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本編
9.親睦会おわりっ
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パチリと目を覚ますと既にノーラ様は支度を終えていた。さすがきっちりしていらっしゃる。見習わなければっ。
「おはようございますっ」
素早く支度を済ませて元気に挨拶する。朝のノーラ様も美しい。
「おはよう、ルシア。さ、行きましょうか」
集合時間にはだいぶ早いような気がするのだか、それをノーラ様に聞くと「どこかの誰かが待ちきれずにうずうずしているようだから」と言いながら窓の下を覗いていて。わたしも真似して覗くとそこにはシエル様と眠そうに目を擦っているマルド様。
かわいそうに、マルド様はきっとシエル様に付き合って早起きしたに違いない。
ノーラ様と手を繋いで早足で塔の出口へ向かった。
「おはようルシア。よく眠れたかい?」
「おはよ」
相変わらずキラッキラな笑顔で迎えてくれるシエル様とあくびをしながら挨拶をしてくれるマルド様。なんだか対照的すぎて笑ってしまった。
「おはようございます!」
ノーラ様と繋がれていた手を今度はシエル様と繋ぐ。昨日の話を聞いていると、この程度で済んでいることに感謝しなければ。大人しく許容しよう。
朝食も昨日の昼食と同じようにお弁当形式のようだ。昨日と同じようにシエル様とマルド様が食事を取りに行ってくれて、食事を食べる。朝はシンプルにパンとスープとサラダだったけど、美味しかった。こんな美味しい料理、作れるようになりたいわっ。
今日も楽しく食事をして、おしゃべりして。この一泊二日でかなり打ち解けたと思う。ノーラ様と仲良し作戦も好調だっ。
食事を済ませると点呼が行われる。点呼が終わるとそのまま馬車に詰め込まれて学園まで行くのだった。
楽しかったなぁ。散策はちょっと途中までだったけど、ノーラ様と仲良くなれたし満足だ。
終始にこにこしているわたしに釣られたのか、馬車の中では笑顔で溢れていた。
「それじゃあ、ここで解散だ。今日は疲れていると思うからまっすぐ家に帰るように!」
先生の号令とともに生徒が散り散りとなる。一応帰りの大体の時間は伝えてあるけど、まだ我が家の馬車は来ていないみたい。他の生徒達もそうだったみたいで皆教室で思い出話に花を咲かせていた。
わたし達はみんなでお昼ご飯を食べる部屋まで向かう。
そこには、学年の違うキース様とルドルフ様がいて。
「おかえりなさい」
「楽しかったか?」
って迎えてくれた。キース様、今日は普通にいるんだ……
ルドルフ様は昨日の時点で戻ってきていたらしい。どうやら散策のためだけに付き合わされたのだどか。けれど授業が免除になるので、参加したと教えてくれた。
体調を心配してくれて優しい人だなぁって思った。
一人、また一人と迎えの馬車が来て帰っていく。キース様とルドルフ様も授業の合間に来てくれていたみたいで、授業に戻っている。
現在、この部屋にいるのはわたしとシエル様だけだった。
「迎え来ないね。送って行こうか?」
ギラギラの豪華な馬車で帰っては家の人がひっくり返ってしまう。それに申し訳ない。
「あ、いえ。迎えが来るまで待ってます」
「遠慮しなくていいのに。行こう?」
結局手を引かれて彼の馬車へ乗せられてしまった。
二人並んで馬車に座る。どうにもみんなといる時と違って距離が近い。お互いの体が触れていて、ちょっとだけドキドキした。
「ねぇ、いい加減僕の名前を呼んで欲しいんだけど」
不意に彼が話しかけてくる。その声はちょっと切なそうで。でも黒い空気が見える。これは……強制か?
