ゲノム～失われた大陸の秘密～

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第三章【パシフィス王国編】

メガラニアへ

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店長から自動車の操縦、ボイラーへの給水や加熱の方法、蒸気圧メーターの見方、
そしてバルブやブレーキの操作について詳しく教えてもらう。
村田は真剣な表情で説明を聞き、メモを取りながら頷いていた。
ケイラもそばで熱心に聞き入り、ライトはその様子を興味津々で見守っていた。

「じゃ村田、運転は任せたわ」
ケイラは村田に向かって笑顔で言った。
彼女の自信に満ちた笑顔は、彼に安心感を与えるはずだったが、村田は逆に驚きを隠せなかった。

「えっ！？これって免許とか必要な奴じゃないのか？もしそうなら俺持ってないぞ..」
村田はケイラの提案に驚き、心配そうに眉をひそめた。

「私が持ってるから村田が運転する分には問題ないわ。蒸気自動車は免許保有者が同乗してればOKなの、速度もそんなに出ないしね」
ケイラは自信満々に説明した。
その言葉に少し安心したものの、村田はまだ疑問が残っていた。

「なるほどな、それでなんで俺が運転を？もちろんこれの運転経験なんてないし危ないぞ」
村田は疑問がさらに深まり、ケイラに問いただす。
彼の心の中には、未知の運転に対する不安が渦巻いていた。

「さっきね、運転席座ってみたの。そしたらあの車....シート前に動かせなかったのよ..」
ケイラは若干恥ずかしそうに言う。
彼女の顔には赤みがさし、言葉を選ぶようにしていた。

「..シート？あぁ....そういうことか。じゃあ俺が運転するしかないな、サポートは頼んだぞ」
村田はケイラの様子からなんとなく察し、引き受けることにした。
彼の表情は少し柔らかくなり、責任感が湧き上がってきた。

「悪いわね..操作とか道案内は任せてちょうだい」
ケイラは申し訳なさを感じつつ、自分の役割を全うすることを伝えた。

「ねー、どうやって水入れるのー？」
ライトはアクアの魔法でボイラーへ水を入れようとしていた。

「はいはい、ちょっとお待ち」
ケイラは急いでボイラーの給水口に駆け寄り、ライトの動きをサポートしようとした。

「まずボイラーの蓋を開けて..と、ここから入れて」
ケイラはライトに向かって説明しながら、ボイラーの蓋を片手で持ち上げる。

ライトはその指示に従い、アクアの魔法で水をボイラーに注ぎ始める。
彼の手から流れる水は透明で美しく、ボイラー内に満ちていった。

「いい感じね。そしたら燃焼室に火をつけましょ」
ケイラはボイラーの後部にある燃焼室を開くために動いた。

「どれくらいの火力がいいかな？」
ライトは燃焼室に手を入れながら、ケイラに問いかけた。

「基本的に火は絶やさないでほしいけど、ライト君が長時間維持できる火力で大丈夫よ」
ケイラは優しく答える。
その声には彼に対する信頼と配慮が感じられ、彼女の表情には少しの安心感が漂っていた。

「わかった！じゃあこれくらいかな..」
ライトは元気に返事をすると、自分の顔の同じくらいの大きさのファイアを使用した。
炎が燃焼室に入り、ボイラー内の水が次第に加熱されていった。

「あ、結構強いのね..まぁ維持できるならいいか」
ケイラは驚きながらも、ライトの能力に感心していた。

一方の村田は運転席に座りながら、教わった操作の確認を続けていた。
彼の眉間には再びしわが寄り、真剣な表情で手元のバルブやペダルを見つめていた。

ケイラが運転席の蒸気圧メーターを見ながら村田に話しかける。
「そろそろエンジン始動できそうね、もういけそう？」

「大丈夫だ。ええと、ここのバルブを回すんだよな..」
村田は覚悟を決める。
手が少し震えたが、深呼吸をして気を落ち着かせた。

「あっちょ回しす――」
ケイラが言い終わる前に村田はバルブを回した。

突然ボイラーから発生した蒸気が配管を通ってエンジンへと一気に送り込まれる。
エンジンが激しく反応し、車体を大きく揺らしながら蒸気自動車は急発進した。

「ええぇ！？」
村田は驚き、足をブレーキペダルに乗せたが、車は勢いよく前進し続けた。

「うぇあああああああ！？」
ライトがごろりと転倒し、驚きの声を上げた。
彼の小さな体が車内で転がり、必死に何かに掴まろうとする。

「ブレーキブレーキ！」
ケイラは叫びながらバルブを急いで閉めようとした。

村田は必死にブレーキペダルを踏み、徐々に速度を落とし始める。
車体が揺れながらも、なんとか制御を取り戻すことができた。

「すまん..バルブ開けすぎたか」
村田は呼吸が乱れていた。
顔は青ざめ、汗が滴り落ちていた。

「ほぼ全開にするなんて、中々やるわね..ほら、最初はこんくらい開ければいいの」
ケイラは息を吐き、安心しながらバルブをゆっくりと開けた。

今度はゆっくりと蒸気が送り込まれ、エンジンがスムーズに動き出すのを感じた。
機械の音が静かに響き、車は穏やかに前進し始めた。

「びっくりした..けど動いてるね！」
ライトが起き上がりながら言う。
彼の顔にはまだ驚きの色が残っていたが、次第に笑顔が戻ってきた。

「これもライト君のお陰よ。さぁ、改めてメガラニアへ出発としましょう！」
ケイラはライトに感謝し、村田の肩を強く叩いた。

「だな、行くぞ！」
村田はハンドルをがっちりと握り、再び前方を見据える。
彼の表情には決意と冷静さが戻っていた。

「あ、その前に私の家に寄ってほしいわ。服持っていかないと」
ケイラは思い出したかのように言う。

「なんかお腹空いたな～」
ライトが唐突に言った。
その顔には無邪気な笑顔が浮かんでいた。

「えぇ....仕方ないな、ケイラの家に寄ったらアップルパイでも食べに行くか」
村田は突然の提案に困惑しつつも、仲間たちの笑顔に心を和ませる。

車は穏やかに動き出し、彼らの冒険は再び始まった。
希望と期待が彼らの胸を満たし、旅路が新たな物語を紡ぎ出していく。

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