ゲノム～失われた大陸の秘密～

第一章【イファスアの街編】

1年後の2人

大陸に来てから１年後、村田は相も変わらずライトの魔法の特訓に付き合っていた。
そしてこの「村田的あてゲーム」も何回ものテストプレイを経て以下ルールが制定されていた。

・使用する属性は水のみ
・村田は同じ木に5秒以上隠れ続けてはならない
・ライトは半径2mの円の中でのみ移動可能
・ライトが村田に魔法を命中させる又は村田がライトの体にタッチすれば終了

ゲームのルールはシンプルだが、
ライトの魔法の練習には最適で、村田の身体能力向上にも一役買っていた。

ライトは集中して円の中央に立ち、村田の動きを目で追っていた。
彼の手からは水の魔法が絶え間なく放たれ、村田を捉えようとしていた。

一方村田は5秒ルールを頭に留めながら木から木へと機敏に移動し、
ライトの攻撃を巧みに避けていた。
村田は小石を拾い上げると、ライトの後方目掛けて高く投げ上げた。
（なんやかんや1年くらいやってるが、勝てたことはない。..これであいつに一泡吹かせられればいいが）
石の落下と同時にライトに向かって走り始めた。

ライトの体がぴんと張り詰め、物音に反応して瞬時に振り向いた。
彼の目には一瞬の迷いもなく、直感的に水の魔法を放った。

「あれ？確かに音がしたんだけど....!?」

その瞬間、既に村田があと数10cmのところまで迫っていることに気付いた。

（この距離なら狙いを定める時間はない、勝った！）
村田は勝利を確信し、ライトの左肩を掴もうとした。

ライトは一瞬驚きながらもすぐに笑みを取り戻し、左肘の先を村田に向けた。
その瞬間、森は巨大な水の衝撃波に包まれ、村田はその力によって数メートル吹き飛ばされた。

「やった、また僕の勝ちだね！ってシュン大丈夫！？」
ライトは村田が無事であることを確認するためにすぐさま彼のもとへ駆け寄った。

村田は土にまみれながらも、苦笑いを浮かべた。
「肘からも打てるんかい..」
と驚きつつも、ライトの成長を認めた。

「最近練習してできるようになったんだ、さっきは威力まで調整する余裕がなくて..」
ライトは申し訳なさそうに説明した。

「別に怪我とかは大丈夫だ、いやーあれは勝ったと思ったんだがなー」
村田は衣服を払いながら言った。

「正直こんな近くまで来てるとは思わなかったよ、１年前より強くなってるね！」
ライトは村田を見つめ、彼の成長に敬意を表した。

村田は勝負に負けた悔しさを感じつつも、自分の成長を認められ満足感に満ちていた。
彼らの間の絆は、この特訓を通じてさらに強固なものになっていた。