上 下
10 / 30
本編

10.情報整理っ

しおりを挟む
 まずはわたしのことから。わたしは子供の頃の一部の記憶が抜け落ちている。その記憶に関連するのは親睦会で行ったあの場所だ。何か自分の人生を左右するような大切な記憶だったと思う。わたしは思い出せなかったけど、きっとお父様は覚えているはず。それはいずれ考えることにしよう。
 それとわたしは乙女ゲームの世界にいる。攻略対象者は五人。まずは騎士であるルドルフ様、宰相家のキース様。この二人は幼い頃の出会いイベントで出会うことで攻略できる。後の三人の第二王子のシエル様とマルド様。後一人は王弟殿下。この三人はわたしが飲んだ薬と特殊なクエストをこなすと攻略が可能になる。
 ヒロインの名前はマリア・シュトール。男爵家の令嬢でわたしの一つ下だったはずだ。そしてどのルートでも悪役令嬢として出てくるのがノーラ様。あんな素敵な人が悪役令嬢なんて考えられないんだけど……

 それからわたし、ルシア・アルノルド。子爵家令嬢。十五歳の時、突然紋様が現れた。小さい頃はなかったって聞いてる。ゲームのことを同時に思い出して、ショップを探す。そこで突如出現したショップで紋様を消す薬を手に入れる。その帰り道に偶然お忍びのシエル様とあってしまい、つがいであるとバレる。
 それからは、学園の入学するまで色々したけど省こう。無駄な努力だった……

 学園へ入学して、シエル様につがいだと言われる。それから主要な登場人物と知り合う。
 
「こんなものかしら」
 それにしても謎だらけだ。意味がわからない。時々状況を整理していかないとダメね。
 ひとまず状況整理を終えたわたしは、眠りにつくことにした。明日はお休みだしゆっくりしよう。




 朝からローラに起こされてしまった。ねむたい目を擦りながら何事かと聞いてみる。
「そ、それが、第二皇子殿下がいらしています。外出したいと。急いで準備しましょう」
 ぼーっとした頭で立っているうちに次々と準備を施される。やっと頭が冴えた頃には準備は出来上がっており、玄関へ向かうように促されてしまった。
 寝起きを狙うなんて卑怯な……というか第二王子殿下からとあれば断れないんだけど……
「おはようルシア。ねむそうだね」
「……おはようございます。寝起きなので」
 ちょっと嫌味を言っても許されるだろう。ちらりと見た彼はいつかのお忍びスタイルだった。
「今日はどうしたのですか?」
「以前ルシアが話していた店を探しに行こうと思ってね」
 ああ、なるほど。あの薬はノーラ様のお家でしか作ってないはずだものね。効果もなんだか違うみたいだし……
 今日はお仕事ですねっ。

 
 手を繋がれて、平民街を歩く。彼は朝早くからやっている店に入って行き、わたしも必然的に入る。
 彼が何やら注文してくれらみたいで、朝食が運ばれてきた。どうやら朝ごはんを食べさせてくれるらしい。お言葉に甘えよう。もう少しでわたしのお腹が暴れるところだったもの。
 わたしが食べている間彼はじっと見つめてきて、とても食べづらかった。朝は済ませてきたらしく、コーヒーだけを啜りながらひたすら見られた。
 ちょっと抗議してみたけれど「ルシアが可愛いのが悪い」なんて言われて恥ずかしかったので余計なことは言わないことにした。



 そこからわたしが店を見つけた場所に向かって歩く。あの時は迷子になっていてあまり覚えていなかったんだけれど、休憩した場所の特徴を彼に伝えるとすぐに分かったみたい。さすがというべきか言葉は悪いけど腐っても王子なのだろう。
 二人手を繋いで歩くと周りからの視線が痛い。コソコソと「お似合いねぇ」「男の人かっこいいわ」なんて聞こえてきて。どう反応していいかわからなかった。きっととても変な顔をしていたと思う。
 そうこうしているうちに店にたどり着く。外装は一緒だ。
 中に入ってみると普通のアクセサリーショップだった。あれ? と首を傾げているわたしを連れて店を後にする。
 目の前にベンチと噴水があって二人でベンチに座った。
「全然違う店でしたね」
「そうだね。ただ、店の店主は最近ここに店を構えたと言っていた。格安で出ていてすぐに入れたのだと」
 おかしな話だ。ここは平民街でもなかなか人通りがあって高いはず。そんな格安でなんて……
「なんだか面倒なことになったね。今日はこのくらいでいい。さ、ちょっと遊んでいこう」
 自由な彼に連れられて、王都の貴族街へ向かった。そしてなぜかドレスショップに連れられる。問答無用で着替えさせられ、緑のドレスに銀色の刺繍の入っている外出用のドレスを着せられてしまっていた。
 困惑するわたしに彼は笑い「今日付き合ってくれたお礼」なんて言っていた。彼も彼で着替えたらしい。ポカンとするわたしを連れて彼は劇場へと足を運ぶ。
 どうやらこれもお礼らしい。ありがたく受け取ることにしよう。きっといつものように拒否権はない。
 その後は王族専用の席だろうか、無駄にひろい部屋に小さめな二人掛けのソファに座って観劇を楽しんだのだった。距離を近いことを気にしてたらせっかくの観劇が楽しめないわっ。
 真剣に観ているわたしに視線を向けている彼は終始微笑んでいた。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話

もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。 詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。 え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか? え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか? え? 私、アースさん専用の聖女なんですか? 魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。 ※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。 ※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。 ※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。 R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。

異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました

空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」 ――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。 今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって…… 気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?

