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第三章【パシフィス王国編】

破られた静寂

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リゼルタの講演が終わり、夕暮れ時になるとライトと村田は宿に戻った。
オレンジ色の夕陽が窓から差し込み、部屋の中に柔らかな影を作っていた。

「あー悔しい!!どうして当てられなかったんだぁ~」
ライトはベッドに飛び込むと、ジタバタと手足を動かして不満を露わにした。
顔を枕に押し付け、拳でベッドを叩きながらその苛立ちをぶつけている。

村田はベッドの端に腰掛け、微笑みながらライトを見つめた。
「あれは完全に遊ばれてたな。けど、最後の一撃は結構焦ってたっぽいけどな」
と優しい声で言いながら、ライトの肩を軽く叩いた。

ライトは顔を上げ、少しだけ涙目になりながら村田を見た。
「だよねーあれどうやって防いだんだよ~」
彼の声には混乱と悔しさが入り混じっていた。

村田はライトがここまで悔しがっている様子を見るのは珍しいと感じつつ、
その気持ちが彼の成長に繋がると確信していた。

村田はその姿にほほ笑みつつ、少し真剣な表情に変わった。
「そうだライト、明日ケラプさんのカフェでケイラと会う予定だ..一応もう一度確認するが、大丈夫か?」
その声にはライトを気遣う思いが込められていた。

ライトは一瞬考え込んだ後、目を輝かせてしっかりと頷いた。
「うん、大丈夫だよ」
と自信に満ちた声で答えた。

「うし、わかった。まあ今日は疲れたしさっさと寝るか」
村田はベッドから立ち上がり、カーテンを引いて部屋を暗くした。
ライトもベッドに潜り込み、まだ心の中でリゼルタとの戦いを反芻しながら、ゆっくりと瞼を閉じた。

夜も更け、宿の周囲は静まり返っていた。
ライトと村田が疲れ果てて眠りに落ちている中、宿の窓の外に不穏な影が動く。
月明かりが薄く照らす中、その影は宿の壁にぴったりと張り付いていた。

ライトは夢の中でリゼルタとの戦いを繰り返しながら、ベッドの上で微かに寝返りを打った。
夢の中では魔法の炎が激しく燃え上がり、リゼルタの冷静な顔が浮かんでは消えていく。
その隣で村田も深い眠りに落ちており、
顔には一日の疲れが刻まれ、安らかな寝息が静かな部屋に響いていた。

部屋の静寂を破るかのように、窓の外から微かな物音が聞こえた。
鍵を静かに開ける音だ。ライトの夢は一瞬途切れ、無意識のうちに眉をひそめた。
侵入者たちは手際よく窓を開け、ほとんど物音を立てずに部屋の中に忍び込んだ。

ライトのベッドに近づくと、一人の生徒が布団を引き剥がし、もう一人が布を持ってライトの口を塞いだ。
ライトは驚いて目を覚まし、もがこうとしたが、強い力で押さえつけられて動けない。
恐怖と混乱が彼の目に浮かび、心臓が激しく鼓動するのが感じられた。

「..ん..だ、誰だお前ら!?」
村田は目が覚め、ライトを押さえつけている人物を目の当たりにして声を荒げた。
そこには全身に黒いローブを纏った3人の男の姿があった。
彼の頭にはまだ眠気が残っていたが、状況を理解するのに時間はかからなかった。

侵入者の一人が村田に向かってウィンドを放つ。
彼は反射的に腕を上げて防御しようとしたが、間に合わず強烈な風圧により彼は壁に叩きつけられる。

「ぐぁっ!!」
村田は苦痛の声を上げ、背中に鋭い痛みが走る。
壁に激突した衝撃で一瞬意識が遠のきそうになったが、必死に意識を保とうとした。
彼の視界は揺れ、耳鳴りがする中でライトの叫び声が聞こえた。

「おい、連れて行くぞ!」
侵入者の一人が言い、ライトを引きずり出そうとした。
ライトは必死にもがき、腕や足を振り回して抵抗したが、その力は圧倒的に足りなかった。
恐怖と無力感が彼を包み込み、必死に助けを求めるように村田を見つめた。

その時、窓の方から冷たい声が響いた。
「あら?先客がいたのね」

侵入者たちは驚いて窓に目を向ける。
そこには白いスカーフとアイボリーカラーのロングドレスを身に纏った女性の姿があった。
彼女の眼差しは冷たく鋭く、唇には薄い微笑が浮かんでいた。
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