63 / 74
君恋7
7-2
しおりを挟む
「お前みたいに慌てふためくと、余計怪しまれるんじゃないのか。ま、俺はどう取られても構わないが」
「んな……っ!」
(なんて奴だ! 仲間に誤解されてもいいっていうのか!?)
怒りやら恥ずかしさやらが入り混じって顔が熱い。
そんな俺とは反対に、榊さんの表情に変化はない。
「そもそも、津田は冗談で言っただけだろう。そうやってムキになる方がおかしいぞ。――それとも、」
俺の耳元に榊さんの顔が寄り、
「……ムキになる理由でもあるのか?」
と囁いた。
(~~~な、なんなんだよそれはっ!! あるわけねーだろそんな……っ)
かあぁ、と熱が上昇し、変な震えが背中を伝った。
何か言い返したいのに、言葉が全然出て来ない。
息の触れた、真っ赤であろう耳を押さえて榊さんを睨むと、余裕な笑みが返って来た。
それがまた更にムカついた。
向かいからは津田のクスクスと笑う声が……。
「榊店長、そんなにからかったら英店長が可哀想じゃないですか」
榊さんの言うとおり、津田は俺達の隠れた感情までは気付いちゃいない。
だから、榊さんが俺をからかう……というより構う理由も、俺しか感じ取ることはできない。
(ムキになるなって方が無理だろ……こんなのッ。この人は、俺の事好きなわけだし。そんなこと聞かされて意識しない人間なんて……)
――自分も気になっているから変に意識してしまうのか……――。
(え……ちょっと待て! 今、何に気付いた? 何考えてんの俺!!)
テーブルに置いた拳に力を入れる。
(なんか、今日の俺おかしくないか? すげぇ、息苦しい。病気か? ……小笠原が何かやらかす前兆とか……)
混乱のあまり、まったく話に入っていない小笠原を勝手に巻き込む始末。
(もう、どうしたらいいのか考えても無駄なのか………)
溜息をつき、最後のクロワッサンを口に運ぶ。
その時、誰かがこっちを見ている気がして視線を少し遠くへ巡らせた。
(……片山さん?)
しかしその視線は直ぐ外されてしまった。
何か言いたげな感じだったが、たまたま目が合っただけかもしれない。
俺はあまり深く取らずに食事は再開した。
「あー、朝から食べ過ぎた~~~」
レストランを出ると両腕を上げて伸びをしながら小笠原が零した。
「バス酔いするなよ?」
「あ、それは大丈夫っス。オレ、車酔いとかしたことないんで」
「あぁ、確かにそんな感じだよな、お前は」
(心配して損した)
マイクロバスに乗り込んだ俺達は、旧軽井沢へと向かった。
バスから降りて少し歩くと、一本の道を挟んで個々の店が連なった光景が広がった。
夏休み明けて少しは空いているかと思ったが、天気がイイせいか思ったより人が出ている。
俺の隣に並んだ木村さんが、いつもより二割増しの微笑みを浮かべた。
「こういった小ぢんまりとしたお店も、趣きがあっていいですねえ」
「そうですね。都会とはまた違った雰囲気があって和むというか……」
俺の言葉に、木村さんがはっはっはと気持ち良く笑う。
「英店長も、分かりますか」
「ええ、普段見られるものじゃないですから、余計に」
「そうなんですよねぇ。都会も悪くはないですが、やはり、こういう風景も恋しくなりますね。――あ、ちょっとこのお店ゆっくり覗いていいですかね?」
「あ、はい、どうぞ。自由行動なので決まった時間に集合場所に来てもらえれば何処へ行っても問題ないですよ」
「それじゃあ、また後で」
木村さんと別れて先を歩く。
他のメンバーも各々観光を楽しんでいるようだ。
少し前方から小笠原と高屋の声が聞こえてきた。
(やたら目立つな、アイツ等は……)
見た目もそうだが、いろんな意味で悪目立ちしている。
「んな……っ!」
(なんて奴だ! 仲間に誤解されてもいいっていうのか!?)
