ゲノム～失われた大陸の秘密～

第四章【メガラニア王国編】

決着

マラキの体は揺らぎ、糸鋸はケイラの首から外れる。
彼は数歩後退し、膝をつくように崩れ落ちた。

「あ、ぁぁ..イブ..君は暖かいなぁ..僕は..冷たいのは..もう....嫌だ..」
彼が最後に口にしたその言葉は、狂気と孤独に染まりながらも、どこか切なさが漂っていた。

ライトは、その姿をただ黙って見つめていた。
自分の目の前でマラキが命を失っていく光景に、何か言葉を発することができなかった。
村田が生きているというマラキの言葉が、
ただの虚言だったことに気づき、胸の中にじわじわと絶望感が広がる。

「あ、あんた..生きていたの？」
ケイラはやっと声を絞り出すように言った。

「あ..あぁ、なんとかな..それより、そっちの男は大丈夫なのか？」
ジレはケイラを見つめ、村田の無事を気にかけるように問いかけた。

ケイラはその問いに応えることなく、暗い表情で下を向き、村田の無惨な姿をじっと見つめる。

「そうか..」
ジレはその様子を見て、言葉を失い、ただ黙って頷いた。

その時、ふとライトがぐらりと揺れ、膝を崩して倒れ込んだ。

「ラ、ライト君！！」
ケイラは瞬時に反応し、咄嗟に体を起こして右足を引きずりながらライトの元へと駆け寄る。
焦りと不安が彼女の胸を締め付け、全身に冷たい汗が流れた。

「だ、大丈夫..ちょっと頭が痛いだけ..だから。それよりもシュンを、早く..」
ライトはかすれた声で辛うじて言葉を紡ぎ、必死に意識を保とうとしていた。
彼の顔には疲労と痛みが滲んでおり、瞳の輝きは弱々しかった。

「..わかった」
ケイラは息を整え、冷静に返事をした。

彼女はライトを見守りながらも、心の中に焦りを抱えたまま村田の元へ向かう。
横にしゃがみ込み、村田の顔を見つめると、彼の額にかかった髪をそっと右手で搔き上げた。

「あ....れ？な..無くなってる..銃創が..間違いなくここを撃たれたはずなのに」
ケイラの声には驚愕が混じっていた。
混乱したように村田の額を何度も撫でるが、確かに撃たれたはずの傷跡が、どこにも存在していない。

「傷..？あれ！？私の右手が..生えてる？」
ケイラはふと自分の右手に目をやり、驚愕に目を見開いた。
切断されたはずの右手が、今は完全に元通りになっているのだ。