上 下
22 / 43

22

しおりを挟む
 少しベッドで休んでから起きあがろうとしたんだけど、体に力が入らなくて起き上がれなかった。彼はそんなわたしを見てくすくす笑って抱き上げてくれる。そこで初めてお互い何も着ていないことに気づき、顔が真っ赤になった。
 そのまま浴室に連れられる。二人で体を洗ってお湯に浸かる。
「こんなに動けなくなるとは思わなかった……」
 ポツリと呟いた言葉は彼にはしっかり聴こえていたようで
「だいぶ加減したんだが」
 なんて恐ろしいことを言っていた。
 これで加減してるって何? 加減しなかったらどうなってたのよー!

「セリーヌが可愛いのが悪いんだ。とことん可愛がりたくなる」
 わ、わたしが悪いのか……どうしようもない。
 ここにきて初めて諦めるという選択をした瞬間だった。

 なかなか体が言うことを聞かなくて、しょうがなくもう一泊していくことになった。キスしようとしてきたけど、明日帰れないと困るのは彼だ。心を鬼にしてキスを拒み、自分の部屋でベッドに横になる。
 でも結局彼が迎えにきて一緒に眠った。流石にただ一緒に眠っただけだったけど。



 
 三日ぶりに屋敷へ帰るとなぜか部屋が変わっていて、彼の隣の部屋になっていた。別荘と同じく扉で繋がっている。
 思わずお義兄様をみると意地悪な笑顔でこちらを見ていた。
「まぁよかったじゃないか」
「よくないわよ!なんかひどくなったじゃない……」
 そんなわたしを笑い続けるお義兄様をじっと睨んでいた。


 ある日のお昼頃。
 今日は王妃様とのお茶会の日だ。金色の刺繍の入ったドレスにブルーダイヤモンドのイヤリング。何度か着ているうちにドレスにも慣れてきた。
「あらあらまぁまぁ。ずいぶん仲良しになったのね」
 一緒に来ていた彼が仕事で抜けた瞬間、王妃様がキラキラした目でこちらを見てきた。
「……はい。いつの間にかこうなってました」
 ところ構わずキスをしてくるし、さっきだって王妃様の前なのに……!
 王妃様はそんなわたしを楽しそうに眺めている。
「良かったわねぇ。幸せそうじゃない」
 そう、なんだかんだ言って幸せなのだ。恥ずかしい思いもたくさんしたけれど、どれも嫌じゃない。むしろ受け入れてしまっている。

「もう結婚しちゃったら?とてもお似合いよ」
 その言葉にぼっと顔が赤くなる。結婚、できたらいいな。前世ではお付き合いしてもなかなか結婚までいかなことが多いのだ。この幸せがいつまで続くかもわからない。
 飽きられないようにしなければ……!
「あの、長く続く秘訣ってなんですか?王妃様と陛下はとても仲がいいと聞きました。何かあれば教えてください!」
「そうねぇ。まずはお互い全て曝け出すことかしら?偽ったままの自分を好きになってもらったら後が辛いわ」
 頷きながら真剣に話を聞く。
「それから思いっきり甘やかすことかしら?案外殿方は甘えたくても素直に甘えられないものよ」
 甘やかす……むしろ甘やかされているのはわたしの方な気がする。どうやったら甘えてもらえるんだろう。
「後は、頼ってあげること。頼られると守ってあげなきゃって思うみたい」
 なるほど。それはわかる気がする。誰かに頼られるって嬉しいものだ。

「甘やかすって言うのがわたしには難しくて……具体的にどうしたらいいんでしょうか」
「そうねぇ」
 そこからわたしは王妃様直伝の甘やかす作戦を実行することに決めた。

 ーーそんなわたし達の様子をじっと見つめている人がいた。




 家に帰るとわたしはお義兄様を捕まえる。王妃様と同じ質問をして、アイディアを得るためだ。
 終始笑っているけど気にしない。
「お前に飽きることはないと思うけどなぁ。そのままでいいよ」
 なんだか役にたたなそうなアドバイスに意義を申し立てる。具体的に聞きたいのだ。男性からの意見として。
「んー、セリーナから触れたらあいつは絶対喜ぶな。後は、甘えてみるとか?」
 なるほど。確かに何をするにも彼からだ。それは試してみても良さそうだ。
 甘えてみる……十分甘やかされている気もするけど。
「甘えてみるって具体的には?」
「キスして欲しいとか触って欲しいとか?そばにいて欲しいなんて言ったらイチコロだな」
 なるほど。今度やってみよう。


 次は侍女のソフィアだ。
「そうですね……たまには際どい下着を着てみたり、自分から男性に触れて見るとかですかね?たまーにやるのがいいみたいですよ」
 服は着るだけだし、触れるのもできそうだ。

 いろいろな人に聞いて回ったアドバイスをもとに、実行すると決めた。
 後々大変なことになるのだが、この時のわたしは知る由もなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...