吸血鬼なご主人様の侍女になりました。

しおの

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「ねえねえ、アメリア。あなたとクロウはどう言う関係なの? クロウは妹としか言わないけど、それじゃ納得できないのよねぇ」
「え、あ、その……」
「こらミーシャ。あまりアメリアをいじめるな」
「あら虐めてなんてないわよ? こんな可愛い妹がいるならわたしに紹介して欲しかったのに。絶対可愛がるって約束できるわっ」
「アメリアの教育によくないだろ」
「よくないってどう言うことー⁈   ねーレオン、クロウが酷いこと言うのよーっ」
「はぁ、クロウ。ミーシャには話してもいいんじゃないか?」
 お兄様の大きなため息が響く。どうやらレオン様はわたし達の事情を知っているみたい。
 それからお兄様はミーシャ様にわたし達の関係について話ていた。
「まぁまぁ! そんな小さな頃から一緒なのねっ。それなら納得だわぁ。それでそれで、二人は付き合ってるのっ?」
 ミーシャ様はわたしにぐいぐい迫ってくる。つ、付き合ってる⁈   そんなのありえないわ。だってわたしはただ彼の食事だもの。侍女の仕事をちゃんとできているとも思えないし、今なんて学園に通わせてもらってる。
 ただの、食事係だもの……
 黙り込むわたしに戸惑う表情のミーシャ様、頭を抱えているレオン様にわたしをじっと見ているお兄様。
「……ごめんなさいね。ちょっと早かったみたい。クロウ、アメリア借りてもいいかしら?」
「どうぞ。余計なことは言うなよ」
「言わないわよっ。あなた怒ると怖いものっ」
 黙り込んでしまったわたしを連れて奥の部屋へ行くミーシャ様。
 ソファに座ってわたしの手を握ってくれた。
「ねぇ、アメリア。あなたクロウのことはどう思ってるの?」
「え……?」
「好きか嫌いかで言ったらどっち?」
 好きか嫌いかで言ったら好き……と思う。
「好き、だと思います……」
「じゃあ、そばにいない時は?」
「……あまり、考えたことない、です」
「そう、ならこれからちょっとずつ考えてあげて」
 なぜこんな話をされているかはわからないけど、頷いた。考えるって、どうやって考えたらいいんだろう。それにシャルル様のこともある。
 あまり彼に近づきすぎてはいけない……




 それから部屋に帰って、勉強をする。いつものルーティーンだ。
「ここはこれを当てはめて計算するんだよ」
「……はい」
 ずっと考えていた。わたしとご主人様の関係。でも、何度考えてもよくわからない。食事として血液を分け与える。そのための衣食住は保証されている。さらには学園にまで通わせてもらっている。ここまでは何にもないただの食事係だと思う。
 けれど、食事の時に、キスをしたり二人で一緒に寝てる。これは、本で読んだ気持ちの通じあった恋人同士がする行為だと書いてある。それにマナーの本にもそう書いてあった気がする。婚約者同士でなければはしたないとされていると。
「どうしたの? ミーシャに何か言われた?」
 どうやら考え込んでしまったらしい。ご主人様に声をかけられ、はっとした。
「え、いえ、なんでも、ない、です……」
 そんなわたしの様子を怪訝な眼差して見つめた後、「おいで」と言ってベッドへ連れていかれた。
 ベッドの縁に座らされる。そんなわたしを後ろから抱きしめるご主人様。あったかい……
 思わず前に回されている腕をきゅっと掴んだ。
「ちょっと早いけど、ご飯、ちょうだい」
 カプリと牙を立てられて、皮膚を裂く。この痛みだけは毎回襲ってきて、肩がピクリと動く。
 そこからジュルジュルと血を啜られた。
「んっ……」
 この気持ちよさはなんだかうまく表現できない。けど、だんだん何も考えられなくなってくる。
「アメリア。どうしたの? 何を考えてる?」
 ああ、彼の声だけ鮮明に聞こえる。何を……ってなんのこと。
「俺のこと、好き?」
 あ、好き……? 好き、好き、好き……
「す、き……っ」
 え、なんで? 勝手に口から……
「それは、どんな好き?」
 どんな、どんな……
「わからない……けどっ、っん……す、き」
「俺たちの関係って……何?」
 関係、関係、関係……何……?
「食事、っががり……?」
「……うまく、伝わらないものだね」
 彼の声が、急に寂しそうに聞こえて。そのままわたしはくるりと体を回されて。
 ご主人様と向き合った。
「ねぇ、アメリア」
 首の後ろに腕を回される。だんだん彼の顔が近づいてきて。
 唇にキスを落とされる。
「レオンと、こう言うこと、できる?」
「あ……」
「どうなの」
 急かされる。どう、なんだろう。他の人とキス……それどころかこんなに触れてて不快に思わないのは、ご主人様だけかもしれない。他の人は……いや、されたことがないから、わからない。
 どう、なんだろう……わからない……
「わか、ん、ない……わかんない」
「そう。アメリアは鈍感なんだね。というか、俺が囲いすぎたかな。なら、明日試してみようか」
「え……」
「さ、おやすみ」
 ふわりと眠くなる。わたしは重くなる瞼をそのまま受け入れた。
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