12 / 23
12
しおりを挟む
いつもよりちょっと大きめな鞄を持って学園へ登校した。今日は合宿だ。
この合宿の目的は自然に触れること、みたい。それからクラスの親睦を深めるためでもあり、全学年で行われるみたい。
ガタガタと音を鳴らしながら走る馬車の中、わたしの隣にはクロウ様、クロウ様の隣にはシャルル様。馬車の中ではずっとシャルル様がクロウ様に話しかけていて、それをレオン様とミーシャ様が困惑した様子で眺めていて、そしてわたしは窓から外をずっと眺めていた。
「わぁ、本当に森の中ですねっ。わたしのところもこんな感じだったから少し懐かしいですっ」
ずっとクロウ様の腕に抱きついているシャルル様。そんなシャルル様を無視しているクロウ様。
わたしは思わずため息をついてしまった。
そんなわたしを心配してミーシャ様は声をかけてくれる。
けれどわたしの耳にはその言葉はあまり届かなくて、ぼーっとしてしまって、そんなわたしの頭をレオン様は撫でてくれてた。
午前中は風景画を描く授業みたい。それぞれ好きな場所の風景を紙に描くようで、みんなそれぞれの場所に向かう。一人で書いてる人や友人と一緒の場所で書く人。
わたしはどこで描こうかな……
ふらふら歩いていると腕をクロウ様に掴まれる。
「どこへいくの」
「どこって、場所を探そうかなって……」
「一緒に行くから一人で行かないで」
さっきまで、シャルル様と一緒にいたのに、どうして? 二人でいたからわたしは一人でどこか見つけようと思ったのに……
あ、三つ葉……
思わず足を止めた。ここがいい。
座り込んでキャンパスを広げる。その隣にクロウ様も座り込んで描き始めた。
そこへ足音が近づいてくる。
「あーっ、こんなところにいたっ。急にいなくなって探したんだよー?私もここで描くー!」
ああ、また彼女……
一気に気持ちが暗くなる。すくっと立ち上がったわたしの手をクロウ様が握って、「どこいくの」って言ってたけど、わたしは頑張ってにこりと微笑んで「静かなところ」って言ったら彼は手を離してくれた。
またふらふら歩いているとレオン様とミーシャ様がいて、誘ってくれたのでそこで描くことにした。
時々楽しく話ながら描くのは楽しい。静かとかうるさいとかじゃなくて誰がそばにいるかでこんなに変わってくるんだなって思っていた。
「アメリア? どうしてクロウのそばを離れたの?」
「……ちょっと騒がしくなったから……」
「そう……」
ミーシャ様はそれ以上何も言わなくて、その気遣いが今は嬉しかった。
昼食になったら流石にくるだろうと思っていたけど、クロウ様は来なくて、レオン様とミーシャ様と一緒にご飯を食べた。
昼食を終えて談笑していると、なんだか怖い顔したクロウ様が近づいてくる。レオン様とミーシャ様は顔が青ざめていて、わたしのそばからパッと離れる。
え、なんで離れるの……?
クロウ様はわたしの腕を掴んでどこかに向かっている。いつもの優しげな感じはなくて、なんだか怖い。怒ってる……?
どこかの部屋へ連れ込まれて、鍵までかけてた。
え、わたし、閉じ込められてる……?
そのままそばにあったベッドへ連れ込まれる。
「アメリア。なんで? なんで俺のそばを離れるの」
怖い顔をしたままわたしを見つめるクロウ様。わたし……何かって思ったけど心当たりがあるから何もいえない……
黙り込むわたしに顔を徐々に近づけるクロウ様。ち、近いですっ。
「なんで? 何が嫌だったの」
なんで、なんでだろう。本当は、わかってる。シャルル様と一緒にいるクロウ様をみたくなかったから。胸が痛くなってくるから。嫌だなって思ってしまうから。わたしの心が醜いと思ってしまったから。
なんだかわからないけど目に涙が溜まってきているのがわかる。泣いちゃダメ。泣いたって、何も解決しない……
「言わないとわかんないよ、アメリア。ちゃんと俺の目を見て言って」
横向きに向かい合わせで寝そべって、クロウ様の両手で頬を固定されていて、勝手に彼の目を見つめてしまう。
こんな気持ち、言いたくない。嫌って思ったなんて知られたくないのに……
吸い込まれそうな彼の瞳に見つめられると、言葉が出てきてしまう。
「……いや、だったの」
「何が嫌だったの?」
「……あのこと一緒にいるのが。あのこにわたしの心地いい場所を、奪われるのが……」
「そう。いやだった? そんなに泣きたくなるくらい」
もう吐き出してしまってからはとめどなく流れる涙が止まる気配はない。クロウ様は人差し指でそれを拭ってくれて。
「アメリア。それは嫉妬というんだよ。嫉妬はね、大好きな人にしかしないんだよ」
大好き……? 嫉妬……
そう、なのかな。好き……
でも、レオン様もミーシャ様も好きだけど二人仲良くしてても何も思わない。むしろ嬉しい。
何が違うの……?
「ふふっ。ねぇ、アメリア。ご飯ちょうだい」
じゅっと啜る音がする。最近この音にもドキドキする。なんだか変。
「アメリア。俺とレオン達とじゃ、違うでしょう? 何が違うかわかる?」
何が、何が違う? でも何かが違う……
なんだろう……
――レオンじゃドキドキしないでしょう? こんなに泣いたりしないでしょう? 何が違う? 同じ好き? 違う好き?
違う、レオン様とクロウ様じゃ何かが違う。二人とも好きだけど、同じじゃない……
「そう。レオンと俺じゃ違うんだね。ふふ。あと、少しだね」
そのまま意識が遠のいて、眠ってしまった。
この合宿の目的は自然に触れること、みたい。それからクラスの親睦を深めるためでもあり、全学年で行われるみたい。
ガタガタと音を鳴らしながら走る馬車の中、わたしの隣にはクロウ様、クロウ様の隣にはシャルル様。馬車の中ではずっとシャルル様がクロウ様に話しかけていて、それをレオン様とミーシャ様が困惑した様子で眺めていて、そしてわたしは窓から外をずっと眺めていた。
「わぁ、本当に森の中ですねっ。わたしのところもこんな感じだったから少し懐かしいですっ」
ずっとクロウ様の腕に抱きついているシャルル様。そんなシャルル様を無視しているクロウ様。
わたしは思わずため息をついてしまった。
そんなわたしを心配してミーシャ様は声をかけてくれる。
けれどわたしの耳にはその言葉はあまり届かなくて、ぼーっとしてしまって、そんなわたしの頭をレオン様は撫でてくれてた。
午前中は風景画を描く授業みたい。それぞれ好きな場所の風景を紙に描くようで、みんなそれぞれの場所に向かう。一人で書いてる人や友人と一緒の場所で書く人。
わたしはどこで描こうかな……
ふらふら歩いていると腕をクロウ様に掴まれる。
「どこへいくの」
「どこって、場所を探そうかなって……」
「一緒に行くから一人で行かないで」
さっきまで、シャルル様と一緒にいたのに、どうして? 二人でいたからわたしは一人でどこか見つけようと思ったのに……
あ、三つ葉……
思わず足を止めた。ここがいい。
座り込んでキャンパスを広げる。その隣にクロウ様も座り込んで描き始めた。
そこへ足音が近づいてくる。
「あーっ、こんなところにいたっ。急にいなくなって探したんだよー?私もここで描くー!」
ああ、また彼女……
一気に気持ちが暗くなる。すくっと立ち上がったわたしの手をクロウ様が握って、「どこいくの」って言ってたけど、わたしは頑張ってにこりと微笑んで「静かなところ」って言ったら彼は手を離してくれた。
またふらふら歩いているとレオン様とミーシャ様がいて、誘ってくれたのでそこで描くことにした。
時々楽しく話ながら描くのは楽しい。静かとかうるさいとかじゃなくて誰がそばにいるかでこんなに変わってくるんだなって思っていた。
「アメリア? どうしてクロウのそばを離れたの?」
「……ちょっと騒がしくなったから……」
「そう……」
ミーシャ様はそれ以上何も言わなくて、その気遣いが今は嬉しかった。
昼食になったら流石にくるだろうと思っていたけど、クロウ様は来なくて、レオン様とミーシャ様と一緒にご飯を食べた。
昼食を終えて談笑していると、なんだか怖い顔したクロウ様が近づいてくる。レオン様とミーシャ様は顔が青ざめていて、わたしのそばからパッと離れる。
え、なんで離れるの……?
クロウ様はわたしの腕を掴んでどこかに向かっている。いつもの優しげな感じはなくて、なんだか怖い。怒ってる……?
どこかの部屋へ連れ込まれて、鍵までかけてた。
え、わたし、閉じ込められてる……?