困惑しているわたし。
握られている手にぎゅっと力がこもるのがわかる。
うう、拒めない。
「わ、わかりましたっ。シエル様とお呼びすればいいですかっ」
その言葉に満面の笑みを浮かべる彼。しょうがないな……なんて思っていたら、馬車は家に着いたようだ。
案の定使用人達やお父様は慌てていてちょっと申し訳ないことをしたなって反省してしまった。
家に着いたわたしはお父様とお話をするために部屋へ向かった。どうにも散策の時のことが気になるのだ。
お父様に今回の親睦会のことを報告し聞いてみる。するとお父様は今まで見たことがないような渋い顔をしていて。
「そのことはもう忘れなさい。それがお前のためだよ」
その一言で話が終わってしまって、結局わたしはそれ以上何も聞くことができなかった。なんだか思い出さないといけないような気がするんだけれど……
きっとお父様が言わないということは使用人達に聞いても教えてはもらえないのだろう、
諦めてとぼとぼと自室へ戻った。
なんだか学園に入学してから自分を取り巻く環境が目まぐるしく変化している。
とりあえず情報を整理しよう。
そう思いながら、新しいノートを手に取り、綴り始めた。
「おはようございますっ」
素早く支度を済ませて元気に挨拶する。朝のノーラ様も美しい。
「おはよう、ルシア。さ、行きましょうか」
集合時間にはだいぶ早いような気がするのだか、それをノーラ様に聞くと「どこかの誰かが待ちきれずにうずうずしているようだから」と言いながら窓の下を覗いていて。わたしも真似して覗くとそこにはシエル様と眠そうに目を擦っているマルド様。
かわいそうに、マルド様はきっとシエル様に付き合って早起きしたに違いない。
ノーラ様と手を繋いで早足で塔の出口へ向かった。
「おはようルシア。よく眠れたかい?」
「おはよ」
相変わらずキラッキラな笑顔で迎えてくれるシエル様とあくびをしながら挨拶をしてくれるマルド様。なんだか対照的すぎて笑ってしまった。
「おはようございます!」
ノーラ様と繋がれていた手を今度はシエル様と繋ぐ。昨日の話を聞いていると、この程度で済んでいることに感謝しなければ。大人しく許容しよう。
朝食も昨日の昼食と同じようにお弁当形式のようだ。昨日と同じようにシエル様とマルド様が食事を取りに行ってくれて、食事を食べる。朝はシンプルにパンとスープとサラダだったけど、美味しかった。こんな美味しい料理、作れるようになりたいわっ。
今日も楽しく食事をして、おしゃべりして。この一泊二日でかなり打ち解けたと思う。ノーラ様と仲良し作戦も好調だっ。
食事を済ませると点呼が行われる。点呼が終わるとそのまま馬車に詰め込まれて学園まで行くのだった。
楽しかったなぁ。散策はちょっと途中までだったけど、ノーラ様と仲良くなれたし満足だ。
終始にこにこしているわたしに釣られたのか、馬車の中では笑顔で溢れていた。
「それじゃあ、ここで解散だ。今日は疲れていると思うからまっすぐ家に帰るように!」
先生の号令とともに生徒が散り散りとなる。一応帰りの大体の時間は伝えてあるけど、まだ我が家の馬車は来ていないみたい。他の生徒達もそうだったみたいで皆教室で思い出話に花を咲かせていた。
わたし達はみんなでお昼ご飯を食べる部屋まで向かう。
そこには、学年の違うキース様とルドルフ様がいて。
「おかえりなさい」
「楽しかったか?」
って迎えてくれた。キース様、今日は普通にいるんだ……
ルドルフ様は昨日の時点で戻ってきていたらしい。どうやら散策のためだけに付き合わされたのだどか。けれど授業が免除になるので、参加したと教えてくれた。
体調を心配してくれて優しい人だなぁって思った。
一人、また一人と迎えの馬車が来て帰っていく。キース様とルドルフ様も授業の合間に来てくれていたみたいで、授業に戻っている。
現在、この部屋にいるのはわたしとシエル様だけだった。
「迎え来ないね。送って行こうか?」
ギラギラの豪華な馬車で帰っては家の人がひっくり返ってしまう。それに申し訳ない。
「あ、いえ。迎えが来るまで待ってます」
「遠慮しなくていいのに。行こう?」
結局手を引かれて彼の馬車へ乗せられてしまった。
二人並んで馬車に座る。どうにもみんなといる時と違って距離が近い。お互いの体が触れていて、ちょっとだけドキドキした。
「ねぇ、いい加減僕の名前を呼んで欲しいんだけど」
不意に彼が話しかけてくる。その声はちょっと切なそうで。でも黒い空気が見える。これは……強制か?
困惑しているわたし。
握られている手にぎゅっと力がこもるのがわかる。
うう、拒めない。
「わ、わかりましたっ。シエル様とお呼びすればいいですかっ」
その言葉に満面の笑みを浮かべる彼。しょうがないな……なんて思っていたら、馬車は家に着いたようだ。
案の定使用人達やお父様は慌てていてちょっと申し訳ないことをしたなって反省してしまった。
家に着いたわたしはお父様とお話をするために部屋へ向かった。どうにも散策の時のことが気になるのだ。
お父様に今回の親睦会のことを報告し聞いてみる。するとお父様は今まで見たことがないような渋い顔をしていて。
「そのことはもう忘れなさい。それがお前のためだよ」
その一言で話が終わってしまって、結局わたしはそれ以上何も聞くことができなかった。なんだか思い出さないといけないような気がするんだけれど……
きっとお父様が言わないということは使用人達に聞いても教えてはもらえないのだろう、
諦めてとぼとぼと自室へ戻った。
なんだか学園に入学してから自分を取り巻く環境が目まぐるしく変化している。
とりあえず情報を整理しよう。
そう思いながら、新しいノートを手に取り、綴り始めた。
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