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第三章【パシフィス王国編】

擬態

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ケラプは慎重にケイラの家の屋根に着地した。
月明かりが照らし出す中、マチェーテを手放し、ぐったりと倒れているケイラの姿が目に入る。
一見、戦いの疲労で力尽きたように見えたが、ケラプは油断しなかった。

ゆっくりとケイラに近づくと、突然ケイラは猛烈な勢いで起き上がり、
ケラプの首を狙ってマチェーテを振り切った。
死んだふりをしていたのだ。
ケイラの策略に完全には乗らなかったケラプだが、それでも予期せぬ攻撃に少しだけ反応が遅れた。
しかし、彼女の戦闘経験と直感が、致命傷には至らないように体を引かせた。
その結果、ケラプが受けたのは浅い傷だけだった。

「死んだふりか..だろうと思ったが」
ケラプは冷静につぶやく。その声には軽い嘲笑が含まれていた。

「あら?バレバレだった?」
ケイラは演技を楽しんでいるかのように応じる。

「拳が当たった時、違和感があった..何をした?」
ケラプが問い詰める。
彼女の声には好奇心と警戒が混ざり合う。

「さぁ、なんでしょうね?」
ケイラは挑発的に笑う。

「まぁせっかくだしもっとヒントを見せてあげるわ」
その瞬間、ケイラは目にも留まらぬ速さで姿を消し、建物間を超高速で移動し始める。
その速さは、目で追うことさえ難しい。

周囲を慎重に警戒し、次なる動きを見極めようとするケラプの緊張が、夜の空気を一層冷やす。
突如として訪れる静寂が、予期せぬ緊張を誘う。
その沈黙を破るかのように、彼女は直感的に背後の気配を捉える。

「...!」
という短い驚きを抱きながらも、ケラプは瞬間的に反応し、身体を素早く反転させる。
だが、ケイラのマチェーテは既に彼の背中をかすめ、
その鋭い刃が夜の静寂を切り裂く音が、一瞬の平和を乱した。
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