔してちゃ百年の恋も冷めちゃうわよってくらいあちこちに皺が寄っているわ……
それによく見たらかなりお化粧を塗りたくっているわね。肌荒れが隠しきれてないわ。こんなに若いのにお化粧品で隠すことしかしていないのかしらね。
「何かしら?」
「あなたがやったんでしょう! 正直に言いなさいよっ」
「はぁ。やっていないわよ。それはあなたが一番わかっているでしょう?」
「いいえっ。絶対お姉様よっ。じゃなきゃこんなことする人なんてっ」
カリンがわたくしの耳元で囁く。なるほどね。もう自分の侍女にすら見限られているじゃない。
「あなたがそのドレスを自分で切り裂いていたのを見ていたものが五人ほどいるのだけれど……それでもわたくしのせいにしたいの?」
「……っ、うるさいっ」
捨て台詞を吐いてライラは戻っていったわ……
本当、自分の思い通りにならないと気に入らない子供ね。全く。あんな子がわたくしがやっている仕事、できるのかしら。
まあ、どうせしないのでしょうけれど。イアン王子もきっとお仕事はされないでしょうね……
大きなため息をつきながらソファに座る。さっきまでの楽しい気持ちが台無しね。
もうこの家を出ても一人で生活はしていけるけれど、それはブライアンとオリーブに止められているのよね……一緒に学園に通いたいって言ってくれて。
目の前には先日買っておいたシアの実で作ったシアバター。そのまま使ってもいいけれど、オイルと混ぜると伸びもいいし、匂いも楽しめるのよね。
オリーブからもらったマカダミアナッツのオイルにシアバターを混ぜてみたけれど、油が固まってしまってうまく混ざらないわね。
カリンにお湯を持ってきてもらって湯煎をしながら混ぜてみると、だんだんとオイルとバターが溶け合っていい感じに混ざってきたわ。
香りは好みがあるから今の段階ではつけないようにしてと。あとは冷えるのを待つだけね。
「アリア様、ライラ様が何か画策をしている様子ですと彼女の侍女からありましたのでお気をつけください」
「ありがとう。おそらく大丈夫よ。あの二人の頭ではそこまでたいそうな事考えられないと思うの。それより、これ、試してみてくれない?」
「よろしいのですか?」
「保湿クリームを作ってみたのよ。どうかしら」
目を輝かせて手に塗り込むカリン。
「とてもいいですっ。これ、商品化しますかっ?」
「オリーブとも相談してからになるけれど、その予定よ」
「絶対買いますっ」
どうやら好評だったみたい。これもオリーブに早めに相談しなくちゃねっ。
商売の方は順調で、ある程度どの人にも合う商品が作れたことで、収入も安定しているの。本来ならばもう作らなくても十分なくらい稼げているのだけれど、わたくしの前世の血が騒いでしまって時間がある時はコツコツ商品を開発しているの。
自分の肌もファンデーションがいらないくらい綺麗になって、お化粧もポイントメイクのみで済んでいることがとても嬉しい。それに加えてたくさんの女性、男性が喜んでくれているのもやりがいがあるわ。
美の追求というのは今も昔も変わらないものなのね。というよりこの時代の人の方が一生懸命かもしれないわ……
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