怒りやら恥ずかしさやらが入り混じって顔が熱い。
そんな俺とは反対に、榊さんの表情に変化はない。
「そもそも、津田は冗談で言っただけだろう。そうやってムキになる方がおかしいぞ。――それとも、」
俺の耳元に榊さんの顔が寄り、
「……ムキになる理由でもあるのか?」
と囁いた。
(~~~な、なんなんだよそれはっ!! あるわけねーだろそんな……っ)
かあぁ、と熱が上昇し、変な震えが背中を伝った。
何か言い返したいのに、言葉が全然出て来ない。
息の触れた、真っ赤であろう耳を押さえて榊さんを睨むと、余裕な笑みが返って来た。
それがまた更にムカついた。
向かいからは津田のクスクスと笑う声が……。
「榊店長、そんなにからかったら英店長が可哀想じゃないですか」
榊さんの言うとおり、津田は俺達の隠れた感情までは気付いちゃいない。
だから、榊さんが俺をからかう……というより構う理由も、俺しか感じ取ることはできない。
(ムキになるなって方が無理だろ……こんなのッ。この人は、俺の事好きなわけだし。そんなこと聞かされて意識しない人間なんて……)
――自分も気になっているから変に意識してしまうのか……――。
(え……ちょっと待て! 今、何に気付いた? 何考えてんの俺!!)
テーブルに置いた拳に力を入れる。
(なんか、今日の俺おかしくないか? すげぇ、息苦しい。病気か? ……小笠原が何かやらかす前兆とか……)
混乱のあまり、まったく話に入っていない小笠原を勝手に巻き込む始末。
(もう、どうしたらいいのか考えても無駄なのか………)
溜息をつき、最後のクロワッサンを口に運ぶ。
その時、誰かがこっちを見ている気がして視線を少し遠くへ巡らせた。
(……片山さん?)
しかしその視線は直ぐ外されてしまった。
何か言いたげな感じだったが、たまたま目が合っただけかもしれない。
俺はあまり深く取らずに食事は再開した。
「あー、朝から食べ過ぎた~~~」
レストランを出ると両腕を上げて伸びをしながら小笠原が零した。
「バス酔いするなよ?」
「あ、それは大丈夫っス。オレ、車酔いとかしたことないんで」
「あぁ、確かにそんな感じだよな、お前は」
(心配して損した)
マイクロバスに乗り込んだ俺達は、旧軽井沢へと向かった。
バスから降りて少し歩くと、一本の道を挟んで個々の店が連なった光景が広がった。
夏休み明けて少しは空いているかと思ったが、天気がイイせいか思ったより人が出ている。
俺の隣に並んだ木村さんが、いつもより二割増しの微笑みを浮かべた。
「こういった小ぢんまりとしたお店も、趣きがあっていいですねえ」
「そうですね。都会とはまた違った雰囲気があって和むというか……」
俺の言葉に、木村さんがはっはっはと気持ち良く笑う。
「英店長も、分かりますか」
「ええ、普段見られるものじゃないですから、余計に」
「そうなんですよねぇ。都会も悪くはないですが、やはり、こういう風景も恋しくなりますね。――あ、ちょっとこのお店ゆっくり覗いていいですかね?」
「あ、はい、どうぞ。自由行動なので決まった時間に集合場所に来てもらえれば何処へ行っても問題ないですよ」
「それじゃあ、また後で」
木村さんと別れて先を歩く。
他のメンバーも各々観光を楽しんでいるようだ。
少し前方から小笠原と高屋の声が聞こえてきた。
(やたら目立つな、アイツ等は……)
見た目もそうだが、いろんな意味で悪目立ちしている。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
告白ゲーム
茉莉花 香乃
BL
自転車にまたがり校門を抜け帰路に着く。最初の交差点で止まった時、教室の自分の机にぶら下がる空の弁当箱のイメージが頭に浮かぶ。「やばい。明日、弁当作ってもらえない」自転車を反転して、もう一度教室をめざす。教室の中には五人の男子がいた。入り辛い。扉の前で中を窺っていると、何やら悪巧みをしているのを聞いてしまった
他サイトにも公開しています
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる