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本編
24.文化祭本番っ
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お化け屋敷を出て、ほっと一息つく。や、やっと終わった……
「役得だったね。もう一回入る?」
「遠慮しますっ」
中からは女生徒の悲鳴が聞こえてくる。もう、いい……
くすくす笑っている彼を軽く睨みつけて、手を引っ張って次に行くように促した。
そういえば、そろそろお腹がすいたなぁ……
ちらりと横を見ると食べ物の屋台のようだ。メニューは見事に揚げ物のオンパレードで。唐揚げ、ポテト、ドーナツ。
ああ。茶色い食べ物ってカロリー高いけど美味しいんだよね……
でもカロリーが……お肉が……
いつの間にかじっと見つめてしまっていたのだろう。それを察した彼がスタスタとお店に入っていく。
「何食べる?」
ああ、どれも懐かしくて恋しい……でも一つにしないと絶対太る……
葛藤している間に彼が全て一つずつ彼が買ってしまっていた。
「食べたそうにしてたから全部買ってみたけど。上で食べよう」
食い意地張ってるって思われたみたいで恥ずかしい……
ちょっと俯きながら彼に手を引かれて生徒会室へ向かった。
「食べたことないけど、意外と美味しいね」
「そうですね。茶色いものは全部美味しいです。太るけど……」
二人で分け合って食べる。この国ではあまりない調理法で作られたそれらを彼は物珍しそうに口にしていた。そうでしょうよ。日本人ならではのものだもの……
「ルシアはもう少し太った方がいいと思うけど。気にしなくていいんじゃない?」
「うっ。ちょっと太っただけでドレスが入らなくなるっていつも侍女に言われるんですっ。あまり太ると怒られます……」
「そう。女性は大変なんだね。でも今日一日食べ過ぎたくらいじゃ簡単に太らないよ。はい、あーん」
ナチュラルに食べさせてくるシエル様を拒めず、ついつい口を開ける。はっ。食べてしまった……
でも、美味しいっ。
あまりに自然すぎて、世間一般的に人前だと恥ずかしい行為だと言うことをわたしは気づかずにいた。
ちょっと休憩して、わたし達のクラスへ向かう。展示の受付係だ。中にも数人生徒がいて、作品が傷つかないように見守る係がいる。
二つ並んだ椅子に腰掛けて、ペンを持つ。受付といっても、人数を男女別に数えるだけなんだけど。わたし達が席に座った瞬間に、たくさんの生徒や外部の人が押し寄せる。
「あ、あの、中見ていいですかっ」
頬を染めたたくさんの淑女達。どうやら彼女達の目的はシエル様のようだ。彼はそんな彼女達に笑顔のみで答えて次々中に押し込んだ。
中がぎゅうぎゅうになっているがそこはいいのだろうか……
わたしはといえばひたすら数を数えていた。彼から「何も喋らなくていいよ。数だけ数えてて」と言われたので大人しく従う。
おかげで教室前の廊下には長蛇の列ができている。しかし幸いなことに彼女達の目当ては彼と彼の作品のみ。大変回転率が良く、一時間わたしはひたすら数を数えていた。
時間になって交代の生徒達がくると、さっと引こうとした行列に彼はにこりと作った笑みを貼り付けて「せっかく来ていただいたので是非見ていってくださいね」って後押しをしてわたしと共に教室を後にした。
ファンサービスも王子の仕事のうちなのかしら。なんて呑気に考えていた。
次に向かったのはクレープ屋さんだった。ちょうど午後のティータイムと重なっていて中の席はかなり混んでいる。でも美味しそう。食べたい……
「食べる?」
その言葉に素直に頷いた。デザートは別腹っ。
片手にクレープを持ちながら今度は執務室。なんで生徒会室じゃないんだろうなんて不思議に思いながら二人並んでソファへ座る。
ほっぺたが落ちそうなくらい、美味しい……
夢中で食べているわたしに彼は自分のクレープを差し出した。
「こっちも食べる?」
そう、わたしと彼は違う味のクレープを買っていた。わたしはいちごチョコ、彼はコーヒー味。た、食べてみたい。カプリとかぶりつく。生クリームの甘みにコーヒーの苦さが相まってとっても美味しい。
これもこれでありだ。
「僕にもちょうだい」
わたしももらったから彼にもあげないと。そう思い、スッと差し出す。
「うん、甘いね」
いやいや、あなたの顔の方が甘いです……
というか、これは世間一般的にラブラブなバのつくカップルしかやらないんじゃ……って思ったけど、彼のご機嫌がいいので、知らないふりをしておこう。
黙々と食べているとふと彼の指がわたしの口の端を拭う。
「ついてたよ」
そういって彼はその指をぺろりと舐める。じっとみていたわたしは妙な色気にドキドキしてしまった。それと同時にいつもの頭痛もきて、ちょっとしたら落ち着いた。
一体これはなんなんだろう。彼にドキドキするたびに頭痛で気持ちがひいていく。なんだか気持ち悪いな。