【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話

象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。 ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

異世界転生したけど眠っているうちにマッドな科学者キャラにえっちに開発?されちゃってた話

夜摘
恋愛
昔遊んだ乙女ゲーム『黄昏のソルシエール』の世界へと転生してしまった主人公。 ゲームでの展開通り他人から虐められたりすることもあるけれど、攻略対象である推しキャラと親しくなったりと彼女なりに充実した日々を過ごしていた。ある時、推しキャラであるマッドな科学者キャラにご馳走されたお茶を飲んだ後うとうとしてしまった主人公は、朦朧とする意識の中で、自分の身体に違和感を感じて………。 いくら推しキャラの倫理観が終わっていたとしても、まさか自分の意識がない間に自分の身体をえっちに開発されているなんて思いも寄らない主人公。えっちなことなんてされるのは"初めて"のはずなのに、嘘みたいに感じ過ぎてしまって―――――……!? ※この作品に出てくる薬品は、安心安全で人体に害のない魔法由来のお薬です。 ※ムーンライトノベルズ(小説家になろうグループ R18部門)にも掲載している作品です。

ヤンデレ義父に執着されている娘の話

アオ
恋愛
美少女に転生した主人公が義父に執着、溺愛されつつ執着させていることに気が付かない話。 色々拗らせてます。 前世の2人という話はメリバ。 バッドエンド苦手な方は閲覧注意です。

【R18】いくらチートな魔法騎士様だからって、時間停止中に××するのは反則です!

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
 寡黙で無愛想だと思いきや実はヤンデレな幼馴染?帝国魔法騎士団団長オズワルドに、女上司から嫌がらせを受けていた落ちこぼれ魔術師文官エリーが秘書官に抜擢されたかと思いきや、時間停止の魔法をかけられて、タイムストップ中にエッチなことをされたりする話。 ※ムーンライトノベルズで1万字数で完結の作品。 ※ヒーローについて、時間停止中の自慰行為があったり、本人の合意なく暴走するので、無理な人はブラウザバック推奨。

スパダリ猟犬騎士は貧乏令嬢にデレ甘です!【R18/完全版】

鶴田きち
恋愛
★初恋のスパダリ年上騎士様に貧乏令嬢が溺愛される、ロマンチック・歳の差ラブストーリー♡ ★貧乏令嬢のシャーロットは、幼い頃からオリヴァーという騎士に恋をしている。猟犬騎士と呼ばれる彼は公爵で、イケメンで、さらに次期騎士団長として名高い。 ある日シャーロットは、ひょんなことから彼に逆プロポーズしてしまう。オリヴァーはそれを受け入れ、二人は電撃婚約することになる。婚約者となった彼は、シャーロットに甘々で――?! ★R18シーンは第二章の後半からです。その描写がある回はアスタリスク(*)がつきます ★ムーンライトノベルズ様では第二章まで公開中。(旧タイトル『初恋の猟犬騎士様にずっと片想いしていた貧乏令嬢が、逆プロポーズして電撃婚約し、溺愛される話。』) ★エブリスタ様では【エブリスタ版】を公開しています。 ★「面白そう」と思われた女神様は、毎日更新していきますので、ぜひ毎日読んで下さい! その際は、画面下の【お気に入り☆】ボタンをポチッとしておくと便利です。 いつも読んで下さる貴女が大好きです♡応援ありがとうございます!

【R18】悪役令嬢(俺)は嫌われたいっ! 〜攻略対象に目をつけられないように頑張ったら皇子に執着された件について〜

べらる@R18アカ
恋愛
「あ、やべ。ここ乙女ゲームの世界だわ」  ただの陰キャ大学生だった俺は、乙女ゲームの世界に──それも女性であるシスベルティア侯爵令嬢に転生していた。  シスベルティアといえば、傲慢と知られる典型的な“悪役”キャラ。だが、俺にとっては彼女こそ『推し』であった。  性格さえ除けば、学園一と言われるほど美しい美貌を持っている。きっと微笑み一つで男を堕とすことができるだろう。 「男に目をつけられるなんてありえねぇ……!」  これは、男に嫌われようとする『俺』の物語……のはずだったが、あの手この手で男に目をつけられないようにあがいたものの、攻略対象の皇子に目をつけられて美味しくいただかれる話。 ※R18です。 ※さらっとさくっとを目指して。 ※恋愛成分は薄いです。 ※エロコメディとしてお楽しみください。 ※体は女ですが心は男のTS主人公です

処理中です...