設定めちゃくちゃな乙女ゲームのモブに転生したら、何故か王子殿下に迫られてるんですけどぉ⁈〜なんでつがい制度なんてつくったのぉ

しおの

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本編

12.およばれっ

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 ずずずっと彼が近づいてくる。なんだ、まだなんかあるの⁈
「それからね、その紋様は相手への気持ちに比例して大きくなるみたいだよ」
 へぇー、だからわたしの紋様めっちゃ小さかったのね。だってあの時出会ってすらなかったし。良くみないと小さな黒子くらいだったもの。
 今はどうなのかわかんないけど。薬で見えなくなってるし……
 きっと小さいままだろう。なんとも思わないもの。

 あっ、下校の鐘が鳴ってる。
「今日はここまででいいですよねっ。帰りますっ」
 この学園、前世のように部活動というものがなく、委員会活動はあるけれど基本的に最終下校時刻が決められている。それ以降残るには担当教師の許可が必要なのだ。
 貴族の学校だからその辺は厳しいらしい。
「送るよ」
 なぜかうちの馬車は来ていなくて、結局シエル様に送ってもらうことになった。

 馬車の中では今日の勉強の復習にと問題を出され続け、家に帰る頃にはぐったりしてしまった。スパルタすぎない……?




 やっと休みだぁっ。勉強漬けの毎日から解放される日。
 そして今日は、馬車に乗ってノーラ様の屋敷へ向かうのだっ。もちろんノーラ様のお迎えで手を繋いで。
 今日はノーラ様の家で開発しているお薬を見せてもらえる日だ。お友達価格でくれるみたい。
 楽しくお話ししながら彼女の屋敷へ向かった。



 応接室に通されたわたしは早速お薬の説明を受ける。
 ポーションは4種類あるそうだ。ポーションAは効果三年で25%匂いを抑える。ポーションBは50%抑え、効果は二年。ポーションCは90%で一年半ほどで体がふれるくらい近づかないとわからないほどだという。ポーションxは匂いを全カットする。効果は一年ほどだという。
 ちなみにCとXは妊娠中に使う人が多いらしい。そうだよね、妊娠中は特に夜は控えてもらわないといけないもの。
 可愛い瓶に入ったそれをじっと眺める。わたしが飲んだものとは瓶の形も色も全く違っている。けれどこちらは他の人が使用しているし安全だろう。
「あ、そうだわ。ルシアがよければ血をとらせてもらってもいいかしら? あなたが飲んだ薬を調べたいのよ」
「はい、どうぞ!いくらでも」
「ありがとう」
 お医者様と研究している人だろうか? 白衣を着た人たちがゾロゾロと入ってくる。なんだかちょっと怖いなと思いながらもノーラ様のために我慢した。

「どれにするか決めた?」
「んー、Xかなぁ……?」
 全部の匂いを消したら少しはシエル様も普通になってくれるかな。毎回手を繋がれているのを他の人に目撃されるのはちょっと恥ずかしいのだ。ただ、もうつがいだと認識されてしまっているから、90%のでもいいのかなぁ……
「そう? 悩んでいるんだったら、血液検査の結果が出てからでもいいんじゃない? 前に店で買った時、効果はどのくらい続くって聞いていたの?」
「一年って言われました。だから一年後また買いにおいでって」
「そう……」
 ノーラ様は少し考え込んでいる様子だった。思案しているノーラ様も素敵っ。
 その後は優雅にお茶会をした。やっぱりノーラ様は綺麗で、わたしはとっても楽しかった。
 


 帰り際、研究員の人がコソコソとノーラ様に耳打ちしていた。驚愕に満ちた顔をしたノーラ様はわたしにポーションXを手渡してくれた。
「ちょっとまずいことになったわ。とりあえず、これあげるから飲んでね」
 訳がわからず小首を傾げていたが、どうやら強制のようだ。いや、ノーラ様のお言葉ならなんでも従えるくらい好きなのだけれど。
 帰りの馬車で薬を飲んだことを確認され、そのまま家へ帰った。



 なんだったんだろう。あんなノーラ様初めて見たな……お仕事の話かな。良くわからないわたしは、ノートを開いて今まで得た情報を書き込む。特に進展はないけれど、とりあえず。書いておかないと忘れてしまうからとせっせと書く。
 赤字で勉強に関してはシエル様はスパルタだと書き加えることを忘れずに。



 相変わらずのスパルタに涙を拭いながら取り組む。マルド様が時折優しく教えてくれたけど、すかさずシエル様が制してくるのだ。全く心は休まらない……
 周りからの視線は刺さるような視線から憐れむような視線へ変わっている。それほど雰囲気が怖いのだ……
「さっきも言ったよね? そこはこうだって」
「はいぃぃっ」
 ああ怖い。ブルブル震えてくる。よくギャップ萌えって良くいうけど、これは怖い。
「シエル。もう少し優しくしてあげなよ。ルシアちゃんが可哀想だよ」
 マルド様がすかさずフォローしてくれる。天使だ……
 うるうるしている目でマルド様を見ていると冷たい冷気が漂う。
 ひぃぃぃっ。こわいよぉ……
 さっと視線をノートに移した。きっとあまりに出来なさすぎて呆れてるんだな。
 待てよ? これで呆れられたら解放される……?
「ルシア……? 余計なこと考えてないで早くやろうか」
「……はい」
 どうやらお見通しのようで。わたしは黙々と勉強を再開するのであった……
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