そんなことを思いながら二人仲良くクレープを食べた。
「役得だったね。もう一回入る?」
「遠慮しますっ」
中からは女生徒の悲鳴が聞こえてくる。もう、いい……
くすくす笑っている彼を軽く睨みつけて、手を引っ張って次に行くように促した。
そういえば、そろそろお腹がすいたなぁ……
ちらりと横を見ると食べ物の屋台のようだ。メニューは見事に揚げ物のオンパレードで。唐揚げ、ポテト、ドーナツ。
ああ。茶色い食べ物ってカロリー高いけど美味しいんだよね……
でもカロリーが……お肉が……
いつの間にかじっと見つめてしまっていたのだろう。それを察した彼がスタスタとお店に入っていく。
「何食べる?」
ああ、どれも懐かしくて恋しい……でも一つにしないと絶対太る……
葛藤している間に彼が全て一つずつ彼が買ってしまっていた。
「食べたそうにしてたから全部買ってみたけど。上で食べよう」
食い意地張ってるって思われたみたいで恥ずかしい……
ちょっと俯きながら彼に手を引かれて生徒会室へ向かった。
「食べたことないけど、意外と美味しいね」
「そうですね。茶色いものは全部美味しいです。太るけど……」
二人で分け合って食べる。この国ではあまりない調理法で作られたそれらを彼は物珍しそうに口にしていた。そうでしょうよ。日本人ならではのものだもの……
「ルシアはもう少し太った方がいいと思うけど。気にしなくていいんじゃない?」
「うっ。ちょっと太っただけでドレスが入らなくなるっていつも侍女に言われるんですっ。あまり太ると怒られます……」
「そう。女性は大変なんだね。でも今日一日食べ過ぎたくらいじゃ簡単に太らないよ。はい、あーん」
ナチュラルに食べさせてくるシエル様を拒めず、ついつい口を開ける。はっ。食べてしまった……
でも、美味しいっ。
あまりに自然すぎて、世間一般的に人前だと恥ずかしい行為だと言うことをわたしは気づかずにいた。
ちょっと休憩して、わたし達のクラスへ向かう。展示の受付係だ。中にも数人生徒がいて、作品が傷つかないように見守る係がいる。
二つ並んだ椅子に腰掛けて、ペンを持つ。受付といっても、人数を男女別に数えるだけなんだけど。わたし達が席に座った瞬間に、たくさんの生徒や外部の人が押し寄せる。
「あ、あの、中見ていいですかっ」
頬を染めたたくさんの淑女達。どうやら彼女達の目的はシエル様のようだ。彼はそんな彼女達に笑顔のみで答えて次々中に押し込んだ。
中がぎゅうぎゅうになっているがそこはいいのだろうか……
わたしはといえばひたすら数を数えていた。彼から「何も喋らなくていいよ。数だけ数えてて」と言われたので大人しく従う。
おかげで教室前の廊下には長蛇の列ができている。しかし幸いなことに彼女達の目当ては彼と彼の作品のみ。大変回転率が良く、一時間わたしはひたすら数を数えていた。
時間になって交代の生徒達がくると、さっと引こうとした行列に彼はにこりと作った笑みを貼り付けて「せっかく来ていただいたので是非見ていってくださいね」って後押しをしてわたしと共に教室を後にした。
ファンサービスも王子の仕事のうちなのかしら。なんて呑気に考えていた。
次に向かったのはクレープ屋さんだった。ちょうど午後のティータイムと重なっていて中の席はかなり混んでいる。でも美味しそう。食べたい……
「食べる?」
その言葉に素直に頷いた。デザートは別腹っ。
片手にクレープを持ちながら今度は執務室。なんで生徒会室じゃないんだろうなんて不思議に思いながら二人並んでソファへ座る。
ほっぺたが落ちそうなくらい、美味しい……
夢中で食べているわたしに彼は自分のクレープを差し出した。
「こっちも食べる?」
そう、わたしと彼は違う味のクレープを買っていた。わたしはいちごチョコ、彼はコーヒー味。た、食べてみたい。カプリとかぶりつく。生クリームの甘みにコーヒーの苦さが相まってとっても美味しい。
これもこれでありだ。
「僕にもちょうだい」
わたしももらったから彼にもあげないと。そう思い、スッと差し出す。
「うん、甘いね」
いやいや、あなたの顔の方が甘いです……
というか、これは世間一般的にラブラブなバのつくカップルしかやらないんじゃ……って思ったけど、彼のご機嫌がいいので、知らないふりをしておこう。
黙々と食べているとふと彼の指がわたしの口の端を拭う。
「ついてたよ」
そういって彼はその指をぺろりと舐める。じっとみていたわたしは妙な色気にドキドキしてしまった。それと同時にいつもの頭痛もきて、ちょっとしたら落ち着いた。
一体これはなんなんだろう。彼にドキドキするたびに頭痛で気持ちがひいていく。なんだか気持ち悪いな。
そんなことを思いながら二人仲良くクレープを食べた。
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