設定めちゃくちゃな乙女ゲームのモブに転生したら、何故か王子殿下に迫られてるんですけどぉ⁈〜なんでつがい制度なんてつくったのぉ

しおの

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本編

14.成果っ

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 学園の掲示板に成績が張り出された。ここは個人情報など関係ないのか学年ごとに順位づけまでされている。勉強の得意ではない生徒には地獄だろう。そんなわたしも地獄を見ている一人だ。本当見たくない。
 一位から三位までは代わり映えしないメンツだった。シエル様、ノーラ様、マルド様の順で名前が大きく書かれている。そんな中わたしは下からゆっくり見ていく。赤いマーカーのついている生徒は順位が高くても赤点があることを示している。ドキドキしながら辿っていくもなかなか名前が出てこない。
 目がチカチカしてきた頃、やっと見つけたのだ。
「え、十五位……?」
 しかも赤いマーカーはなしだ。生まれてこの方そんな順位をとったことがなくて、間違ってるんじゃないかと何度も確認してしまう。何度目かの確認を終えて固まった。
「おめでとう」
 嬉しくなって思わず近くにいたシエル様に抱きついてしまった。はっと気づいて慌てて離れようとしたけど、離してくれなかった……
 やってしまった……
「ルシアから飛び込んできてくれるなんて。今日はなんていい日だろうか」
 うっとりと蕩けそうな視線を向けられ、どきりとする。色気ダダ漏れじゃないですかっ。ほらっ。周りの女生徒たちがバタバタ倒れてますっ。
「そこまで。これ以上病人出すわけにはいかないよ。さ、教室行こう」
 止めてくれたのはマルド様。マルド様と一緒にいたのかノーラ様の姿も見えた。ノーラ様はニコニコと楽しそうにわたしを見ていた。



 教室に入ると授業ごとにテストが返却される。どれもこれも九十点以上取れていてわたしはご機嫌だ。あの苦行を耐えた甲斐があった……
 そんなわたしの頭を毎回シエル様は撫でてくれていた。
 そのたびに誰かが失神して保健室へ運ばれるのでちょっとは自重してほしい。そう訴えるも「自制が効かないんだよね。あんまり我慢すると爆発するかも?」なんて冗談めかして言われたけど、目は本気だった……
 申し訳ないがこのままにしておこう。自分の身の安全の方が優先だ。

 それからしばらくは平和な日々を過ごしていたのだが……
「体育祭ぃぃぃぃ⁈」
 わたしは天を仰ぐ。そんなものまで日本仕様なのか……
 この反応からもわかるように運動神経もからきしなのだ。前世でもダメで今世ではもしかしたらと思ってやってみたけど全然ダメダメだった。むしろ前世よりも酷いかもしれない……
 体育祭といってもここは貴族の学校。種目は違っていた。
 弓を使用しての射撃、乗馬、剣術、ダンスなどだった。うん、どれも苦手だ……
 学園ということでどれか一つは強制参加らしい。そのほかはいくら被っても出ていいらしい。男女で差があることも加味されて乗馬と剣術は男女別。さらに剣術に参加する女子は学年一人と決められている。女性で剣術など嗜むものはごく少数。とりあえず参加するって感じらしい。毎年ふるふるしながら柔らかい棒を振り回すだけで終わるらしい。
 女子の剣術無くしたらいいのに……
 なんて思いながら説明を聞いていた。その後はまず、どの種目に出たいかを相談する時間となった。
 どれに出ようというかどれもこれもできないんだけど……
「ルシアはどれがいい?」
 シエル様が問いかけてくる。けれど、わたしはどれも出れる気がしない。黙っていたらニヤリと笑う彼が視界に入る。
 え、なんか嫌な予感が……
「じゃあ、僕とダンスに出よう」
 ……終わった。終わった気がする。きっとこれは特訓コースだ……
 魂の抜けた顔のわたしにノーラ様とマルド様は相変わらず憐れんだ目を向けていた。
 ダンスは特に人数の制限はないらしい。貴族であれば爵位に関係なく学んでいるものだからだ。一応救済枠ということだろう。
 そのほかは出場人数が決まっていて、必ずその人数出さないといけないらしい。
 ちなみにシエル様は射撃と剣術とダンスに、ノーラ様は射撃とダンス、マルド様は乗馬とダンスに出ることになった。頭も良くて運動神経もいいなんて羨ましい……
 無事希望通り決まったとことで、今日は解散となった。




 そしてわたしは家に帰れるわけもなく……
 ダンスの練習用ホールに連れ出される。スパルタを覚悟していたけれど、ダンスはそうでもなかった。なんでだろう……
 一応ステップは踏めるようになったけど、動きがぎこちない。足にばかり集中してしまうのだ。
 かといって足から気持ちを逸らすと今度はシエル様の足を踏んでしまう……
「ルシア……足は気にしなくていいから、もっと体の力を抜いて。僕に体を預けてごらん」
 妙に優しいシエル様を警戒しているせいか、体がこわばる。黒い空気は流れていないけれど、これは条件反射だ。
「んー、どうしたものかな」
 困ったように笑う彼に申し訳なく思いながら、足を踏み続けるのだった。
 ごめんなさい……
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