そのままそばにあったベッドへ連れ込まれる。
「アメリア。なんで? なんで俺のそばを離れるの」
怖い顔をしたままわたしを見つめるクロウ様。わたし……何かって思ったけど心当たりがあるから何もいえない……
黙り込むわたしに顔を徐々に近づけるクロウ様。ち、近いですっ。
「なんで? 何が嫌だったの」
なんで、なんでだろう。本当は、わかってる。シャルル様と一緒にいるクロウ様をみたくなかったから。胸が痛くなってくるから。嫌だなって思ってしまうから。わたしの心が醜いと思ってしまったから。
なんだかわからないけど目に涙が溜まってきているのがわかる。泣いちゃダメ。泣いたって、何も解決しない……
「言わないとわかんないよ、アメリア。ちゃんと俺の目を見て言って」
横向きに向かい合わせで寝そべって、クロウ様の両手で頬を固定されていて、勝手に彼の目を見つめてしまう。
こんな気持ち、言いたくない。嫌って思ったなんて知られたくないのに……
吸い込まれそうな彼の瞳に見つめられると、言葉が出てきてしまう。
「……いや、だったの」
「何が嫌だったの?」
「……あのこと一緒にいるのが。あのこにわたしの心地いい場所を、奪われるのが……」
「そう。いやだった? そんなに泣きたくなるくらい」
もう吐き出してしまってからはとめどなく流れる涙が止まる気配はない。クロウ様は人差し指でそれを拭ってくれて。
「アメリア。それは嫉妬というんだよ。嫉妬はね、大好きな人にしかしないんだよ」
大好き……? 嫉妬……
そう、なのかな。好き……
でも、レオン様もミーシャ様も好きだけど二人仲良くしてても何も思わない。むしろ嬉しい。
何が違うの……?
「ふふっ。ねぇ、アメリア。ご飯ちょうだい」
じゅっと啜る音がする。最近この音にもドキドキする。なんだか変。
「アメリア。俺とレオン達とじゃ、違うでしょう? 何が違うかわかる?」
何が、何が違う? でも何かが違う……
なんだろう……
――レオンじゃドキドキしないでしょう? こんなに泣いたりしないでしょう? 何が違う? 同じ好き? 違う好き?
違う、レオン様とクロウ様じゃ何かが違う。二人とも好きだけど、同じじゃない……
「そう。レオンと俺じゃ違うんだね。ふふ。あと、少しだね」
そのまま意識が遠のいて、眠ってしまった。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
騎士様に甘いお仕置きをされました~聖女の姉君は媚薬の調合がお得意~
二階堂まや
恋愛
聖女エルネの姉であるイエヴァは、悩める婦人達のために媚薬の調合と受け渡しを行っていた。それは、妹に対して劣等感を抱いてきた彼女の心の支えとなっていた。
しかしある日、生真面目で仕事人間な夫のアルヴィスにそのことを知られてしまう。
離婚を覚悟したイエヴァだが、アルヴィスは媚薬を使った''仕置き''が必要だと言い出して……?
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
+2/16小話追加しました。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
ミユはお兄ちゃん専用のオナホール
屑星とあ
恋愛
高校2年生のミユは、母親が再婚した父親の息子で、義理の兄であるアツシに恋心を抱いている。
ある日、眠れないと言ったミユに睡眠薬をくれたアツシ。だが、その夜…。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
婚約者の王子に殺された~時を巻き戻した双子の兄妹は死亡ルートを回避したい!~
椿蛍
恋愛
大国バルレリアの王位継承争いに巻き込まれ、私とお兄様は殺された――
私を殺したのは婚約者の王子。
死んだと思っていたけれど。
『自分の命をあげますから、どうか二人を生き返らせてください』
誰かが願った声を私は暗闇の中で聞いた。
時間が巻き戻り、私とお兄様は前回の人生の記憶を持ったまま子供の頃からやり直すことに。
今度は死んでたまるものですか!
絶対に生き延びようと誓う私たち。
双子の兄妹。
兄ヴィルフレードと妹の私レティツィア。
運命を変えるべく選んだ私たちは前回とは違う自分になることを決めた。
お兄様が選んだ方法は女装!?
それって、私達『兄妹』じゃなくて『姉妹』になるってことですか?
完璧なお兄様の女装だけど、運命は変わるの?
それに成長したら、バレてしまう。
どんなに美人でも、中身は男なんだから!!
でも、私達はなにがなんでも死亡ルートだけは回避したい!
※1日2回更新
※他サイトでも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる