ゲノム～失われた大陸の秘密～

第四章【メガラニア王国編】

再会

「あれ、どうして俺寝てたんだ？」
突然、村田が何事もなかったかのように体を起こす。
その声は軽く、まるで眠りから目覚めたばかりのようだった。
彼の無造作な言葉が、状況の異常さを際立たせた。

「はえっ？」
ケイラは驚きのあまり、変な声を出してしまう。
自分の目の前でありえないことが次々に起こり、頭が追いつかない。

「そうだ、ライト！ライトはどうしたんだ！？」
村田は突然焦ったように声を荒げ、周囲を見渡しながらライトの姿を探した。

「あ..ライトなら大丈夫、今は寝ちゃってる。彼があいつを倒したのよ」
ケイラは、村田を安心させるために落ち着いた声で答える。
彼女の表情には安堵が浮かんでいたが、内心ではまだ事態の異常さに戸惑っていた。

「そうか、あいつ頑張ったんだな。ならよかった..」
村田は、肩の力を抜き、深いため息をつく。
安堵の中に、ライトが戦いを通して成長したことを感じ取り、どこか誇らしさを感じている様子だった。

だが、その瞬間、ケイラの顔が急に険しくなり、怒りがこみ上げてくる。
「いやというか..心配かけんじゃないわよ！無事ならさっさと目ぇ覚ましなさい！！」
彼女は怒鳴りつけると同時に、彼の頬に全力で平手打ちをお見舞いした。

「ぐふぉあ！？なんだよいきなり！」
村田は頬を抑える

「こっちは本気で心配したのよ！」
ケイラは村田を睨みつけながら、口元をきゅっと結んだが、その目には安堵が浮かんでいた。

「...悪かったな、心配かけて」
その言葉に、ケイラも少しだけほっとした表情を見せる。

その時、ジレが静かに口を開いた。
「あんた、いや..村田さん。無事、なんだな。ありがとう、あんたらにはとんでもない貸しができちまったな」
ジレの声は低く、静かだったが、その言葉には感謝と尊敬が込められていた。

「そういえば、弟さんは..」
村田は、ジレの弟のことが気になり、控えめに尋ねた。

「あぁ..あんたでも治せなかったんだ、即死だったんだろうな」
ジレは苦しそうに一度目を閉じ、背中でぐったりとしているリオの体を再び見た。
彼の声には、悲しみが漂っていたが、その言葉にはどこか諦めと受け入れの気持ちが含まれていた。

「そう、だったのか..すまない、力になれなくて..」
村田の声には深い後悔と悲しみが込められていた。
何もできなかった自分に対する苛立ちと、目の前で失われた命に対する無力感が胸を締めつける。
彼はジレの目をしっかりと見つめ、真摯に頭を下げる。

ジレは静かに首を振り、重たく息を吐く。
「元々俺が勝負を吹っかけたのが原因だ、気にしないでくれ」
その言葉には、彼自身の責任を感じている様子があったが、
それでも感謝の気持ちを隠すことはなかった。
彼は少し笑みを浮かべると、マラキの服に仕舞われていた魔法銃を取り出した。

「..そうだ、俺らの車だが、あんたらにやるよ。あと、これも」
彼はその銃を村田に向かって投げた。

村田は驚きながらも、その銃をしっかりとキャッチした。

「魔法銃だ、護身用として持っておくといい。あぁすまん、こっちは渡せない....弟の形見だからな」
彼は自分が持っていたもう一つの銃を見つめながら、静かに言った。

「ありがとう、だがこれからどうするんだ？」

村田はジレに問いかけたが、その答えを待つ前に、ケイラが急に焦った様子で言葉を挟んだ。
「村田、もう行きましょう」

村田はその言葉に何かを感じ取り、深くうなずく。

「おう、そっちも..元気でな」
ジレは少し微笑んで、三人を見送った。