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本編
7.親睦会2
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食事を終えると散策だ。決められたコースを歩くだけの単純なもので、途中途中に学園側が手配した騎士達がいる。何か不足の事態が起こってもすぐにどうにかなるのだ。それに監督生が各班について歩く。安全対策は万端なのだ。
それにわたしは相変わらずシエル様に手を繋がれている。何か起こるはずもないだろう。
普通の乙女であればきっとこんな美形にドキドキするのであろうが、前世ではどうも顔の整っている人は好きでもなく、素朴な顔の人が好みだった。なのでどんなに顔の整っている人にアピールされても全くときめかなかった。
友人には馬鹿なの? ってよく言われたけど、大概顔の整っている人は性格に難ありなのだ。
そんなこんなで、平然とした表情で手を握っているわたしは前に続いてズンズン歩いている。
そんな中、ふと横を見るとなんだか見覚えのある光景が広がっていた。ぴたりと足を止めて、その場所を凝視する。
「ルシア?どうした」
心配した彼が話しかけてくるけれどわたしはそれどころではなかった。なんだろう……ここ、昔見たような。
多分記憶のない小さい頃の記憶。昔ここで誰かと遊んだような……
ああ……
思い出そうとすると頭が痛くなる。けど、もう少しここにいたら、近づいたらわかるような……
足が自然とそっちへ向かう。誰かがわたしの手を引っ張って、そっちへ行くなと言っているような気がしたけれど、そこでわたしの意識は途切れてしまった。
目を覚ますとどこかに寝かされていた。ここはどこだろうか……
「起きた?体調は?」
そこにはシエル様とノーラ様、マルド様がいた。皆心配そうにわたしを見ている。
あれ、わたしどうしたんだっけ。
ああそうか、子供の頃の記憶を思い出そうと思って……結局思い出せなかった。
「ごめんなさい」
「謝ることはないわ。それよりどうしたの?」
優しげな口調でノーラ様が聞いてくれて、わたしは正直に話すことにした。
「あの景色、見たことがあったような気がして、思い出そうとしたら頭痛が。わたし、小さい頃の記憶、一部だけどないの」
その言葉にみんな驚愕の表情を浮かべた。そんなに驚くようなことかしら……
「もしかして、あの事件の被害者は……」
マルド様の言葉にみんな息を呑む。なんの話だろうか。
「その話は後で。ルシア、とりあえず起き上がれるかい?」
今は頭痛もひいていて特に体調不良もない。すくっと起き上がり、立ち上がって歩いてみる。
うん、特に問題ないみたい。
「大丈夫ですっ」
「じゃあ、ご飯作りに行こうか」
そうだ、夕食はみんなで作らないといけないんだったっ!美味しいものを作れたらいいな。
ウキウキしながら外へ向かった。
材料置き場にはさまざまな食材が置かれていた。わたしは食べるのは好きだけど料理は簡単なものしか作れない。他のみんなはどうなんだろう。
「料理できる人いますか?」
みんなに聞いてみる。が、みんな首を横に振る。どうやら包丁も握ったことがないらしい。
いやしかし、ここには料理人がついている。とりあえず聞いてみよう。
「あの、この班包丁を握ったことがない人が三人いて、わたしも簡単なのしか作れないんですけど……」
「ああ、なるほど。それでは僭越ながら私がお手伝いさせていただきます」
どうやらできない部分は手伝ってくれるらしい。それもそうだ。普通の貴族は趣味でもなければ包丁すら握らない。周りを見ていると野菜を洗ったり、鍋をかき回す程度しかやっていなかった。
それでも包丁で切るくらいならわたしにもできる。
メニューは料理人にお願いして私たちは指示通りにやってみることにした。
包丁を握ったことのない三人はひたすら野菜を洗っていた。わたしは料理人の人に教えてもらいながら包丁を使う。途中で何度もシエル様に心配されたけど。一人暮らし歴の長いわたしはこのくらいできるのだ。サクサク具材をきり、鍋に入れる。火加減や味付けは料理人にやってもらった。
肉の塊をじっくり煮込んでいる間、交代で鍋を見たり、野菜を切る練習をしたりとそれぞれが楽しく時間を過ごした。
流石にアツアツのお肉を切るのおはシエル様に強く止められてしまって結局料理人に切ってもらった。
ああ、あの断面とこんにちはしたかったのに……
そのままみんなでワイワイ話しながら楽しく食事をしたのであった。
いよいよ夜だ。泊まるところは二つの塔で分かれていて、女子と男子はそこで区切られているらしい。その分かれ道でシエル様は部屋まで送っていくと聞かなかったけれど、ノーラ様が冷たい目で「わたくしが一緒に行きます。ちゃんと手も繋いでいきますからとっとと行きなさい」と言ったら渋々男子の方の塔へ向かった。
おおう。どうやらノーラ様の方がシエル様より強いみたい。面白いものを見たなんて思いながら、割り当てられた部屋へ二人で手を繋いで向かった。
それにわたしは相変わらずシエル様に手を繋がれている。何か起こるはずもないだろう。
普通の乙女であればきっとこんな美形にドキドキするのであろうが、前世ではどうも顔の整っている人は好きでもなく、素朴な顔の人が好みだった。なのでどんなに顔の整っている人にアピールされても全くときめかなかった。
友人には馬鹿なの? ってよく言われたけど、大概顔の整っている人は性格に難ありなのだ。
そんなこんなで、平然とした表情で手を握っているわたしは前に続いてズンズン歩いている。
そんな中、ふと横を見るとなんだか見覚えのある光景が広がっていた。ぴたりと足を止めて、その場所を凝視する。
「ルシア?どうした」
心配した彼が話しかけてくるけれどわたしはそれどころではなかった。なんだろう……ここ、昔見たような。
多分記憶のない小さい頃の記憶。昔ここで誰かと遊んだような……
ああ……
思い出そうとすると頭が痛くなる。けど、もう少しここにいたら、近づいたらわかるような……
足が自然とそっちへ向かう。誰かがわたしの手を引っ張って、そっちへ行くなと言っているような気がしたけれど、そこでわたしの意識は途切れてしまった。
目を覚ますとどこかに寝かされていた。ここはどこだろうか……
「起きた?体調は?」
そこにはシエル様とノーラ様、マルド様がいた。皆心配そうにわたしを見ている。
あれ、わたしどうしたんだっけ。
ああそうか、子供の頃の記憶を思い出そうと思って……結局思い出せなかった。
「ごめんなさい」
「謝ることはないわ。それよりどうしたの?」
優しげな口調でノーラ様が聞いてくれて、わたしは正直に話すことにした。
「あの景色、見たことがあったような気がして、思い出そうとしたら頭痛が。わたし、小さい頃の記憶、一部だけどないの」
その言葉にみんな驚愕の表情を浮かべた。そんなに驚くようなことかしら……
「もしかして、あの事件の被害者は……」
マルド様の言葉にみんな息を呑む。なんの話だろうか。
「その話は後で。ルシア、とりあえず起き上がれるかい?」
今は頭痛もひいていて特に体調不良もない。すくっと起き上がり、立ち上がって歩いてみる。
うん、特に問題ないみたい。
「大丈夫ですっ」
「じゃあ、ご飯作りに行こうか」
そうだ、夕食はみんなで作らないといけないんだったっ!美味しいものを作れたらいいな。
ウキウキしながら外へ向かった。
材料置き場にはさまざまな食材が置かれていた。わたしは食べるのは好きだけど料理は簡単なものしか作れない。他のみんなはどうなんだろう。
「料理できる人いますか?」
みんなに聞いてみる。が、みんな首を横に振る。どうやら包丁も握ったことがないらしい。
いやしかし、ここには料理人がついている。とりあえず聞いてみよう。
「あの、この班包丁を握ったことがない人が三人いて、わたしも簡単なのしか作れないんですけど……」
「ああ、なるほど。それでは僭越ながら私がお手伝いさせていただきます」
どうやらできない部分は手伝ってくれるらしい。それもそうだ。普通の貴族は趣味でもなければ包丁すら握らない。周りを見ていると野菜を洗ったり、鍋をかき回す程度しかやっていなかった。
それでも包丁で切るくらいならわたしにもできる。
メニューは料理人にお願いして私たちは指示通りにやってみることにした。
包丁を握ったことのない三人はひたすら野菜を洗っていた。わたしは料理人の人に教えてもらいながら包丁を使う。途中で何度もシエル様に心配されたけど。一人暮らし歴の長いわたしはこのくらいできるのだ。サクサク具材をきり、鍋に入れる。火加減や味付けは料理人にやってもらった。
肉の塊をじっくり煮込んでいる間、交代で鍋を見たり、野菜を切る練習をしたりとそれぞれが楽しく時間を過ごした。
流石にアツアツのお肉を切るのおはシエル様に強く止められてしまって結局料理人に切ってもらった。
ああ、あの断面とこんにちはしたかったのに……
そのままみんなでワイワイ話しながら楽しく食事をしたのであった。
いよいよ夜だ。泊まるところは二つの塔で分かれていて、女子と男子はそこで区切られているらしい。その分かれ道でシエル様は部屋まで送っていくと聞かなかったけれど、ノーラ様が冷たい目で「わたくしが一緒に行きます。ちゃんと手も繋いでいきますからとっとと行きなさい」と言ったら渋々男子の方の塔へ向かった。
おおう。どうやらノーラ様の方がシエル様より強いみたい。面白いものを見たなんて思いながら、割り当てられた部屋へ二人で手を繋いで向かった。
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